胃や腸などの手術にあたる消化器外科の医師不足が深刻だ。医師数は20年前より2割減った。長時間の手術や休日夜間の救急対応といった厳しい勤務状況を、若手医師が敬遠するためだ。人材確保に向け、大学病院では、業務負担の軽減や給与の増額などに取り組んでいる。厚生労働省も外科医の待遇改善策について、今年度から本格的な検討を始めた。
日本消化器外科学会によると、医療機関に勤務する消化器・一般外科の医師は2022年時点で約1万9000人と、02年からの20年で2割減った。麻酔科が7割増、内科が2割増と他の診療科が軒並み増えているのとは対照的だ。
同学会理事長の調(しらべ)憲・群馬大教授は「執刀医が確保できず、夜間の救急診療が難しくなった病院もある。このままでは手術の待機期間が延びて、胃や大腸のがん患者の命にも関わる」と窮状を訴える。
減少の背景には、若手医師が労働時間や対価を重視し、「割に合わない」と避けることがある。休日夜間に緊急手術の呼び出しがあるうえ、難しい食道がんの手術では、10時間を超えることもある。対する給与水準は、他の診療科と変わらない。さらに、高度な技術を身につけるため、長期間の修練を要することも避けられる理由となっている。
大学病院も対策に乗り出している。北里大(相模原市)は、1人の患者を複数の医師で担当する。患者に緊急対応が必要になった場合、休みの医師を呼び出さず、勤務中の医師があたる。消化器外科の樋口格講師(45)は「手術が成功して前向きになる患者の姿を見るのがうれしい。若手にやりがいを伝えることも重要」と話す。
富山大は、長時間に及ぶ手術で執刀医を3~4時間ごとに交代する仕組みや休日回診に当番制を導入。広島大は今年度、若手医師の年俸を1・3倍にする。
診療体制の維持に向け、同学会は、地域の拠点病院に消化器外科医を集約したい考えだ。一定数の医師がいれば、休みが取りやすくなり、様々な患者を診ることで経験も積めると期待する。厚生労働省も勤務環境や医師の待遇の改善を図る医療機関に診療報酬を手厚く配分することを検討している。
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お盆で弟が帰省し家族でBBQ中通報「兄弟喧嘩が起きている」 兄が弟の肩にかみつき逮捕 北海道
北海道・森警察署は2025年8月17日、傷害の疑いで、鹿部町の自称・会社員の男(23)を逮捕したと発表しました。
男は8月16日午後11時15分ごろ、自宅の敷地内で、大学生の弟(21)の肩にかみつく暴行を加え、けがをさせた疑いが持たれています。
弟は肩に皮下出血を負う軽傷です。
警察によりますと、弟はお盆で実家に帰省していて、当時自宅の敷地内では男と両親、弟、弟の友人の5人でバーベキューをしていたということです。
その際「兄弟喧嘩が起きている」と弟の友人が警察に通報していて、男の容疑が固まったため、17日に逮捕しました。
調べに対し男は、容疑を認めています。
警察が詳しい経緯を調べています。
長野・岡谷ジャンクション、改修工事中の2か月間に53件の事故…渋滞で追突事故多発か
中央道と長野道が合流する、長野県岡谷市の岡谷ジャンクション(JCT)付近で5~7月に実施された改修工事で、工事期間中に発生した事故は53件だったことが、長野県警高速隊のまとめでわかった。車線規制に伴い渋滞が発生し、前方不注意による追突事故が多発したとみられる。規制は18日から順次再開予定で、同隊は脇見をせずに運転し、車間距離を確保するよう呼びかけている。
2024年から断続的に行われているこの改修工事は、5月12日~7月25日に長野道岡谷JCT―岡谷インターチェンジ(IC)間の上下線で行われ、期間中は片側2車線を1本に規制した。NEXCO中日本によると、長野道の上り線で7月20日、期間中で最大となる12・1キロ88分の渋滞が発生した。
また同隊によると、中央道を含めて周辺で発生した53件の事故のうち、約6割にあたる31件が長野道の上り線で起こった。人身事故は9件で、全て追突によるものだった。
工事は29年頃まで断続的に行われる予定だ。同隊は「カーブが多いため、見通しの悪い場所では『この先は渋滞しているかもしれない』という意識を持ってほしい」と注意を呼びかけている。
「大きな衝突音が…」男女3人が乗った乗用車が民家に突っ込む 後部座席にいた女性が死亡し男性2人もケガ
18日午前3時過ぎ、三重県松阪市で乗用車が民家に衝突し、男女3人が病院に運ばれました。このうち後部座席に乗車していた女性は、病院で死亡が確認されました。 警察によりますと、18日午前3時過ぎ、松阪市小黒田町で「大きな衝突音がして、外に出たら、民家の塀に車が衝突していた」と、付近の住民から警察に通報がありました。 現場に駆け付けたところ、普通乗用車が道路脇の民家に衝突し、乗車していた男性2人と女性1人が病院に運ばれましたが、女性は全身を強く打ち死亡しました。男性2人も頭などにケガをしているとみられますが、ケガの程度は分かっていません。 警察が現在、詳しい事故の状況を調べています。
5年もの「リニア遅延行為」も反省の色はまるでなし…知事交代後も過ちを頑なに認めない静岡県の「無責任体質」
リニア南アルプストンネル静岡工区(8.9キロ)工事の早期着工を踏まえ、JR東海の水野孝則・副社長が8月1日、静岡県の平木省・副知事を訪問し、トンネル本体工事の準備段階とするヤード(工事の作業基地)用地の拡張を要請する文書を手渡した。
ヤードの準備工事といえば、5年前、当時の金子慎JR東海社長と川勝平太知事との面談をきっかけに、JR東海と静岡県の間で激しいやり取りが続いた因縁のテーマだ。
川勝知事が準備工事を認めなかったことで、JR東海は「2027年開業は延期せざるを得ない」と表明し、新聞、テレビは「静岡県がリニア開業を遅らせた」と大騒ぎした。
この準備工事を認めなかったことがさらなる「静岡悪者論」を生んでしまった。
しかし、今回静岡県はJR東海の「5年越しの再提出」をあっさり認める方針だ。
まず当時、いったい、何があったのかを振り返る。
2020年6月26日、金子社長が静岡県庁を訪れ、川勝知事にトンネル本体工事以外のヤードの準備工事を認めてもらうよう要請した。準備工事には「トンネル掘削は含まない」と明記されていた。
川勝知事は「自然環境保全条例は5ヘクタール以上の開発であれば協定を結ぶ。県の権限はそれだけである。条例に基づいて協定を結べばよい。活動拠点を整備するならばそれでよいと思う」などと述べ、いったんはヤードの準備工事を認めた。
ところが、その約1時間後に再び囲み取材を行い、「自然環境保全条例に基づいて準備工事を認めない」と前言を翻してしまった。
理由として、準備工事に斜坑、導水路、工事用道路の坑口整備(樹木伐採や斜面補強)、濁水処理等設備の設置などを含めていたことを問題にした。
静岡県は、樹木伐採や斜面補強などをトンネル本体工事の一部とみなして、準備工事に「ノー」を突きつけたのである。
トンネル本体は大井川の直下約400メートルを通過する。その建設には、いくら大深度の地下であっても河川法の占用許可が必要となる。川勝知事は頑なに占用許可を認めてこなかった。
だから、JR東海がトンネル掘削を想定して樹木伐採や斜面補強、濁水処理等の設置などを行っても、勝手にトンネル掘削できるはずもないのだ。
つまり、準備工事を「トンネル本体工事の一部」とみなしたのは単なるいやがらせでしかない。
このため、JR東海は、川勝知事の「自然環境保全条例に基づいてヤード工事を認めない」という表明に強く反発した。
トップ会談のあと、JR東海は「知事は5ヘクタール以上であれば協定締結の可否によって判断すると述べた。速やかに協定締結の準備を整え、ヤード整備に入りたい。もし、それが困難であるならばその理由をうかがいたい」と毅然とした書面を静岡県に提出した。
これに対して、静岡県は「ヤードの準備工事はトンネル工事の一部であるという行政判断をした」と一方的な解釈を示しただけで逃げてしまった。
この回答に納得できないJR東海は「条例の目的に照らして(静岡県の行政判断は)正当なものではなく、これまで担当課から説明を受けて準備を進めていたこととは違う」と、あえて事務レベル段階での進捗を明かした上で、「変更した経緯と理由を明らかにしてほしい」とする書面を再度送った。
JR東海は水面下で県担当者と条例に基づいた「協定書案」をまとめる方向で進めていた。だから、県がそれまでの姿勢を180度変えてしまったことに強い不満を抱き、納得できなかったのだ。
そもそも、自然環境保全条例にそれほど強い権限がないことはJR東海だけでなく関係者すべてが承知していた。
環境省は自然環境保全法に基づいて、全国に原生自然環境保全地域、自然環境保全地域を指定している。都道府県は、国の2つの地域に準ずる地域を指定するために、条例を制定している。この地域は地域内の特に貴重な動植物の保全などを求めているが、開発の可能な地域でもある。
ただ条例は強制力を持たず、開発業者が協定締結を怠った場合に業者名を公表する程度の罰則規定しかない。
自然環境保全条例の規制は緩く、協定締結のハードルは非常に低い。
それなのに、静岡県は南アルプスのリニアの準備工事に限って、自然環境保全条例の解釈、運用を拡大して、樹木伐採や斜面補強、濁水処理等の設置などをトンネル本体工事の一部とみなして、準備工事を認めないというのだ。
1971年の条例制定以来初めての措置であり、リニアの準備工事という理由だけで、JR東海の要請を蹴ってしまったことは誰の目にも明らかだった。
あまりにも理不尽であり、こんな無理筋を強行すれば、静岡県への批判が高まるのは当然だった。
これにいち早く反応したのが、隣の山梨県議会だった。県議会は「国が前面に立って課題を解決すべき」との意見書を可決した。
国交省は水面下で法律の趣旨に反する対応だと翻意を促したが、静岡県は耳を傾けなかった。
官邸からの指示があり、静岡県の常識外れといえる対応を国は放っておくわけにはいかなくなった。
金子社長の面談から2週間後に、国交省の事務方トップ、藤田耕三事務次官、水嶋智鉄道局長(現・事務次官)が川勝知事と面談するために静岡県庁をわざわざ訪れるという異例の事態となった。
藤田次官らは川勝知事に法律の趣旨を説明して懇願したが、川勝知事に軽くいなされ、面談は終わってしまった。
当時、大井川流域の首長たちが川勝知事を強く支援していたのだ。
彼らは「準備工事を認めれば、なし崩しに本体工事につながる可能性がある」「2027年開業にこだわるヤード整備は住民の不信感を増す」などと主張したため、静岡県は「本体工事につながる準備工事を認めない」との方針を決めたという。
たとえ法律の趣旨、解釈に背いていても、現在では国と地方は対等の関係であり、国が条例に基づいた地方の対応を変えさせることなどできるはずもない。
藤田次官は「静岡県の解釈、運用に問題はない」と述べるだけで、どうすることもできなかった。
この結果、国の威信は地に落ちてしまった。
それから5年がたち、川勝知事の退場で対応は一変した。
8月1日に水野副社長から要請書を受け取った平木副知事は「本体工事に直接関わるような設備や施設を置くことは原理原則として行えない。今回はわれわれの原理原則に反するものではない。庁内で協議していく」と準備工事を認める方針を示した。
今回は、準備工事はヤード用地の拡張にとどめさせ、「(準備工事には)坑口整備や濁水処理等設備の設置などの本体工事(トンネル工事)については含まない」と5年前の行政判断を尊重する断り書きをわざわざ入れさせた。
坑口整備(樹木伐採や斜面補強)、濁水処理等の設置などを行ってもトンネル掘削をするわけではない。それなのに、いまでも静岡県は「トンネル本体工事の一部」とみなしているのだ。
だから、静岡県の「原理原則」とは、「準備工事はトンネル本体工事の一部である」とした5年前の行政判断が正しかったことを指すのである。
5年前の行政判断が正しかったと強弁することで、過去から現在まで静岡県に何ひとつ間違いなどなかったことにしたいのだろう。
これまで、「山梨県の調査ボーリングで静岡県の湧水が引っ張られる。静岡県の水一滴すべてを戻せ」など、リニア問題に関して、静岡県はさまざまな独自の主張を繰り返してきた。川勝知事の退場後も、過去の総括をしないで、すべて正しいとして、リニア問題の対応に当たっている。
だから、リニア開業を遅らせたとする「静岡悪者」論はいまだに根強い。
「準備工事を認めれば、なし崩しに本体工事につながる」ことなどあり得ないとわかっていたのに、静岡県は準備工事にストップを掛けた。
そんな行政判断が正しいはずはないのに、いまでも「原理原則」だと固執する。この結果、JR東海は静岡県の意向に従い、準備工事の定義を変えざるを得なくなった。
「静岡悪者論」を払拭させる対応とは、平木副知事が泥をかぶる覚悟で、過去の間違いを認めた上で、静岡工区の着工に舵を切るという姿勢を見せることである。過去のおかしな対応をそのままにしておいては、信頼回復につながるはずもない。
底の割れた茶番のごまかしをやっていれば、将来に禍根を残すだろう。これまで静岡県のやってきたことがすべて正しいとして「原理原則」を唱え続ければ、どこかでつじつまが合わなくなるのだ。
いま問題になっているトンネル工事で発生する要対策土の処理について、静岡県は国に法律の解釈を求めた。もし、国の都合のよい解釈をそのまま「錦の御旗」にでもすれば、静岡県の「原理原則」が、底の浅いものであることを満天下に知らしめるだけである。
「正直」こそが最善の戦略である。静岡県は過去の過ちは過ちだと正直に認めるところから始めるべきである。JR東海の描く「リニアのある未来」を多くの国民が待望するのであれば、1日も早い静岡工区の着工が待たれる。
JR東海の計画にもずさんで見通しの甘い部分があったことも大きな原因のひとつではある。しかし、静岡県は、静岡県で「真実」を正直に伝えるべきである。
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(ジャーナリスト 小林 一哉)
三原じゅん子・こども政策担当相が暴力団とゴルフ写真の“反社疑惑”にダンマリの理由「官邸は三原氏のことなど構っていられない」
週刊ポスト(8月4日発売号)で暴力団幹部とのツーショット写真を報じた三原じゅん子・こども政策担当相。写真は参院選出馬準備をしていた2009年当時、現役の組長だった暴力団幹部らが参加するゴルフコンペで撮影されたものだが、他にも三原氏は同じ幹部が主催して多くの暴力団関係者が参加した忘年会に出席、持ち歌を披露したとの証言を報じた。
SNS上では、「これは容認できない」「こども政策担当相のすることか」「なぜ石破首相は更迭しないのか」との声が上がり、大きな反響を呼んだ。
だが、三原事務所は本誌・週刊ポストの取材に「反社関係者と知って参加することはない」と回答しただけで、本人は大臣会見でもダンマリを決め込んでいる。
「三原氏は国会待機中に美容整形クリニックに行っていたことが報道されたばかり。暴力団関係者との写真でアウトかと思ったら、官邸は自民党内の石破おろしへの対応に手一杯で、三原氏のことなど構っていられない。三原氏はそれを好都合と捉えたのか、大臣会見でも記者の質問が出なかったのをいいことに何の説明責任も果たさなかった」(永田町関係者)
神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏は言う。
「三原大臣はこども政策や少子化政策に加えて若者・女性活躍などを担当している。昨今、子供のオーバードーズや未成年者の闇バイトへの関与などの問題も増えるなかで、それを防ぐために若者たちを指導する立場にある大臣ということだ。
その三原氏が、政治家になる前とはいえ、国会議員を志して選挙に出る準備をしている段階で反社会的勢力と接点を持っていたとすれば、そのことを材料に脅される可能性もある。だからこそ経緯を説明し、現在は関係がないことを明らかにする責任がある。その責任から逃げているようでは、こども政策や若者政策を担当する資格がないと言われても仕方がないのではないか」
三原事務所になぜ説明しないのかについて聞いたが、締め切りまでに回答はなかった。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号
名古屋市、前橋市などで39度予想…23都府県に熱中症警戒アラート発表
連休明けの月曜日となる18日は、高気圧に覆われるなどして、関東や東海地方を中心に気温が上昇する見込み。
気象庁と各地の気象台の発表によると、予想最高気温は名古屋市、岐阜市、前橋市、埼玉県熊谷市で39度、甲府市が38度、京都市、大津市、浜松市、さいたま市などで37度となっている。9日から35度未満の日が続いていた東京都心も35度予想となっている。
また、同庁と環境省は以下の23都府県に熱中症警戒アラートを発表した。エアコン等で涼しい環境を確保し、こまめな休憩や水分・塩分補給をするよう呼びかけている。
茨城、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、山梨、静岡、愛知、三重、石川、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、鳥取、香川、愛媛、長崎、鹿児島(奄美地方除く)
降伏受け入れず「反乱」が公然化 緊迫の飛行場 厚木航空隊事件
戦後とはいつからか――。80年前の8月15日に終戦を告げる玉音放送が流れた後も、一部の戦場のみならず日本国内でも「戦時下」と呼べる状況が続いた。その歴史的な事件が忘れ去られないよう、追い続けている人たちがいる。
黄ばんだ紙に、手書きの文字。達筆ではないが、丁寧に書かれている。手記をまとめるための草稿のようだ。
「小園大佐は(無条件降伏を)『側近の奸臣(かんしん)』の謀略と断じ、断固終戦反対を叫び、米軍の厚木進駐を阻止するとの無謀なる行動を起こした」「米軍の先遣隊と交戦していたら(中略)日本の運命はどうなっていたかとゾットしています」――。
福島県三春町の菓子店を兼ねた民家の書斎。保管されている10以上の冊子は「大東亜戦争中に経験した秘録」「厚木事件の真相」などの表題がつけられ、推敲(すいこう)の跡も残る。
書き残した佐藤六郎さん(1986年死去)は、現在の同県田村市出身の旧海軍大佐。海軍機関学校出の技術士官で、航空機分野のエキスパートだった。
埼玉県にある軍需工場の監督官として1945年8月15日を迎えた佐藤大佐は、思わぬ任務を依頼される。
厚木海軍飛行場(神奈川県大和市など)を束ねる小園安名大佐が降伏を受け入れず、反乱が公然化。米内光政海相、大本営海軍部所属だった高松宮宣仁親王の説得も奏功せず「小園鎮撫(ちんぶ)」の声がかかったのだ。
佐藤大佐は、兵器開発などを通して小園大佐と親交を深めていた。気が合ったのだろう。「ガ(ガダルカナル)島の勇将」と友を高く評している。二人の関係を、軍上層部はよく知っていたのかもしれない。
手記などによると、佐藤大佐は同24日に現地に到着。「鉄砲、機銃と日本刀を持ち、焚(た)き火を囲んでいる集団が大勢いた」状況に戸惑いつつ、その筆は「反乱派」と「恭順派」に分かれた飛行場の様子を冷静に描いていく。
◆ ◆
このとき既に小園大佐は拘束され、対面の機会はなかった。それでも、まだ重要な仕事が残されていた。「(滑走路などに)バラ撒(ま)いてある飛行機を片づけてマ(マッカーサー)元帥を迎える準備」だ。
連合国軍到着は、当初2日後とされた。大量の飛行機の残骸が散らばるが、混乱で「陸海軍共に使えません」。手記に添えられた見取り図には、滑走路外れの雑木林の場所に「反乱軍」の文字。「小銃着剣の兵、日本刀、ピストルの反乱軍が押し寄せる」ことも危惧され、日本軍による「ダマシうち」があった場合の連合国側の避難経路も書き込まれていた。
平和進駐が進まないと、連合国軍の武力行使も予想される。佐藤大佐は土建会社「大安組」に助けを求めた。危険なうえ敵受け入れという「国辱」の仕事を作業員が渋る中、佐藤大佐の気迫に応諾したのは旧知の安藤明社長だった。
無事任務を遂行し、同28日に先遣隊、30日にはマッカーサー元帥が厚木に降り立った。佐藤大佐はその後、今度は作業員の労賃補償のために奔走することになる。
冊子など一連の記録は2010年10月ごろ、神奈川県鎌倉市の旧居で見つかり、親戚筋で三春町の菓子店主、高橋龍一さん(61)に託された。高橋さんは郷土史研究家でもあり、PR紙「塵壺(ちりつぼ)」(1万5000部)を毎月発行している。早速、「歴史に埋もれた郷土の先人」として佐藤大佐を紹介した。
すると地元の高齢者などから、さまざまな戦争体験談が寄せられるようになった。
「近所の鍛冶屋が実は元爆撃機パイロットで、特攻の非合理性を技術面から説明してくれた」「平壌にいた薬剤師は、後送される負傷兵が増えるのに接し『戦争は負けだ』と感じたそうだ」
高橋さんは、これらの戦争の記憶を埋もれさせてはならないと強く思う。「平和のために困難な任務に立ち向かった佐藤大佐、安藤社長の心意気を知ってほしい」
手記では小園大佐について「軍上層部が新兵器採用や特攻反対など自身の提言を退けておいて降伏したので、不信感を抱いたのでは」と推測。「良い部下を持った。だから強かった」とも書いていた。高橋さんは命令を拒んだ小園大佐は間違っていたと思いつつ、戦争を終わらせる難しさを痛感するという。
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厚木航空隊に所属していた戦死者は大和市の深見神社の境内にある「厚木空神社」にまつられ、毎年4月に地元有志を中心に慰霊祭が開かれる。遺族は徐々に減り、今年は参列者約50人の中で1組だった。【高橋昌紀】
厚木航空隊事件
日本政府のポツダム宣言受諾に対し、厚木海軍飛行場の航空隊司令、小園安名大佐が徹底抗戦を主張。1945年8月15日の玉音放送後に抵抗呼びかけの空中散布、他の航空隊への決起要請などをした。同21日に小園大佐が拘束され、事態は収拾に向かった。
元交際相手の女性の頭部を路面にたたきつけ…全治2週間のけがをさせた疑いで24歳の男を逮捕 香川・三豊市
18日、愛媛県の会社員の男(24)が、香川県三豊市に住む元交際相手の20代女性に脅迫し、暴行を加えた疑いで逮捕されました。
警察によりますと、男は8月4日午後9時30分ごろから、女性にSNSのメッセージで「もうお前殺しに行くけん」「話せん体にしてやろか」などと送信して脅迫し、女性を女性の自宅近くの駐車場に呼び出し、頭髪をつかんで頭部を路面に複数回たたきつけるなどの暴行を加えた疑いが持たれています。
女性は頭部に擦り傷など、全治2週間のけがをしました。
男は「間違いありません」と容疑を認めています。
ファクトチェックはなぜ届かないのか、「上から目線」は逆効果 参院選で拡散した外国人の偽情報、誤り修正も態度や潜在意識は変わらない恐れ
7月の参議院選挙では、多くの偽情報や誤情報が出回った。中でも深刻だったのが外国人を巡る偽情報だ。「犯罪行為が増えている」「外国人が不当に優遇されている」。政府が否定したり、報道機関がファクトチェックしたりしても、交流サイト(SNS)や街頭演説で繰り返され、外国人を敵視し、排斥するような論調が飛び交った。なぜ誤った情報は広がり続けたのか。誤りを指摘するファクトチェックは届かないのか。偽情報にどう向き合ったら良いのか、専門家に話を聞いて考えてみた。(共同通信・高津英彰)
▽外国人への否定的な感情強くない国 参院選で突如として争点に浮上した外国人問題。移民・差別問題に詳しい大阪大の五十嵐彰准教授は「外国人問題が突然やり玉に挙がったことに非常に驚いた」と話す。 五十嵐さんは、移民政策や移民に対する差別を巡る、各国の状況などを研究している。五十嵐さんによると、国際的な比較でみた場合、日本は外国人の移民に対する否定的な感情がそれほど強くない国だという。その日本で、外国人問題が国政選挙の争点に急浮上することは「予測できなかった」と話す。 近年、訪日外国人や在留外国人は急増している。特に円安を背景とした観光客の増加は爆発的で、2025年は年間4千万人に届くペースだ。ただ、犯罪件数が増えているわけではなく、むしろ外国人の刑法犯は過去20年で大きく減っている。
▽現実と人々が抱くイメージのずれ しかし、人々が抱いているイメージは異なるようだ。五十嵐さんがその一例を示す研究結果を教えてくれた。五十嵐さんの研究チームの実験で、過去1年間の国内刑法犯のうち、何%が外国人だと思うかを質問したところ、参加者は平均30%と回答。正解の5%とは大きくずれていた。五十嵐さんは「年間3千万人を超える訪日観光客を含めても5%というのは、実は非常に少ない。回答のずれは、外国人と犯罪を結び付ける『認知のゆがみ』があることを示している」と説明する。 認知のゆがみとは、物事を偏って捉えてしまう思考パターンのこと。ただでさえ誤ったイメージがある中で、誤った情報が拡散すればどうなるのか。五十嵐さんは「政治家が誤情報を振りまいて排外主義をあおることで、人々の排外意識が高まりかねない」と懸念を示す。
▽訂正情報が届いていない可能性 実際、選挙後に共同通信が実施した世論調査では、出入国管理や不動産取得など外国人への規制を「強めるべきだ」との回答が65・6%に上った。直接比較できるデータはないが、参院選を通じて、外国人への反感が高まってしまった可能性は否めない。 外国人に関する誤情報は報道や個人の投稿などで繰り返し否定されているが、五十嵐さんは「そもそも訂正情報が届いていないのではないか」と指摘する。国内の研究では、自分が正しいと信じている誤情報に関するファクトチェックを、半数の人があえて見ないように行動しているとの分析結果もあるという。 さらに、五十嵐さんは「情報自体の誤りが修正されても、その人の態度や潜在的な意識までは変わらない可能性がある」と話す。
大阪大・五十嵐彰准教授
▽規範意識の違いはメディアの姿勢に一因? 五十嵐さんの研究によると、欧米ではたとえ移民への排外感情を持っていても、表には出してはいけないものだという「規範意識」が強い一方、日本ではそうした意識が薄いという。 五十嵐さんは、そのような違いが起きている理由までは分析できていないとしつつ、政治家の排外主義的な主張をしっかりと批判してこなかったメディアの姿勢や犯罪報道のあり方に一因があるのではないかと推測する。 「メディアは政治家が排外的な主張をしてもさほど批判してこなかった。外国人犯罪の報道では、まず容疑者の国籍を出すなど、外国人と犯罪が結び付けられやすい土壌もあった。こうしたことが、外国人に否定的な態度を取っても良いという意識につながっているのではないか」と話す。
▽無意識に生まれてしまう思考の偏り 偽情報が拡散してしまう理由を、人間が持つバイアスの観点から説明するのが安野智子中央大教授(社会心理学)だ。 認知バイアスとは、私たちが情報を認識して判断する際に、無意識に生まれてしまう思考の偏りだ。人類が進化の過程で獲得した脳の「省エネ機能」が関係するとも言われている。
安野さんは、①自分にとって分かりやすい情報を信じやすい「認知的流ちょう性」、②何度も見た情報を正しいと思いやすい「真実性の錯覚」、③自分の考えに近い情報は注目しても、反対の情報は無視しやすい「確証バイアス」、④目立つものに原因を求めやすい「目立つ刺激への原因帰属」といった認知バイアスに注意が必要だと指摘する。 例えば、物価高で生活が苦しくなっている実感があると「普通の日本人が大切にされていない」というメッセージは分かりやすく、信じやすい(①)。そうした投稿や意見に繰り返し触れるうちに確信は強まり(②)、同様の意見にばかり着目するようになったり(②や③)、外国人という目立つ存在に原因を求めたりしてしまう(④)。そういった具合にさまざまなバイアスに陥っていく。 誤りを指摘する情報があってもなかなか響かないのも③のバイアスなどが関係している。安野さんは「自分が一度信じてふに落ちた情報は、後から誤情報だと分かっても訂正を受け入れにくい」と説明する。
▽SNSは人間のバイアスを強化する 安野さんが、もう一つ指摘するのが人間のバイアスを強めてしまう環境的な要因だ。人はただでさえ分かりやすい情報を信じてしまいがちだが、SNSにはそれを強化する特徴があるという。 多くのSNSは利用者の閲覧履歴を基に、関心に沿った投稿を優先的に表示する仕組みを取り入れている。そのため、自分の価値観に合った情報にしか触れなくなる「フィルターバブル」と呼ばれる状態が生まれやすい。 さらに、価値観の近い利用者とばかりつながり、コミュニケーションを繰り返すうちに、自分の考えは多数派で正しいのだと思い込む「エコーチェンバー(反響室)」も起こりやすいという。
中央大の安野智子教授
▽人の脳はだまされやすい 誤情報の拡散は、テレビや新聞、雑誌などマスメディア全盛の時代から起きていたが、安野さんは、SNSの登場以降、さらに顕著な形になったという。 SNSの場合、悪意を持ってだまそうと思えば、利用者をネットワークに組み込んで、他の情報が届かないようにしたり、同じように信じる仲間だけを集めたりしやすい。安野さんは「だまそうとしている人にとって、SNSは一番使いやすいメディアになっている」と話す。 重要なのは、人の脳はだまされやすく、自力で偽情報を見抜くのは難しいと自覚することだという。「『SNSには真実がある』というような考えが強いと、逆にだまされてしまう恐れがある。SNSの特徴をよく踏まえて接することが大切だ」と注意喚起する。
▽社会の中で報われていないという感覚 外国人犯罪が増え、治安が悪化したなどの偽情報は陰謀論とは違うのだろうか。陰謀論を研究する北星学園大の真嶋良全教授(認知心理学)は、定義上は異なるとしつつ「陰謀論と地続きの現象だ」と話す。 社会全体や個人の中で不満や不安が高まると、それを説明してくれるストーリーを信じやすい。その中で「共通の敵」とされやすいのは、外国人のような少数派だ。 たとえ、外国人犯罪が統計的に少ないと指摘されても「自分自身が社会の中で報われていないという感覚や、生活が脅かされているという感覚があると『少なくても犯罪はあるじゃないか』と見てしまう」と話す。感情的な結論が先にあり、事実をそれに合うように解釈してしまいやすいのだ。
北星学園大・真嶋良全教授
▽エピソードに引きずられないためには SNSでは、実際に誰かが外国人とトラブルになったり、外国人オーナーから家賃を急に値上げされたりした事例が、目に見える形で提示される。真嶋さんは「一人一人のエピソードは直感に訴えかけてくるため、引きずられてしまいやすい。 一方、客観的な証拠や、事実関係に間違いがないかを吟味して考えるのは個人にとって非常に負荷が高い。その結果『怖いことが起きているなら、起きないようにしてほしい』という結論ありきで物事を考えてしまい、統計情報などのファクトそのものが意味を持たなくなってしまう」と解説する。 ではどう対処すべきか。真嶋さんは、情報を受け取る側として、曖昧な状態に耐えて決定しないよう意識する姿勢が必要だと訴える。「不確かな情報に触れたとき、いったん立ち止まり、曖昧な状況のまま保留する。時間をかけて吟味したり、情報源を確かめたりする。そうしたネガティブリテラシーが大切だ」と話した。
ファクトチェックを掲載した毎日新聞(上)と朝日新聞の紙面
▽ファクトチェックをどう届けるか 3人の専門家に話を聞いて共通していたのは、参院選で広まった偽情報に対して、報道機関などによるファクトチェックの効果が限定的だったという認識だ。 「正しい情報を出せば伝わる」。メディアに関わる人間として、正しい情報を発信することばかりを考えていたが、ファクトチェックにも課題は多い。偽情報を放置することもできない以上、どうすれば良いのか。 大阪大の五十嵐さんは、2週間ごとに訂正情報に接触してもらうことで、最終的にはその人の態度は変わるという研究もあると説明。「発信し続けていくことが大切だ」とアドバイスをくれた。 安野さんは、2024年の兵庫県知事選挙で偽情報が放置された状態と異なり、メディア各社がファクトチェックに取り組んだことを「一歩前進」と評価する。大切なのは「上から目線」や「高圧的」と取られないような情報の届け方だと強調する。「ファクトチェックは『高圧的だ』と受け取られると届かない。どこが事実と違うのかを明確に示した上で、『だまされる方が悪い』といったメッセージに受け止められないようにすることが大切だ」と訴える。 その上で、安野さんは「誤情報を巡る認識」という側面だけではなく、選挙を通じて浮かび上がった人々の不安を見つめるべきだと指摘する。「根底にある『普通に暮らす人々が大切にされていない』という実感と向き合う必要があるのではないか」と話した。