斎藤元彦・兵庫県知事の疑惑が文書で告発された問題を受け、8道府県が公益通報体制を見直したことが、毎日新聞の全国アンケートで明らかになった。兵庫を含めた他の4県は、知事や職員が関係する不祥事をきっかけとして改善を図ったことも判明した。外部の弁護士を活用する取り組みなどがあり、専門家は切れ目ない改革が必要だと指摘している。
47都道府県にアンケート
公益通報者保護法は、行政機関や企業といった組織内の不正を把握し、窓口に連絡することについて「公益通報」と定める。通報を受理した組織側はその内容を調べ、問題があれば是正措置を取らなければならない。
毎日新聞は4~5月、47都道府県にアンケートを実施した。知事部局の職員による内部通報の件数のほか、通報体制の整備状況などを尋ねたうえで、担当者に追加取材を重ねた。
この結果、兵庫県の文書告発問題を受けて内部通報体制を見直したと答えたのは、北海道▽群馬▽石川▽滋賀▽大阪▽奈良▽岡山▽高知――の8道府県だった。このうち、群馬と大阪両府県は公益通報に関する手続きを定めた要綱を改定。弁護士の意見を必ず聞いたうえで通報の受理・不受理を判断することにした。
足元の不祥事でも
足元であった不祥事によって通報体制を見直したケースも明らかになった。兵庫に加え、新潟(官製談合事件)▽福井(知事のセクハラ問題)▽広島(公文書偽造問題)――の4県だった。
震源地となった兵庫県は2024年に告発問題が発覚してから2回にわたり、要綱を大幅に改正した。告発者探索の禁止を明記し、外部の専門家が通報対応について定期的に評価する「モニタリング制度」を導入。全ての通報の概要をホームページで公表している。
福井と広島両県はいずれも、職員の懲戒処分を担当する人事課から公益通報業務を切り離し、コンプライアンスなどを担当する部署を新設した。新潟県も内部通報窓口を人事課以外に変更した。
「自分ごと」として見直しを
一方、47都道府県の公益通報窓口が受け付けた通報件数を集計した結果、24年度は計292件だった。23年度(162件)の1・8倍となり、告発問題が増加につながったとみられる。
制度に詳しい日野勝吾・淑徳大教授は「各都道府県は、他県の不祥事を『人ごと』と考えるのではなく、『自分ごと』として危機感を持ち、他県の取り組みを参考にして公平・公正な体制となるよう見直していくべきだ」と指摘する。
公益通報者保護法は施行から今年で20年。12月には通報を理由とする解雇や懲戒処分に刑事罰を科したり、通報者探索を禁止したりする規定を盛り込んだ改正法が施行される。【遠藤浩二】
「news」カテゴリーアーカイブ
父の遺骨「墓に入れたい」と願う 長生炭鉱、鑑定に望みかける
戦時中の事故で朝鮮人を含む183人の犠牲者が出た山口県宇部市の「長生炭鉱」で見つかった人骨のDNA型鑑定が進められている。父を失った愛知県刈谷市の常西勝彦さん(84)は「この手で墓に骨を入れたい」と願い続けてきた。鑑定の対象が限られ、父の遺骨と判明する可能性は低いと自覚している。それでも「わずかでも望みをかけるしかない」と祈る。
海底を掘り進めた長生炭鉱で1942年2月3日、水没事故が発生し、20代だった父初忠さんが巻き込まれた。常西さんは宇部市で育ちながら長生炭鉱のことを知らなかった。家には父の写真が1枚残っていたが、祖父は「炭鉱で死んだ」と話すだけだった
きっかけは2021年、長生炭鉱を取り上げた新聞記事だった。遺骨の捜索や調査に当たる地元の民間団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」に問い合わせると、犠牲者として父の名前があることを知り、衝撃を受けた。
刻む会は昨年8月と今年2月、計2人分と想定される人骨を炭鉱跡から回収した。常西さんは2月の捜索に立ち会い、骨を実際に手に取った。
【速報】だんじり祭りで殺人未遂 けんか仲裁の男性が刺される 大阪
大阪市平野区で12日夜から13日未明にかけ、20代の男性が何者かに胸部を刺され、けがをしました。 男性を刺したとみられる人物はその後逃走していて、警察が殺人未遂事件として逃げた人物の行方を調べています。 大阪市平野区平野宮町の杭全公園付近で、12日午後11時26分ごろから13日午前0時11分にかけ、通行人などから合計3回、けが人がいるという内容の110番通報がありました。 警察などによりますと、大阪市西淀川区に住む20代の男性が胸部を2カ所、刃物のようなもので刺されていて、病院に搬送されました。 命に別状はなく、中等症とみられるということです。 現場は当時、だんじりが繰り出す杭全神社の夏祭りが開かれていました。 警察の聞き取りに対し、男性は「友人とともに祭りの見物に来ていたところ、友人が、若い複数人の男性のグループとトラブルになった。仲裁に入ろうとしてトラブルに巻き込まれ、気付いたら刺されていた」と話しています。 現場に刃物は残っておらず、男性を刺したとみられる人物も逃走していますが、警察は男性を刺したのがトラブルになったグループに所属している1人ではないかとみて、殺人未遂事件として当時の状況を詳しく調べています。
「生活が苦しくて、死ぬくらいなら捕まったほうがいい」コンビニ駐車場で包丁所持 男を逮捕
北海道・室蘭警察署は7月12日、銃刀法違反の疑いで、住所・職業・年齢すべて自称の、室蘭市に住む無職の男(70)を現行犯逮捕しました。
男は12日午後8時半ごろ、室蘭市港北町のコンビニエンスストア駐車場で、正当な理由なく刃体の長さおよそ18.5センチメートルの包丁1本を所持した疑いが持たれています。
警察によりますと、午後8時ごろコンビニの店員から「万引きをするので警察を呼んでくれと言う客が来店している」と110番通報がありました。
警察官が駆け付けたところ、男は店の外にいて、タオルに巻いた包丁を所持していたということです。
男から「包丁を持っている」と伝えられた警察官が包丁を取り上げ、現行犯逮捕しました。
警察の調べに対し男は「間違いありません」と容疑を認めていて、「生活が苦しくて、このままだったら死んでしまうと思い、死ぬくらいなら捕まってしまったほうがいいと考えたので、このようなことをした」と供述しているということです。
山本太郎体制リセット=「れいわローテーション」無効なら党内混乱、支持者離れの危機
物議だらけのれいわローテーションはどうするのか――。山本太郎代表が辞任、政界引退を表明したれいわ新選組はさらなる混乱、支持者離れにつながりかねない問題が起きている。
山本氏はスピード違反や健康状況を理由に代表辞任を発表した会見で、「山本体制はいったんリセットとなる。新代表の選出をもって、構成員資格が終了となる」と話し、新代表が選出される7月31日をもって、現執行部の退任を発表していた。
新体制への移行で、注目されているのが「れいわローテーション」の扱いだ。2023年に水道橋博士が参院議員を辞職した際に導入された党独自システムで、比例代表で当選した議員は1年ごとに辞職し、次点者が繰り上がるというものだ。ところが、1年後に大島九州男参院議員は出馬時に取り決めがなかったことを理由に辞職を拒否し、いきなり破綻した。
それでも山本氏はあきらめず、昨年の参院選では任期を1年から3年に延長し、特定枠での当選者にも適用する改・れいわローテーションが導入された。特定枠の伊勢崎賢司氏、木村英子氏、奥田芙美代氏の3人が当選し、3人は28年夏に議員辞職し、次点の岡本麻弥氏、ミサオ・レッドウルフ氏、蓮池透氏が繰り上がる段取りとなっていた。ところが、山本体制の終焉で、参院政策委員の岡本氏らは解任を通知されたものだから寝耳に水となった。
岡本氏はXに「世界残酷物語」「醜い。とにかく、醜い」と恨み節。ミサオ・レッドウルフ氏は、ローテーションを維持するか廃止するかは、まだ決定事項ではなく、新体制で判断されるとの見通しを示していた。
副幹事長の八幡愛元衆院議員は11日に配信されたYouTubeチャンネル「古谷経衡チャンネル」で、「ローテーションも自動的に消滅する。(山本)代表の権限で決めたことはいったん白紙になる」とローテーションは無効になるとの見解を示した。
「(選挙に)立ってくださって、応援した方がいる。私がその立場ならつらい。3年後に国会議員になると思って、『はい、なしです』とズコっとなる。候補者が納得する形で、根回しや丁寧な説明を考えなくてはいけなかった」と八幡氏は課題を残したともした。
れいわローテーションは憲法で定めた参院の任期制度に違反すると他党から批判され、論議の対象となったが、山本氏が強行した経緯がある。とはいえ、参院選の候補者と誓約書も交わした党の取り決め事項で、反故にすれば、今後の禍根となるのは必至。代表選では、れいわローテーションの扱いも争点の一つとなりそうだ。
高市首相の“週末引きこもり率”は安倍元首相の10倍以上…調査結果にヤフコメで賛否「働いて働いて働いて」「物事の進め方は人それぞれ」
「週刊文春」 の調査で、高市早苗首相の”週末引きこもり率”が、安倍晋三元首相(第二次政権)10倍以上であることが明らかになった。この結果に対し、Yahoo!ニュースのコメント欄(ヤフコメ)には、首相の姿勢を問う声と擁護する声の双方が寄せられた。
「週刊文春」は、朝日新聞などの首相動静を基に、高市首相と安倍首相(第二次政権)の”週末引きこもり率”を独自に調査。期間は各首相の就任から8カ月時点まで。高市首相が「終日公邸」、安倍首相(公邸ではなく私邸暮らし)が「終日公邸(または私邸)」の場合「1」、「午前中ホテル、午後私邸」のような場合を「0.5」などとカウントする方法で割合を算出した。その結果、高市首相は50%超、安倍首相は4%台と大きな開きが出た。
高市首相は週末に公邸にこもり、政策の勉強や答弁の準備を重ねている一方、安倍元首相は週末も政治家や財界人、メディア関係者らと会食やゴルフなどを通じて幅広い人脈を構築していたという。政治部デスクは、こうした関係構築が「長期政権の礎となっていた」と指摘している。
働いて働いて働いて‥‥
ヤフコメでは、高市首相の週末の過ごし方について賛否が分かれた。
首相の姿勢に疑問を呈するユーザーからは、「一国の(しかも傾きかけている国の)首相であれば働いて働いて働いてもらうしかない。それこそもっと様々な場に精力的に出ていくべきなのでは」との声が上がった。「首相の仕事は机上の勉強や答弁準備だけではない。外に出て人と会い、空気を読み、不満を拾い、味方を増やし、合意を作ることも重要な仕事である」と、コミュニケーションの重要性を指摘するコメントも見られた。
また、「総理だって休む権利はあるとはいえ、国会で『忙しくてほとんど寝ていません』などと訴えておきながらジュエリーイベントは出席する」と、高市首相の週末の時間の使い方を疑問視する意見もあった。
一方、高市首相を擁護するコメントも少なくなかった。「人それぞれ過ごし方が違うんだから別に公邸から出ないといけないとかは無いと思う」と、首相の休息を認めるべきだとする声も寄せられた。「高市首相は高市首相かと思います。人それぞれの物事の進め方があるのではないかと感じます」との投稿もあった。
さらに、首相の負担そのものを問題視するコメントも目立った。あるユーザーは「歴代総理に言えることだが、逆にもう少し総理大臣の負担を軽減することは出来ないものですかね」と投稿していた。
◇ ◇ ◇
高市首相の”週末引きこもり率”が安倍元首相の10倍以上に及ぶという調査結果は、首相の働き方をめぐる議論を呼んでいる。現在配信中の「 週刊文春 電子版 」および7月9日(木)発売の「週刊文春」では、高市首相と安倍首相を徹底比較したレポート記事を掲載。安倍氏が生前に明かしていた高市首相の“重大欠陥”のほか、安倍氏の側近議員やブレーンらが指摘した高市首相の問題点について詳報している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年7月16日号)
《”唇縫い付け女”の異様な支配》「誰のおかげで酒飲めんだよ!!」居酒屋で4時間飲まず食わず…42歳被害者は「ふくらはぎがパンパンに浮腫んでいた」【茨城・古河】
「4時間もお店にいたのに、その被害者の女性、水すら口にしないんですよ! ふくらはぎは浮腫んで心配になるくらいパンパンだったし。とにかく異様な関係性でした」(飲食店従業員)
同居する女性(42)の唇を縫い付けたとして逮捕された茨城県古河市の桜井政恵容疑者(50)。取材を重ねると、その異様な支配関係が見えてきた。両者について、キー局社会部記者が語る。
「桜井容疑者と女性は数年前から面識があり、同居したりしなかったりを定期的に繰り返していた。被害者の体に複数のあざが認められており、日常的に暴力を受けていた可能性もある。また、2人が現在の容疑者宅で同居を始めたとされる昨年4月より前、女性の関係者が警察に対して『(桜井容疑者に)洗脳されているかもしれない』旨の相談をしていたこともわかっています。
県警は逮捕前と逮捕後に2度、容疑者宅を家宅捜索したとみられます。ほかにも似たような同居人がいたとみて、詳しい経緯を捜査している」
桜井容疑者は数年前から周囲に「行き場のない人をネットやSNSで拾って助けている」などと話していた。”人助け”といえば聞こえはいいが、被害者に対しては住む場所を提供する代わりに、働いて得た金を納めるように求めていたという。女性は警察に対して、「事情があり自ら身を寄せた」などと説明しているようだ。
主従関係は見受けられるが、物理的な身体拘束、また監禁していた事実などは確認されていない。あくまで “精神的な支配”によって、女性を同居させていた可能性が高い。他方、容疑者は同居人の存在を周囲に隠すこともなく、自身と同じ職場で働かせたり、外食に伴ったりしていた。
容疑者の行きつけだった地元居酒屋の従業員が証言する。
犯行5日前の目撃談
「うちに来るようになったのは5~6年前からです。当時、住んでいるアパートがお店から近かったようですね。よく一緒に来店していたのは、顔がそっくりな親族と思われる人と女友だち。おととしか昨年、容疑者がある飲食店で働き始めたのをきっかけにパタリと来なくなりましたが、今年に入ってまたよく来店するようになった。
いつも『彼氏がさあ~』と話していたので、パートナーの男性がいたんだと思います。支払いでのトラブルはありません。奢ったり奢られたりで、ツケで飲むようなこともないし。正直、事件があるまでこれといって印象的なお客じゃなかったのですが、彼女のミニバンの内装がド派手で、ライトが青とか緑に改造されていたのはよく覚えています」
AI開発促進へ、「個人情報」企業による取得の規制緩和…改正法成立で病歴なども「本人の同意」不要に
企業などによる個人情報取得の規制を緩和する改正個人情報保護法が10日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。企業がAI(人工知能)学習に必要な膨大なデータを集めやすくすることで、開発を促進する狙いがある。
従来は個人情報の外部への提供には本人の同意が必要だったが、改正法ではAI開発を含む統計の作成が目的であれば、同意を不要とする。病歴や犯罪歴などの「要配慮個人情報」も、同意がなくても提供できるようになる。必要なデータについて各個人から同意を得るのは困難で、AI開発の遅れにつながっていると指摘されていた。
同意なく提供できる規定には一部に懸念も出ており、具体的な運用は規則や運用指針で定めることにした。提供された個人情報を売却して利益を得るなど重大な違反行為には、利益と同額の課徴金を企業に支払わせる仕組みも設けた。
八木山バイパスの料金所近くでダンプカーが逆走か トラックと正面衝突 トラックの運転手は意識の程度が不明
13日朝、福岡県篠栗町の八木山バイパスでダンプカーがトラックと正面衝突しました。
この事故でそれぞれの運転手が運転席に挟まれていましたが、救助され病院に搬送されています。
13日午前7時頃、篠栗町の八木山バイパス料金所近くで、「トラック同士の正面衝突」と目撃者から消防に通報がありました。
警察や消防によりますと、福岡から飯塚に向かう車線をダンプカーが逆走して、トラックと正面衝突したとみられています。
この事故でそれぞれの運転手が救助されダンプカーの運転手は意識がありますが、トラックの運転手は意識の程度が不明です。
また、この他に乗用車1台も事故に巻き込まれています。
事故の影響で現在八木山バイパスの篠栗インターから飯塚インターまでの上下線が通行止めとなっています。
民間先行の赤ちゃんポストに自治体が挑戦、直面する課題とは… 「命を守る最後のとりで」と大阪府泉佐野市、ふるさと納税を活用
親が育てられない子を受け入れる「赤ちゃんポスト」と、一部の病院関係者だけに身元を明かして出産する「内密出産」。大阪府泉佐野市が全国で初めて、自治体主導での実現に向けて準備を進めている。予期せぬ妊娠などで赤ちゃんを遺棄する事案が尽きない中、泉佐野市は「命を守る最後のとりで」として、2026年度中の開始を目指す。 これまで民間先行の取り組みだったため、行政による積極的な関与を当事者は歓迎する。ただ、乳児院の逼迫や生まれた子どもの「出自を知る権利」の扱いなど課題は山積。実現には懸念が残る。(共同通信=鎌田理沙)
大学の卒業証書と生みの親の写真を手にする宮津航一さん=2026年3月
▽ゆりかごに「感謝」
2007年5月、熊本市の慈恵病院が日本で初めてとなる赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置した。この初日に、1人の男の子が預けられた。当時3歳の宮津航一さん(22)だ。施設に描かれたコウノトリの絵は、その時の記憶として宮津さんの頭の中に残っている。
宮津さんは児童相談所による一時保護を経て、熊本市内のファミリーホームに引き取られた。「もう心配いらんけんね」。里親はありったけの愛情を注いでくれた。徐々に親子としての信頼関係を築いていった。 里親の元で暮らす子どもに、引き取られるまでの経緯を伝える「真実告知」は4歳の時だった。テレビでゆりかごの特集を目にした際、「僕ここ知ってる」と話したことがきっかけだった。
宮津さんは高校2年の2020年12月25日、里親との間に普通養子縁組が成立。現在は子ども食堂の運営に携わりながら当事者の目線を生かして全国で講演を重ねている。 宮津さんは自身の生い立ちを振り返り、きっぱりと言う。「僕はゆりかごでつながった命。この制度に感謝しています」
慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」。赤ちゃんは人形=2025年11月、熊本市
▽民間先行
慈恵病院で赤ちゃんポストが導入されてから19年が経過した。2025年には東京都墨田区の賛育会病院が続いたが、現時点で赤ちゃんポストと内密出産を実施するのは、この二つの病院に限られる。 児童虐待に関するこども家庭庁の専門委員会の検証によると、2023年度に発生や表面化した虐待による死亡事例は48人(心中を除く)。0歳児は33人と68・8%を占めた。生後24時間未満で死亡した「0日児」は2022年度の9人から16人へと増加し、行政や支援機関とつながっていたのはわずか1人だった。
予期せぬ妊娠や孤立出産で周囲に相談できぬまま悩んだ末、虐待や乳児の遺棄に至ってしまう―。 そうした最悪の事態を防ぐための取り組みが赤ちゃんポストや内密出産だが、民間先行の取り組みに対し、国からの支援はない。一部からは「安易な育児放棄を助長する」という批判の声もある。
慈恵病院の内密出産で生まれた赤ちゃん=2025年7月
▽「行政としても取り組む」。一石投じた泉佐野市
こうした現状に一石を投じたのが、泉佐野市だ。2025年5月、自治体主導で目指すと表明した。 千代松大耕市長は「女性が出産した子どもを遺棄してしまう事件は今でも続いている。行政としても対策に取り組みたい。命を守る最後のとりでになる」と決意を述べ、市外からの利用も想定する。
泉佐野市が連携先としたのは、市内にある「りんくう総合医療センター」。新生児集中治療室(NICU)などを備えた「地域周産期母子医療センター」として大阪府が認定する、地域の拠点病院だ。産婦人科を舞台にした漫画「コウノドリ」の主人公のモデルとなった医師の荻田和秀氏も在籍している。
この1年、泉佐野市は実現に向けた施策を相次いで進めた。
妊産婦らのオンライン相談を開始し、千代松市長自ら慈恵病院を視察。内密出産の費用は全額市で負担とすると表明し、出産前後の女性が滞在するシェルターの整備方針を示した。センター改修に予算を計上し、赤ちゃんポストは「赤ちゃんいのちのバトン」と命名した。
こうした自治体の関与に、慈恵病院に預けられた宮津さんは「社会から認められた制度かどうかで、本人の自己肯定感も変わる」と期待を寄せる。
慈恵病院を視察する千代松大耕市長=2026年2月、熊本市
▽「内容煮詰まらず見切り発車」懸念の声も
ただ、急ピッチの計画は粗さも目立つ。
受け入れた赤ちゃんを養育環境につなげるためには、乳児院や大阪府の児童相談所との連携が必要となる。しかし府担当者は「表明前に、こちら側に打診もなかった」と不安をにじませる。
6月の府議会でも赤ちゃんポスト事業が話題となり、泉佐野市の構想を府が説明した。事業初年度には赤ちゃんポストと内密出産でそれぞれ20人、計40人を受け入れるという想定だが、府主管の乳児院4カ所は定員計140人のうち3分の2を超えて埋まっており、府は「初年度から行き先に困る子どもが生じる恐れがある」。
家庭で一定期間養育する「養育里親制度」では、府は2025年度に157家庭で子どもを受け入れた。ただ、これ以上の余力はほとんどないのが現状だ。児童養護施設、児童自立支援施設などで養育する場合、自立まで府には費用負担も求められる。 府の関係者は「泉佐野市の事業によって乳児院の逼迫が想定されるし、府では児相対応も必要。市は準備不足」と言い切る。
泉佐野市は「事業計画書」を取りまとめて府に提出していたが、府からは人員配置の詳細や赤ちゃんを養育につなげる流れなど、細部の詰めを求められている。千代松市長は5月29日、赤ちゃんポストの運営開始目標を2027年1月末と表明したが、府側では「内容も煮詰まっていないのにスタートの時期だけ表明して、見切り発車にならないか」との声が上がる。
大阪府泉佐野市が「赤ちゃんポスト」の設置を連携して進めると表明した、りんくう総合医療センター=2025年6月
▽「出自を知る権利」は…
生まれた子が自身の誕生の経緯に触れる「出自を知る権利」も焦点だ。
内密出産に関して国が示した指針では、母親の身元情報の管理を医療機関に委ねているが、泉佐野市の場合、連携先のセンターは市による情報管理を期待している。泉佐野市は出向職員による取り扱いを想定し、調整が続く。 子どもが一定の年齢になって希望する場合、出自に関する情報にアクセスできるようにする運用が想定されるが、母親の意向やプライバシー保護もあり、子どもが望む形での情報提供がなされるかどうかは不透明だ。出自が分からず、当事者が苦しむ場合の対応まで想定が求められる。
何より赤ちゃんを手放そうとする女性に対し、他の行政サービスにつなげることなど、他の道が残されていないのかどうかの見極めも重要となる。大阪府の担当者は「赤ちゃんの境遇を考え、泉佐野市には受け入れの指針が必要だ」とする。
▽ふるさと納税を活用
懸念は費用面にも残る。
泉佐野市によると、ふるさと納税の寄付金を原資とした福祉基金を活用し、設備工事や運営に充てる方針だ。泉佐野市へのふるさと納税は、2025年度末の時点で累計寄付額が1730億円と際立っている。 ただ、「恒常的な寄付を確保できるのか。命に関わる事業なのに、寄付がないから続けられないというのはまずい」という懸念や「泉佐野市への寄付金なのに、市民以外も利用できる赤ちゃんポストと内密出産に使っていいのか」という意見が市内外から寄せられているという。 泉佐野市は今年3月から、使途を赤ちゃんポストや内密出産などに限った寄付の募集を新たに開始。市幹部は「全国からの寄付金なので、全国にいる予期せぬ妊娠で悩む人に使うのは問題ない」と説明した。
子ども家庭福祉や赤ちゃんポストに詳しい大阪総合保育大の山縣文治・特任教授は「自治体が取り組むことは利用者の安心につながる」と市の取り組みを評価する。 その上で、乳児院との連携や里親の充実には、養子縁組の斡旋団体と関係を持っておくなど市の積極関与も求められると指摘。国には「市の取り組み継続に協力すべきだ」と話した。