北九州空港で重大インシデント エンジン不具合で引き返した飛行機が滑走路逸脱

北九州空港で小型プロペラ機が離陸した直後、エンジンの出力が低下したため、すぐに引き返し着陸しましたが滑走路をそれるなどしました。国の運輸安全委員会は重大インシデントとして事故原因を調査します。
国土交通省によりますと、2日午前7時57分頃、北九州空港から成田行きの小型プロペラ機が離陸した直後、高度200メートル付近でエンジンから「ドン」という大きな音がして出力が低下しました。
すぐに引き返し着陸しましたが、その際、滑走路を逸れて草地でバウンドしながら方向を修正し滑走路に戻ったということです。乗っていた2人にケガはありませんでした。機体は、エンジンや排気管、翼の一部に損傷が見られるということです。
国土交通省は、飛行中におけるエンジンの継続的な出力の損失であるとして、重大インシデントに該当するとしています。
国の運輸安全委員会は3日、機長などから話を聞き、その後、北九州空港で機体を調べるなどして事故の原因を調査します。

《千葉・松戸》姉を刺殺して15分後に自首した弟を逮捕、犯行時刻に響いた音が意味する“2人の関係”

「殺害されたお姉さんとみられる女性が部屋に出入りするのを2、3回見かけました。派手な女性ではなく、服装はむしろ地味だったかもしれません。おとなしそうな印象で年相応に見えましたよ」
三栖万莉菜(みす・まりな)さん(37)が暮らしていた千葉県松戸市小金きよしケ丘の賃貸アパート近くの女性住民はそう振り返る。
10か所以上も刺しながら「殺すつもりはなかった」
このアパートで姉の万莉菜さんを殺害したとして、千葉県警松戸東署は6月20日、弟で和歌山市在住の無職・三栖史靖(みす・ふみやす)容疑者(33)を逮捕した。
松戸東署によると、同日午前11時15分ごろ、室内で万莉菜さんの胸などを刃物のようなもので複数回、突き刺すなどして殺害した疑い。
犯行の約15分後、アパートから約300メートル離れた交番を訪れ「姉を殺しました」と自首。すぐに警察官が現場に駆けつけると室内で万莉菜さんが血を流して倒れており、意識不明の状態で搬送されたが、病院で死亡が確認された。
「刺し傷は胸や腹、背中など急所付近を中心に10か所以上に及び、心臓に達する深さの傷もありました。司法解剖の結果、死因は多発刺切創による循環血液量減少の疑いがあります。いわゆる出血性ショックです。
自首した際は刃物を所持しておらず、現場から凶器とみられる刃物を押収しています。もともと部屋にあったものか、あるいは容疑者が準備したものか捜査中です」(捜査関係者)
史靖容疑者は取り調べに対し、「刺したことは間違いないですが、殺すつもりはありませんでした」などと容疑を一部否認している。
10か所以上も刺しながら、そんな言い訳が通るだろうか。
近隣住民らによると、万莉菜さんはひとり暮らしだったとみられる。間取りは1Kで家賃は月3万円程度。和歌山の実家を離れ、仕事をしながら自立生活を送っていたようだ。
姉の部屋の窓ガラスを割って無理やり入った弟
そんな万莉菜さんを事件当日に訪ねたとみられる史靖容疑者の次のような奇異な行動をキャッチした。
「ちょうど犯行時刻のころ、万莉菜さんの部屋から“ガチャン、ガチャン”とガラスの割れる音が2回、聞こえてきたんです。ガッチャーンと大きく響く音ではなかったのが逆に気になりました。
私は編み物をしていた手を止め、外に出て音の正体を確かめようとしました。でも、そのあとは何の音もせず、人の声も聞こえてきませんでした。どうやら弟さんは窓ガラスを割って室内に無理やり押し入ったみたいなんです」(アパート近くに住む80代女性)
実際、部屋の窓ガラスは割られていた。史靖容疑者はここから室内に強行突入した可能性があるとみて警察は調べている。
万莉菜さんが玄関ドアを開けなかったのか、容疑者は最初から窓を破って侵入するつもりだったのか、いずれにせよ緊迫した姉弟関係がうかがえる。
「事件の数日前、ゴミ出しするときにお姉さんとみられる女性が後ろで待っていて会釈したんです。さみしそうな表情でした」(同・女性)
史靖容疑者は上京するにあたり「新幹線に乗ってきた」と話しているという。それでも片道5時間以上はかかる。
「足取りや交通費をどう捻出したのかなど裏付け捜査をしなければいけません。なぜ、お姉さんを殺害したのか、犯行動機についても慎重に取り調べを進めています」(前出の捜査関係者)
どれほど関係がこじれようと、過去には姉を慕い、弟としてかわいがられたころがあっただろう。凶行に走る前に思いとどまれなかったか。

世良公則[ステルス自民]説を否定 学歴→卒業証書、国籍→「三代遡っても日本」戸籍謄本で説明

参院選(20日投開票)に大阪選挙区から無所属で立候補することを表明した歌手で俳優の世良公則(69)が2日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、“ステルス自民”といううわさを否定した。
世良は「私しの出馬に関して、自民党のステルスで票を割る為の刺客だと、SNS上で拡散されていると連絡がありました。」とコメント。「その方々は、どのように確認をされたのでしょうか。」と疑問を投げかけた上で「私しは、全くそのような考えはありませんし、お誘いも受けておりません。立候補の必要な供託金に関しては、自身で納め臨んでおります。」と明言した。
6月22日に投開票が行われた東京都議選で、いわゆる裏金問題が取りざたされて非公認で立候補し、当選を果たした3人を自民党が追加公認していた。“ステルス自民”として批判の声も起きていた。世良も無所属で出馬を表明したとあって、一部SNS上などで“ステルス自民”疑惑を指摘されていたとみられる。
世良はさらに「大阪芸術大学を本当は卒業していないという事も言われていると聞きました。昨日(1日)のメディアの記者会見で記者の方々には卒業証明書を提示しております。」と学歴詐称疑惑も否定。「また私しの国籍に帰化歴があるとの投稿があるという事ですが、三代遡っても日本国籍でございます。戸籍謄本は立候補の申請の際に提出しております。」と国籍についても説明した。
1日の出馬会見などで世良は「外国人土地取得規制」「オーバーツーリズム対策」「再エネ賦課金廃止」「積極財政、減税による経済対策」などを公約に掲げた。
(よろず~ニュース編集部)

ゲリラ雷雨と猛暑に引き続き注意 新たに台風3号が発生

きょう(木)も引き続き、ゲリラ雷雨と猛暑に注意が必要です。
【広範囲で大気不安定】 北海道や東北北部は、雲が優勢の空でにわか雨がありそうです。東北南部から九州、沖縄にかけては、晴れても天気急変に注意をしてください。中でも特に不安定なのが、関東北部、甲信、東海、近畿地方です。街中でもカミナリ雲が急発達して、一気に道路が冠水してしまうような雨の降り方になるおそれがあります。
【危険な暑さも】 西日本は35℃を超える危険な暑さになるところがあるでしょう。東日本や北日本も厳しい暑さが続きそうです。湿気が多く、かなり蒸し暑くなる見通しです。
【きょうの各地の予想最高気温】 札幌 :30℃ 釧路 :23℃ 青森 :28℃ 盛岡 :32℃ 仙台 :30℃ 新潟 :33℃ 長野 :33℃ 金沢 :32℃ 名古屋:34℃ 東京 :33℃ 大阪 :34℃ 岡山 :36℃ 広島 :34℃ 松江 :34℃ 高知 :34℃ 福岡 :34℃ 鹿児島:35℃ 那覇 :33℃
【台風3号発生】 きょう午前3時に台風3号が発生しました。あす(金)にかけて小笠原諸島の近海を進んだあと、日本の東の海上を北上するように進みそうです。本州に大きな影響はないとみていますが、海にはうねりが入りそうです。海のレジャーは十分にお気をつけください。
【週末からは暑さアップ】 週末からは暑さのレベルが一段と上がりそうです。猛暑日が続出し、体温を超えるような暑さの続くようなところも増えるでしょう。いっそう暑さに警戒が必要になりそうです。

“接近禁止”の口頭注意無視し妻の実家に… ストーカー規制法違反容疑で男(25)逮捕 北海道

北海道・苫小牧警察署は2025年7月2日、ストーカー規制法違反の疑いで男(25)を逮捕しました。
男は2025年6月23日から6月27日までの間、北海道苫小牧市内の妻の実家に押し掛け、ストーカー行為を繰り返した疑いが持たれています。
警察によりますと、男は2025年5月26日、妻とのもめ事で警察から「妻に接近禁止」の口頭注意を受けていたということです。
6月27日、妻の親族が警察に相談したことで事件が発覚しました。
調べに対し、男は「間違いありません。妻の居場所を知りたかった」と容疑を認めているということです。

伊東市長「卒業したと勘違い」、学歴詐称を否定…市議会議長「我々にちらりと見せた『卒業証書』は偽物」

5月の静岡県伊東市長選で初当選した田久保真紀・伊東市長の学歴問題は2日、急展開した。田久保市長は記者会見で、「東洋大学から『卒業』ではなく『除籍』と示された」と認めた上、「卒業したと勘違いしていた」と学歴詐称を否定。「経歴は選挙中に自ら公表しておらず、公職選挙法上は問題はない」と述べた。
この問題を追及してきた市議らは今後、本会議で調査権限の強い百条委員会を設置。市長に対する辞職勧告決議案を提出する構えだ。
市観光会館で開かれた記者会見には、顧問弁護士も同席。田久保市長は先月28日に大学に出向き、卒業証明書の申請手続きを行ったところ、「除籍されていたと判明した」と説明。「大学卒業について選挙中も自ら公表はしておらず、弁護士にも確認して、公職選挙法上、問題はない」と主張した。
市長の経歴訂正に対し、市議会の中島弘道議長は「我々にちらりと見せた『卒業証書』は偽物だったということ。市役所には苦情が殺到し、市民にも不安や疑問が広がっている」と述べた。その上で、市長に対する辞職勧告決議案を提出するとともに、百条委を設置して、市長の学歴問題をさらに追及する方針を示した。
市長会見が報道されると、市役所の秘書広報課や職員課には市内外から苦情や問い合わせが200件ほど寄せられ、職員が電話対応に追われた。
同市在住の40歳代の女性会社員は、「市民を代表する市長が、自らの思い違いだったから、経歴詐称ではないなんて言い訳をするなんて、あきれてしまう。全国ニュースにもなって、市民として恥ずかしい」と話していた。
読売新聞は、5月25日実施の伊東市長選の告示や投開票結果を報じた記事で、田久保氏の略歴欄の「学歴」について、本人の申告に基づき、「東洋大法学部」と記載していました。

「元カレに暴力を振るわれました」 女性が地面に投げ倒されけが 男(25)を逮捕 札幌市東区

札幌・東警察署は2025年7月2日、札幌市南区の会社員の男(25)を傷害の疑いで逮捕しました。
男は2日午後8時50分ごろ、札幌市東区北30条東1丁目の路上で、かつて交際していた女性(20)の左肩を押し、地面に投げ倒すなどの暴行を加え、けがをさせた疑いが持たれています。
女性は右ひじにすり傷を負うなどの軽傷です。
女性が「元カレに暴力を振るわれました」と110番通報したことで事件が発覚し、調べに対し、男は「暴力を振るったことは申し訳ないと思っています」と容疑を認めています。
警察が当時の状況などを詳しく調べています。

山尾志桜里の無所属出馬会見に張られた“予防線”、再びのダンマリに国民の不信感が爆発

2025年夏の参院選で国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里元衆議院議員が、7月1日に無所属での出馬を表明した。山尾元議員は元々参院選を国民民主党から出馬すると公表されていたが、6月11日に公認内定が取り消されている。
国民民主党の公認は取り消し
「山尾氏は5月に国民民主党の公認が発表された後、6月10日に出馬会見を実施。そこでは、彼女の過去の不倫疑惑に関しての質問が飛び出しました。
しかし本人は、“この場で新しく言葉をつむぐことはご容赦いただきたい”“その件はご勘弁いただきたい”と回答を拒否。その姿勢に批判が噴出していました」(全国紙社会部記者)
不倫疑惑とは、8年前に報じられた既婚の弁護士男性との交際について。
その後、2021年には『週刊文春』が男性との密会に山尾氏が議員パスを不正利用していた疑いや、男性の元妻が自死に至っていたことなどを報じ、大きな反響を呼んでいた。
世間からの反発を受け、会見翌日の6月11日には国民民主党・榛葉賀津也幹事長が山尾氏の公認取り消しを公表。「全国の地方自治体議員から、山尾さんの公認は見送ってほしいという声がありました」と、取り消しに至った経緯を説明している。
このとき、山尾氏は自身のXを更新し《大変残念です》などと、メモ用紙2枚分の“お気持ち”を表明。その文書の中でも、不倫疑惑については《会見では、お答えが難しい点もありました》《自身の新たな言葉が誰かを傷つける可能性がある以上口にしないと決めておりました》と、明言を避けている。
「全く客観視できない人」
そんな中での無所属出馬表明。当然、今回の会見にも注目が集まった。
「会見では、再び出馬を決意した理由について“ひと言で言えば、やはり中道政治を諦められない”と話し、“既存の政党が避けてきたテーマを、無所属だからこそ正面から掲げていく”と政治への熱い信念を語っています。
ちなみに、今回の会見では冒頭に司会者から“私生活については、すでに10日の会見で時間制限なくお話しさせていただいたので、本日は会見から後の経緯を新しく話します”と“予防線”が張られていました」(前出・社会部記者)
政治への意欲を示したものの、“ダンマリ”を貫く山尾元衆議院議員への世間の反応はやはり厳しく、
《この状況で出馬しようと思えるのがすごい》
《自分のことや世論を全く客観視できない人なんだな》
《説明責任を果たせない人に政治家が務まるわけがない》
など、政治家としての資質を問う声が多くあがっている。
果たして、山尾志桜里は当選となるのか。参院選の行方は――。

「だってたくさん再生されていたから…」新聞、テレビの選挙報道を信じない老女が「SNS情報」にのめり込んだ末路

――参議院選挙を前に、日本新聞協会は、メディアが公平性を過度に意識せずに、選挙期間中も積極的に報道するという声明を発表しました。背景には、不正確な情報によって選挙結果が左右される状況があるようです。
そもそも論として、ぼくには、オールドメディアと呼ばれる新聞や、テレビの報道は本当に公平だったのか、という疑問があります。
新聞やテレビが主に取り上げるのは、主要候補者ばかりです。確かに、主要政党の候補者をあつかう場合は、同じ行数の記事にしたり、同じ時間を使って取り上げたりして公平を意識したのでしょう。いえ、意識せざるを得なかった。そうしないと政党からクレームが入りますから。一方で主要候補者以外は、せいぜい名前や肩書、年齢くらいで、主張や政策を丁寧には伝えてこなかった。
とはいえ、それが間違いだと言っているわけではありません。各メディアによって、それぞれ報道のあり方や方針があります。そうした大手メディア以外の情報があったほうがいいだろうと考え、ぼくは「候補者全員に接触」を信条に選挙取材を続けてきました。
日本新聞協会の声明で注目したいのが、後半の選挙期間中も積極的に報道するという箇所です。裏を返せば、選挙期間中にもかかわらず、逆に選挙についての報道が減っているということです。
――それは、なぜなのでしょうか。
わかりやすい例が、昨年11月の兵庫県知事選です。選挙前、新聞やテレビは、斎藤元彦知事の批判を散々報じました。しかし県知事選が告示されるとパタッと批判しなくなった。それは、大手メディアが選挙に影響を与えるような報道を控えたからです。
加えて、新聞やテレビは、確かな情報だとしても、一度報じたニュースは基本的に繰り返しません。そこが、兵庫知事選で、オールドメディアが、SNSやインターネットに敗北した原因です。
兵庫県知事選を取材中に知り合った70代くらいの女性有権者がこんなことを話していました。
「オールドメディアは、自分たちにとって都合のいいことばかりを言っている。選挙前はあんなに斎藤さんを叩いていたのに、選挙に入った途端にメディアは何も言わない。斎藤さんが正しいから何も言えなくなったんでしょう」
NHK党の立花孝志さんは、元県民局長の不倫などを主張しましたが、オールドメディアは取るに足らないこととして放置したせいで、不確かな情報がどんどん拡散してしまった。
SNSやインターネットでは不確かな情報や、明らかなデマでも面白かったり、刺激的だったりすれば、何度も何度も投稿され、拡散されていく。記者が裏をとった確かな情報が、デマに押し流されてしまう。短い選挙期間中にデマを糾していくのは限界があります。その結果、投票の参考にすべき正しい情報が有権者に届かなくなってしまった。
オールドメディアは、これまで通り正しい情報を読者や視聴者に伝えるのが自分たちの役割だと疑いもしていなかった。SNSやネットの言説が、選挙結果を左右することはないだろうと軽視していました。しかしSNSやネットが選挙に強い影響を与えるようになり、メディアとしての役割を果たしきれなくなった。
兵庫県知事選で出会った女性に、ぼくはこんなふうに聞いてみました。
「オールドメディアは信じられないのに、なぜ、立花孝志さんが発信するSNSやネットの情報は信じられるのですか?」
ぼくの問いに対する答えが「だって、ものすごく再生されているじゃないですか」。
――信じる根拠が再生回数ということですか?
そうです。その女性に対して、ぼくはこう話してみました。
「86人の県議全員が信任しなかったんですよ」
「そうでしたよね……」と女性は一瞬考えたあと、こう続けました。「期日前投票で斎藤さんに投票しちゃいました」
彼女は、周りの人と政治や選挙について話す機会はないとも言っていました。選挙期間が短いから立ち止まって冷静になる時間もない。政治について会話しないから、ほかの人の意見を聞く機会もなかった。結局、オールドメディアに不信感を持っていた彼女はSNSやネットを信じるしかなかったんです。それは彼女だけではなかったはずです。その危機感のあらわれが、日本新聞協会の声明だったのではないでしょうか。
――SNSやネットが選挙に影響を与えるようになったきっかけを教えてください。
それはコロナ禍です。
組織や政党の支援を受けた候補者も、支持者を集めた政治活動や、街頭での選挙運動が制限されました。結果として候補者が戦えるフィールドがネットへと移行していきました。しかも、ネットは、選挙活動のハードルを下げました。
これまでは有権者は、街頭演説に足を運んでビラを配ったり、演説の手伝いをしたりして候補者を応援してきました。しかしネットはそうしたハードルを取っ払った。指先1つで、支持を表明できるわけですから。
選挙におけるSNSやネットの台頭を如実に示したのが、2023年の愛知県知事選です。
6人の候補者が出馬しましたが、衝撃的だったのが6番目だった候補者が8万8981票も獲得したこと。最下位の候補者が、東京ドーム約2杯分の有権者の支持を集めるような知事選はこれまで記憶にありません。従来のように、情報源が新聞やテレビだけだったら、こんな数字にはならなかったはず。最下位の候補者にこれだけの票が集まったのは、有権者がネットで情報を集めて投票の参考にしたからです。
となると、候補者もネットでの選挙活動に力を入れるようになり、言動や主張が過激化していく。そして兵庫県議会で、全会一致で不信任を突きつけられた知事が、SNSやネットで支持を集めて再選するという現象が起きた。候補者たちはその流れを見ているので、ネットでの活動がさらに過激化していく――というのが、選挙の現在地です。
――「候補者全員に接触」を信条とする畠山さんにとっても、不確かな情報をどう報じるのか、とても難しいように思います。
確かに、そこがとても難しい。
たとえば、史上最多の56人が立候補した昨年の都知事選では、木宮みつきさんがゲサラ法を実現させると主張しました。
――ゲサラ法ですか? なんですか、それは。
ぼくだけではなく、木宮さんの出馬表明の記者会見に出席した記者は、みんな困惑しました。
木宮さんによれば、ゲサラ法とは人類史上はじまって以来の徳政令で、すべての国民の借金、住宅ローン、カードローン、教育ローンなどを帳消しにする法律だそうです。ぼくはその財源はどうするのか質問しました。
木宮さんによれば、ディープステート(陰謀論のひとつで、国家の意思決定に影響を及ぼす闇の政府)によって奪われた金塊がみずほ銀行にあるそうです。
ぼくは『選挙漫遊記』で〈それは初耳です!〉と書きました。しかし選挙が壊れつつある現状を踏まえるともっと書きようがあったのではないか、そんなことは有り得ないとはっきりと読者が分かる表現にすべきだったのではないか、と反省しました。
兵庫県知事選でもそうですが、デマをデマだとはっきり否定しなかった結果、不確かな情報が広がって選挙に影響を与えてしまった。
木宮さんのケースで言えば、〈それは初耳ですね。何か証拠はあるんですか〉と聞き、彼女から〈証拠はありません〉という答えを引き出すまでを書くべきだったのではないか、と。
でも、その点では、オールドメディアの記者のほうが、悩みが深いかもしれません。フリーランスのぼくに比べると、新聞やテレビのほうが切り捨てなければならない情報や、無視しなければならない話が多いんです。
テレビ局や新聞社の記者がヘイトスピーチや陰謀論について語る候補者の第一声を取材したとします。番組では、陰謀論の部分をカットして、短く編集した映像を放送する。またはヘイトスピーチばかりでは記事にできないから、紙面に載せられるエピソードだけで記事を書く。
そうすると陰謀論を信じて、差別発言ばかりしていた候補者の記事や映像がまともなことを話しているように見えてしまう場合があるんです。しかも若くて見た目がシュッとしていると爽やかな候補者が組織などの後押しもなくて、1人でがんばっているというイメージがひとり歩きしてしまう。
だからこそ、いま、選挙報道には、記者の主観が求められていると感じます。公平な報道をどんなに意識したとしても、どうしても記者の主観は入ります。だとしたら、現場で取材した記者が、思いや感想をどんどん署名入りで発信していく。
文句を言われたり、クレームを付けられたりすることもあるでしょう。でも、そこに向き合うのが、言論の自由であり、記者やメディアの責任です。何よりも、それが、壊れかけた日本の選挙を救う方法なのではないでしょうか。(後編に続く)
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(フリーランスライター 畠山 理仁、ノンフィクションライター 山川 徹)

石丸伸二を支持した女性(71)は「初恋」に落ちていた…政治に無関心だった人たちが「バズる政治家」にハマるワケ

(前編から続く)
――昨今、選挙ではヘイトスピーチや陰謀論、デマが横行しています。現状をどうご覧になっていますか?
本来、選挙は自分の考えや主張を自由に発言できる場です。ぼくは、その自由な場に惹かれて、25年も選挙取材を続けてきました。そうした場を悪用して、差別発言やヘイトスピーチを繰り返す候補者が増えたことはとても憂慮すべき事態です。
選挙は楽しい。ぼくは、ずっとそう言い続けてきましたが、選挙の現場で差別発言やヘイトスピーチに遭遇すると取材後も気分が落ち込みます。当事者でないぼくですらそうなのですから、ヘイトスピーチのターゲットになった人や、マイノリティの当事者たちは、外を歩くのを躊躇するほどの恐怖を感じているはずです。
選挙演説で、頻繁に耳にするデマの1つに「外国人に生活保護費が1200億円も支払われている」という言説があります。これは自民党の片山さつきさんの発言が基になっていますが、根拠はありません。統計も取っていない。
公職を目指す者として、候補者は社会の分断を煽るような発言は慎むべきですし、取材する側も当然、指摘し、批判すべきです。しかし外からその議論を見ている人は、選挙を争いの場として受け止めてしまう。その結果、有権者を選挙活動の場や、投票所から遠ざけてしまっているのではないかと感じます。
――選挙から足が遠退く人もいる反面、昨年の都知事選に立候補した石丸伸二さんには、2000人以上のボランティアが集まったと言われています。
石丸さんやNHK党、参政党のような新しい勢力を支えるのが、既存の政党に満足できず、自分たちの思いや考えを報じないオールドメディアに対して、憤りを覚える人たちです。社会に疎外感を覚えている支持者も少なくありません。
選挙の現場に行くとオールドメディアを批判する人たちにたくさん出会います。兵庫県知事選では、「立花孝志さんの主張を支持する人がこんなにいるんだから、真実に違いない。だって、あんなに自信満々話している立花さんに対して、オールドメディアは反論もできずに、ぐうの音も出ないじゃないか」と話す人もいました。
昨年の都知事選では、石丸さんのボランティアをした71歳の上品なマダムという雰囲気の女性は「まさか私が選挙ボランティアをするなんて思わなかった」と話していました。
「政治に興味はなかったけれど、YouTubeで石丸さんの動画を見て驚いたんです。石丸さんは古い政治家に対して、私たちが思ったことを忖度せずに言ってくれています。これは応援しなければと思いました」
ぼくが「政治的初恋ですね」と言うと「そうなのよ」と笑っていました。
石丸さんは広島県安芸高田市の市長時代に議会で居眠りする議員をSNSで批判したり、記者会見で記者と対立したりする様子がYouTubeの「切り抜き動画」で拡散されたことで有名になりました。石丸さんのやり方には功罪がありますが、YouTubeやインターネットを駆使して、選挙に関心を持てなかった層を掘り起こし、選挙の場に呼び込んだことは大きな意味があったと思います。
ただし、先月の都議選で石丸さんが結党した「再生の道」は共通の政策をつくらずに42人の候補者を立てましたが、みんな落選してしまいました。「再生の道」がやろうとしたことは、NHK党が打ち出した、小規模な政党や政治団体がNHK党のもとに結集し、国政選挙で協力する「諸派党構想」と重なります。
それなのに、政治的な初恋に落ちた人の目には、新しい政治家がいままでにない手法で既存の政党や政治家と戦っているように映ってしまう。その意味で、これから政治や選挙を知り、初恋に破れて、大人になっていく必要があります。
――失恋から立ち直り、大人になるためにも畠山さんがおっしゃる選挙漫遊が大切になるわけですね。
自分にとってベターな選択をするには、比較検討が不可欠です。だからこそ、選挙を漫遊して、複数の政党や候補者の政策や主張を聞いて、比較検討してほしい。
しかし基本的に各政党や政治団体が行うのは有権者の囲い込みです。自分の主張とほかの政党の政策を比較検討して投票しましょうという政治家はほとんどいません。これまで候補者や政党は、支持者という一途で周りが見えなくなる恋人をつくるような選挙活動ばかりをして、政策や主張を冷静に比較して判断する有権者を育ててこなかった。それが、日本で投票率が上がらなかった原因の1つです。
取材の現場で危機感を覚えるのは、候補者を実際に見て投票する人がとても少ないこと。
みんなSNSやネットの情報、既存メディアが報じたニュースで、その候補者の主張や政策をわかった気になってしまう。または、有権者から政治が遠くなって、政治家を手の届かないショーケースに陳列されたような特別な存在と感じる人が少なくありません。
改めて考えてみてください。候補者自身が発信する情報は、その候補者が見せたい一面に過ぎません。カタログのような選挙公報や、候補者のSNS、編集された報道だけで、自分の権利である一票を投じていいのか……。ぼくは常々、選挙は政策の見本市だと伝えてきました。選挙とは勝ち負けを決める場ではなく、社会課題を解決するアイディアを持ち寄る場だ、と。
選挙では自分の代わりに政治を任せられる人を選ぶわけですが、自分の代わりに、と一票を託せる候補が見つからないという人もいるでしょう。しかし複数の候補者の話を聞けば、一部に共感できる政策や主張に出合えます。
メディアが取り上げない“泡沫”と呼ばれるような候補者もみんなに知ってほしい主張があり、実現したい政策があるから、安くはない供託金を支払って立候補しています。なかには主要な政党の候補者とは比較にならないほどの熱量を持つ候補者もいます。彼ら、彼女らの主張や政策は社会に必要とされるアイディアの宝庫です。
主張や政策のすべてに賛同できなくても、共感できる内容は少なくありません。当選した議員が落選した候補者の主張を取り入れた政策に取り組むケースもあります。
当然ですが、政治家も人間です。その人間に政治を託していいのか、自分の目で見て判断していくしかありません。
何よりも、候補者たちは、有権者と触れ合うことで成長し、変わっていきます。街頭演説に足を運べば、あんなに嫌っていた政党の候補者があなたに寄ってきて「何かお困りごとはありませんか?」と聞いてくれるかもしれません。あなたの一言が、その政治家によって政策に反映される可能性だってあります。
当選後も、事務所に行って「ちゃんとやれよ」と声をかけることもできます。そうした有権者とのコミュニケーションが緊張感を与えて、政治家を鍛えていく。
あるいは、裏金疑惑で逃げ回っている議員がどんな顔で演説しているのか。その姿を見れば、その人間性を感じられるでしょう。実際に会えば、絶対に投票してはいけない人を発見できるかもしれません。YouTubeや報道だけを参考に投票して、「こんなはずじゃなかった」という後悔が減るはずです。
政治家はぼくら市民のために働く公僕です。もっといい働きをしてもらうためにも、有権者の側が、候補者に近づく必要があるのです。
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(フリーランスライター 畠山 理仁、ノンフィクションライター 山川 徹)