文化審議会が世界文化遺産の推薦候補に選んだ新潟県の「佐渡島の金山」について、政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦を見送る方向で調整に入ったと、読売新聞とTBSが20日、報じた。韓国がかつて朝鮮半島出身者が強制労働させられたと主張・反発しているために混乱を避けたとすれば、岸田政権の外交姿勢は批判を避けられない。
「世界遺産 『佐渡金山』推薦見送りへ」「『佐渡島の金山』の世界遺産登録 今年度の推薦見送りへ」
読売新聞とTBSは、こうした見出しを掲げた。理由として、韓国の反発を受けて「登録される見通しが立たない」「審査の難航が予想」などと解説していた。
2023年に審査を受ける候補の推薦書提出期限が2月1日に迫るなか、政府が態度を明確にしないことに、新潟県の花角英世知事は19日の記者会見で「棚上げや先送りはしないでもらいたい」と苦言を呈し、自民党の高市早苗政調会長も「日本の名誉に関わる問題だ」と強調し、推薦を求めていた。
韓国の主張については、菅義偉内閣が昨年4月の閣議で「『募集』、『官斡旋』及び『徴用』による労務については、いずれも強制労働に関する条約上の『強制労働』には該当しない。これらを『強制労働』と表現することは適切ではない」との答弁書を決定している。
自民党の議員連盟「保守団結の会」(代表世話人・高鳥修一衆院議員)も18日、国会内で会合を開催。出席議員からは「(韓国側に対し)歴史的事実に基づき、しっかり反論すべきだ」という意見が出ていた。
岸田政権の対応をどう見るか。
新しい歴史教科書をつくる会副会長の藤岡信勝氏は「佐渡金山は、歴史的にも重要な場所で、韓国を意識すること以外に見送る理由は考えにくい。報道が事実ならば、菅政権が政府文書や教科書に『強制労働』と書くことを不適切とした政府見解から後退することになりかねない。岸田政権は信用を失うのではないか」と語った。