[東日本大震災15年]明日への道<3>
おびえたように体を震わせる小型犬の顔をなで、語りかける。「ごめんね。でも、おりこうさんだね」。さいたま市内の動物病院で、獣医師の佐藤森(しん)さん(28)が、神経症の疑いで訪れた犬の検査に当たっていた。
勤務先の動物病院には磁気共鳴画像装置(MRI)などの最新鋭の検査機器があり、ほかの病院で対応が難しい犬や猫が相次いで来院する。病巣などを見逃すまいと、時間を惜しんで検査結果に目を凝らす。
「動物に恩返しできる獣医師になれてよかった」。この道に導いたのは、不安で胸が押しつぶされそうな15年前の避難生活を支えてくれた一頭の犬だった。
中学1年だった2011年3月11日。通っていた岩手県山田町の学校で地震に遭い、そのまま同級生らと高台の避難所へ向かった。
町内の高齢者施設で働いていた母・由美さん(当時51歳)とずっと連絡も取れず、安否がわからなかった。2週間ほど後、由美さんの職場の仲間から「仕事中、津波に流されたようだ」と聞かされた。現実として受け止められなかった。
父は長く千葉県へ単身赴任しており、由美さんが1人で仕事と家事を両立させていた。慌ただしい日々の中でも、少年野球の試合には大好物の唐揚げと特大のおにぎりを持たせ、応援に駆けつけては「しんー!」と外野にはっきり届く大きな声援を送った。夏場になると船に乗って離島へ海水浴につれて行ってくれるのも、大きな楽しみだった。
母が見つからない不安と寂しさでいっぱいだったが、避難所では努めて明るく振る舞い、雑務をせっせと手伝った。高齢住民が連れてきた犬の世話も引き受け、一緒に周辺を散歩した。
犬は、垂れた耳と長い眉毛が特徴のミニチュアシュナウザー。人なつっこくまとわりつくのが愛くるしく、気付けば誰にも言えない思いを語りかけていた。
「お母さん、どこに行ったんだろう」「また学校に行けるかな」――。言葉なんて伝わらないはずなのに、犬は沈んだ気持ちを癒やすようにじゃれてくれた。「ほかの避難者もピリピリしていた。あの犬のおかげで気持ちが落ち着いた」
避難生活を終えて犬と別れても、由美さんの行方はわからなかった。2年半後、施設から約10キロ南の海岸で由美さんの遺体が見つかった。母を失ったと、ようやく諦めがついた気がした。
中学3年で父が働く千葉に転居しても、つらい日々を支えてくれたあの犬のことは忘れられなかった。「動物の力になれる仕事がしたい」。いつしか獣医師を志していた。
進学した北里大獣医学部では、がんなどの重病の兆候を早期発見できる放射線学を専攻した。大学病院で診察の補助を経験した時には、命を救えず無力さを味わったこともあるが、手を尽くしたことに飼い主から感謝され、仕事の重みを実感した。
恩師で同大准教授の和田成一さん(55)は、入院中の犬や猫の食事管理や飼い主への説明に丁寧に当たる佐藤さんの姿をよく覚えている。「不安を抱える動物と飼い主の両方に誠実に向き合う獣医師になれると思った」と振り返る。
23年に国家試験に合格し、獣医師としての歩みを始めた。毎日、介護職として高齢者を支えた由美さんを今も誇りに感じる。「自分も誰かの役に立てる存在でありたい」。そんな気持ちで小さな命に向き合い続ける今の姿を、誰よりも由美さんが喜んでくれると思っている。
由美さんは車いすの入所者らを避難させるため、逃げるのが遅れたと同僚から伝えられた。母もまた、命を守ろうと必死だった。
震災でかけがえのない母を失った。それでも、こうも思う。「震災がなければきっと獣医師にならなかった。大きなものも得られたんだな」(柳沼晃太朗)
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ODA、重要鉱物の確保など経済安全保障に対応と明記…25年版「開発協力白書」原案判明
政府開発援助(ODA)に関する2025年版の「開発協力白書」の原案が判明した。日本側が支援メニューを提案する「オファー型協力」や、民間投資を促す仕組みを活用し、エネルギーや重要鉱物の確保といった経済安全保障に対応すると明記した。
外務省が近く公表する。ODAを国際社会で存在感を高める日本外交の重要なツールと位置づけ、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携を強化して「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を進化させることも盛り込んだ。
発展途上国の返済能力に見合わない過剰な融資を行い、返済不能になった国への影響力を強める「債務のわな」を巡る問題に懸念を示し、「国際社会が一体となって取り組む必要がある」と指摘した。中国から巨額の融資を受けたスリランカが債務の返済に窮し、ハンバントタ港の99年間の運営権を中国企業に売却した例が知られている。
24年のODA実績は前年比15・9%減の約164億9353万ドル(約2兆4978億円)だった。経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会メンバー32か国のうち、米国、ドイツ、英国に次ぐ4位となり、4年ぶりに順位を一つ落とした。
高市総理の“カタログギフト問題”納得できる?世論調査では拮抗 本質的な問題は?【JNN世論調査解説】
高市内閣の支持率は依然好調だ。 自民党衆院議員全員に贈ったカタログギフトについて「違法ではない」と強調した総理の説明に納得するかどうかについて、ほぼ世論が拮抗し、ほとんど支持率には影響がなかったと見られる。
石破総理の商品券問題は批判され謝罪に追い込まれたが、今回の問題と何が違うのか。
若者の支持率9割 自民党支持率も回復傾向
2月28日、3月1日で実施したJNNの世論調査で高市内閣の支持率は、前回調査(1月31日、2月1日)と比べ1.9ポイント上昇し、71.8%となった。突然の衆議院解散への反発もあり、前回調査では7割を切った支持率だったが、今回再び7割台へと回復した。
若い世代の支持率も依然高く、「30代未満」では支持率90%に達した。一方で「60歳以上」では支持率は58%と落ち込む。「現役世代」に広く支持されている内閣だということが改めて分かる。
自民党の支持率も高市内閣発足後、回復傾向にある。
2025年の8月の石破内閣の自民党支持率は、自民党が政権に復帰した2012年以降で過去最低の20.4%まで落ち込んだ。今回は37.3%まで上昇している。「35%以上」に回復するのは2022年8月(岸田内閣)以来、3年半ぶりだ。
自民党支持率を年代別にみると、「30代未満」では37%、「60代以上」でも38%であり、世代間で差があまりみられない。なお「40代」が最も高く42%だった。
主要野党の支持率の傾向は、中道改革連合が前回から3.6ポイント下落して下降傾向、国民民主党も30代未満では自民党に次ぐ8%の支持率だが全体的には下降傾向である。衆院選で大幅な議席増となった参政党の支持率は横ばい。
一方、前回より3.0ポイント支持率が上昇したのがチームみらいだった。衆院選は11議席獲得し、当初、社会保障国民会議に野党で唯一、出席するなど存在感が増したことなどが考えられる。特に50代では自民党に次ぐ2番目に高い支持率(11%)だった。
“カタログギフト問題” 総理の説明「納得できない」54%
2月24日、高市総理が衆議院の当選祝いとして自身を除く自民党議員315人全員に1人約3万円相当のカタログギフトを贈っていたことが判明した。
高市総理は「私自身、昭和の中小企業のおやじ社長的なところがあって自分の会社の社員に何らかのねぎらいの気持ちを示したいなと思った」「考えに考えに考えた挙げ句、大体結婚式のお祝儀だったら、これぐらいかなという金額でかなり例外的なことをした」などとカタログギフトを配った理由を説明した。
その中で、何度か強調したのは「自身が支部長を務める奈良県第2選挙区支部の政治資金からの支出であり、政党支部から議員個人への寄付として法令上も問題はない」ということだった。
政治資金規正法では政治家個人から他の候補者への金銭などの寄付は原則禁止だが、今回のように政党支部からの寄付は現状、認められている。(ただし2027年1月1日から政党や政党支部から政治家個人に寄付することは法律で全面的に禁止になる)
こうした総理の説明について納得できるかどうか4段階で聞いたところ、 「非常に納得できる」14% 「ある程度納得できる」31% 「あまり納得できない」28% 「全く納得できない」26% で「納得できる」と「納得できない」はおおむね拮抗している。
こちらも年齢別に分析すると、「30代未満」は「納得できる」が64%、「納得できない」が35%、一方で「60歳以上」では「納得できる」27%、「納得できない」72%と、高齢層のほうが厳しい評価で、年齢別の内閣支持率と同じような傾向がみてとれる。
「石破総理の商品券」と「高市総理のカタログギフト」なにが違う?
この件について野党から以下のような指摘が上がった。
・「法令上問題はなくとも、有権者の中には失望や戸惑いを感じている人もいる。自民党の古い慣習を刷新することを期待されている高市総理だからこそ、今回の対応についての説明と今後の姿勢が問われている(公明・竹谷とし子代表)
・「庶民感覚、国民の金銭感覚からはやはりかけ離れた行為だった」「やはり党支部であれば、名義は高市早苗ではなく自民党奈良県第2区総支部とすべき」(中道・小川淳也代表)
・「総理御自身の政治団体政党の支部等の政治資金の使い方として贈答品をやめていくことが、企業・団体献金を減らしていくことにつながる。政治にお金がかからない、文化をつくっていくということが必要である」(中道・落合貴之議員)
今回の件で思い出されるのは、ちょうど1年前の石破総理のケースだ。
石破総理が新人議員15人に10万円の商品券を渡し、多くの批判を受け謝罪に追い込まれた。新人議員全員が商品券を自主的に返却した。
石破総理は当時「会食のお土産代わりに、ご家族へのねぎらいなどの観点から、ポケットマネーで用意した」と話したうえで、政治活動に関する寄付ではないと主張し、法的に問題はないとの認識を示した。
一方、高市総理は個人ではなく政党支持部からの支出であり、個人が政治家個人へ行う金銭寄付を禁止する政治資金規正法には抵触しないと強調した。
両者の違いは「支出が個人か政党支部か」「商品券かカタログギフトか」「新人議員15人に10万円か、自民党全議員315人に3万円か」の主に3点で、ここに本質的な違いはなく両者ともに脱法的な行動である。「ねぎらい」の気持ちで渡したという2人の言い分は全く同じだった。
では、なぜ石破総理は大きな批判を浴び謝罪し、高市総理はそこまで批判を浴びないのか。 これは「イメージ」と「支持率」が影響している。
石破総理は元々、お金にクリーンなイメージがあった中で、商品券配布問題が発覚したことで大きな失望を招いた。さらに“仲間が少ない”石破総理が「新人を囲い込むためだったのでは」という印象もつきまとった。
一方、石破総理と同じく“飲み会嫌い”の高市総理がとった行動は、商品券と比べ換金性の低いカタログギフトという「物品」を、自民党議員「全員」に送ったことで、より批判の目を小さくした。やっていることに差はないものの、受ける印象が違った。
そして最大の両者の違いは「支持率」だ。
問題が発覚した当時の石破総理の支持率は38.4%(25年3月)でいまの高市総理の半分程度、商品券配布発覚後の支持率は30.6%(25年4月)と急落する。 一方、高市総理は問題発覚後も支持率は微増した。
「政治家のモラル」と「法の抜け穴」
本質的に問題なのは、政党支部の政治資金が事実上、支部長(ここでは高市総理)が自由に使える“ポケットマネー”になってしまっていることだ。しかも政治資金は所得税がかからない非課税で優遇されている。
政党支部の政治資金の原資は、政党交付金(原資は税金)のほか、企業や個人からの献金であり、本来は地元の政治活動のために使われるべきもの。それを身内へのプレゼントとして1000万円近く使っていいのかという政治家としてのモラルが問われている。「政治活動」の定義が極めて曖昧なことも問題だ。
総理は法律を「よく調べた上で対応した」と述べるなど、用意周到に脱法的な行為を行っている。総理という最も率先垂範しないといけない人物がこのような政治資金の使い方をすることは、若手・中堅の自民党議員に対して示しが付かない。 同時に「抜け穴」の多い政治資金規正法も野放しにしてはいけない。
TBS政治部・世論調査担当デスク室井祐作
【JNN世論調査の結果概要】 ●高市内閣の支持率は71.8%(前回よりも1.9ポイント上昇)。不支持率は24.9%(前回より1.6ポイント下落)。
●政党支持率は、自民党37.3%(前回より2.6ポイント上昇)、日本維新の会3.8%(前回より0.1ポイント下落)、中道改革連合は4.9%(前回より3.6ポイント下落)、国民民主党3.5%(前回より1.6ポイント下落)、参政党は4.6%(前回より0.6ポイント上昇)、チームみらいは4.2%(前回より3.0ポイント上昇)
●衆院選の結果について「与党がもっと議席を取るべきだった」7%、「野党がもっと議席を取るべきだった」50%、「ちょうど良い」36%
●今後食料品の消費税について「2年間に限りゼロにする」28%、「恒久的にゼロにする」39%、「減税すべきではない(増税すべき含む)」29%
●給付付き税額控除に賛同する野党にだけ参加を呼びかけた国民会議の進め方について「理解できる」35%、「理解できない」52%
●高市総理のカタログ問題について、高市総理の説明に「非常に納得できる」14%、「ある程度納得できる」31%、「あまり納得できない」28%、「全く納得できない」26%
●新年度予算案の審議の進め方について 「審議時間を短くして年度内に成立させるべき」54% 「年度をまたいでも例年並みの審議時間を確保すべき」42%
●中道改革連合の今後について 「再び立憲民主党と公明党に分かれるべき」42% 「参議院や地方議員も含めて完全合流すべき」23% 「衆議院だけ合流した今の形のままでいい」21%
●防衛装備品の輸出について 「条件をつけず輸出を全面的に解禁すべき」7% 「一定の条件や歯止めを設けた上で解禁すべき」33% 「今のルール通り殺傷能力をもたない防衛装備品に限って輸出すべき」41% 「殺傷能力の有無に限らず防衛装備品の輸出をやめるべき」16%
【調査方法】 JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。2月28日(土)、3月1日(日)に全国18歳以上の男女2832人〔固定748人、携帯2084人〕に調査を行い、そのうち36.3%にあたる1028人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話428人、携帯600人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。
“国立博物館と美術館の閉館・再編報道”の真相…「再編には閉館も含まれる」背景に文化庁と財務省の攻防か
3月4日に読売新聞オンラインが報じた『国立博物館や美術館に収入目標、未達成なら閉館含め再編検討…30年度までに文化庁』という記事が波紋を呼んでいる。
朝日新聞の関係者取材で浮き彫りになった真実
来年度から5年間、収支均衡を目指した数値目標を設定。未達成の場合、閉館も含めた再編を検討するという内容に、SNSでは悲しみの声が多く上がる結果に。
《国立の博物館や美術館が収入増を目指さなきゃいけないの?》 《文化庁って、むしろこういう声から文化を守る側だと思っていたけどな》 《国立美術館で推しの子展とか見たくないでしょ》
しかし3月5日には、この報道自体がミスリードだと指摘する投稿や報道が。『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』で知られる漫画家で、参議院議員の赤松健氏は文化庁に確認したと前置きして、Xにこう投稿。
《タイトルの「閉館含め」は煽りすぎ 来年度から5年間の次期中期目標で数値目標を定めたのは事実ですが、「未達成の場合、閉館も含めた再編を検討する」の「閉館も含めた」の部分は、文化庁側は言っておらず、中期計画表にも全く書いてありません。
明らかに煽りすぎです。 もともと「閉館」は想定しておらず、「再編」とは各地の博物館・美術館が持つ役割分担を変更していくことを意味しています。(例えば京都近代美術館がサポートする範囲を変えるなど)》
同日配信されたネットメディアIT media NEWSの『「“閉館”どこにも書いてない」──国立の博物館や美術館に収益目標設定の真意、文化庁に聞いた』という記事内で、文化庁担当者もこう否定している。
《展示事業の自己収入の割合が(次の中期の4年目で)40%を下回ったという点だけをもって、すぐ再編ではありません。(中略)ただ、「閉館」という言葉は中期目標のどこにも書いてありませんし、口頭で伝えたこともないです。新聞の取材は受けてないので(出どころは)分かりません》
赤松氏は今回の中期計画表はむしろプラスに働くと、Xの投稿で続けている。
《むしろ令和8年度の運営費交付金額は、これまでと比較して物価高騰分などの上乗せが見込まれています。さらに、国際観光旅客税を財源に、国立美術館などにインバウンド向け補助金も創設。国立科学博物館の場合、何と+10億! ここは素直に、財源獲得に動いた文化庁のお手柄と言えそうです》
しかし、5日20時に朝日新聞のウェブ版で配信された『訪日客に「二重価格」国立博物館など導入へ 財務省、閉館も含め圧力』という記事でも、《財務省は、「再編」には閉館も含まれるとしている》という一文が。
同記事では厳しい要求を突きつける財務省と文化庁の間で攻防が繰り広げられていることが、関係者への取材で浮き彫りになったことが綴られている。
文化を守るためにも、《閉館も》という記事が煽りであってほしいが……。
「おとうは、かっこいいけど…」 津波で父は行方不明 15歳の野球少年は30歳に 娘ができて初めて気づいた“父の偉大さ”
その少年を初めて見たのは、今から15年前、テレビ画面の中だった。彼はナゴヤドーム(現バンテリンドーム)のマウンドで躍動感あふれるフォームから、ストレートを投げていた。
緊張した面持ちが開放され、白い歯がこぼれた瞬間、私は心から安堵したことを記憶している。
岩手県陸前高田市に住む米崎中学3年生の吉田凛之介君は、この日名古屋市の招待を受けて修学旅行でナゴヤドームに来ていた。名古屋市の粋な演出もあって、彼は始球式に登場したのだった。
本来は別の場所に行く予定だった修学旅行が中止になり、急遽名古屋市に来ることになった理由は、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。
消防団員で正義感あふれる父は、津波の犠牲に
18メートルを超える津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田市。人口約2万4000人のうち1750人以上が亡くなり、未だ行方が分からない人も。
その中に、凛之介君の父親の利行さんがいた(震災当時43歳)。
消防団員であり、正義感あふれる利行さんは、逃げ遅れた高齢者を助けようとして、津波にのまれたという。自分の命よりも困っている人を優先した、利行さんらしい最期だったという。
15歳の彼は…明るく素直な野球少年
私は、修学旅行の最中に凛之介君と初めて会った。被災地となった陸前高田市を支援していた名古屋市からの依頼で、彼らを盛り上げるためのイベントの司会を任されたのだ。
マイクを向けた彼は、朴訥としているものの、とても明るくて素直な野球少年という印象だった。父親が行方不明になっていると耳にしたのは、彼が名古屋を後にして、私が御礼の手紙を学校の先生からもらった時だった。
中学校では野球部でエース、熱心に野球をたたき込んだのは父親だった。私の少年時代の境遇に似ていたからか、自分にも息子がいたからか、私は彼のことが気になった。
20歳の彼は今までと違っていた
その後、20歳の成人式の時に彼と再会した。一回り大きくなった彼からは、以前のような素直さが消えているようにも感じた。
取材という違和感もあっただろう。しかし、それよりも父親が津波で奪われたという、記憶から消し去りたい過去を蒸し返されることを嫌っているようだった。
私の質問にしっかりと答えてくれることはあまりなく、話をそらしたり、不機嫌になることもあった。
震災から15年。私はもう一度彼に会いたくなった。再会して、その後を確認したかった。
「ここで、キャッチボールをしていました」
小雨が降りしきる中、彼は自宅前で待っていてくれた。髪は伸び、大人びた雰囲気の彼に声をかけた。
「大人になったね?」 「もう30歳ですからね」
15年の歳月を感じた。
彼が選んだ生業は農業、祖父と祖母がやっていた野菜や生花の栽培を、一生の仕事にすることを決めた。市外で他の仕事もしていたが、やはり陸前高田が好きだからと地元に帰り、父親が定年を迎えたらやる予定だった農業を生業にしたかったのだという。
「ここで、子供の頃におとうとキャッチボールをしていました」と畑の一角を指さした。やはり、大好きな、尊敬する父親の側にいたかったのだろう。選んだ職場は、父親との思い出の場所でもあった。
30歳になった彼は、20歳の時とは違い、父親のことを雄弁に語ってくれた。これまで何度か電話で会話もしていたが、今回初めて聞く話も多かった。
それは震災後から絶望の中で封印した記憶が、最近蘇ってきたからだという。同時に、10年前は語ってくれなかった父親をことを素直に語れるようになったのは、自分の中であの壮絶な体験をようやく消化できたからだと教えてくれた。
「おとうはかっこいいけど…」
「娘は可愛いです」
スマホは、娘の写真で溢れていた。5年前に結婚した彼も父親になっていた。父親になって、改めて気づいたことがあったという。
「大きくなるまで育ててくれたおとうは、すごいです」
父親になって、父の偉大さに気づいたという彼が頼もしく見えた。最後に東日本大震災を経験した彼から、地震への備えを聞いた。
「おとうはかっこいいけど」と前置きしたうえで、「自分の命を優先して、まずは自分の命を守って下さい」と口にした。
壮絶な経験をし、それを乗り越えたからこその、誰よりも説得力のある息子の、そして父親としての言葉だった。
【CBCテレビ論説室長 大石邦彦】
「世界に発信するに値する」山形の魅力とは 国内外メディアが絶賛、海外客誘致へPR
国内外のメディアから2025年秋以降、相次いで高い評価を受けた山形県内が活気に沸いている。日本の英字紙ジャパンタイムズは「世界に発信するに値する自治体」として山形市を選定。米旅行誌ナショナルジオグラフィックも「2026年に行くべき世界の旅行先25選」に山形県を国内で唯一選んだ。関係者は波及効果を期待し、海外の観光客誘致に向けてPRや多言語表示に取り組む。(共同通信=中村茉莉)
山形市は2025年に創設された「ジャパンタイムズ・デスティネーション・リージョン」の第1号。「地域の文化的・歴史的背景を大切にし、次世代に伝える努力をしている」「持続可能なコミュニティーのあり方を追求している」などのポイントで自治体の取り組みを評価し、単なる観光情報の発信とは一線を画して今後も毎年1自治体を選ぶ。
山形市は戦火や震災に遭わず残った城下町を歩いて暮らす街として再生しようとする施策のほか、文化活動拠点や子育て施設が充実している点などを評価された。2025年11月に市内で開かれた表彰式で、選定のアドバイザーを務める日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員は「山形は一歩他の街に抜きんでているところがある」と称賛した。
市は目指す将来像を「歩くほど幸せになるまち」として、中心市街地の歩行者増加に取り組む。芸術分野のイベントも多く、2年に1度開かれる「山形国際ドキュメンタリー映画祭」は世界各国の映像制作関係者が集まり活発に議論を交わすことで知られる。山形交響楽団は設立50年を超え、ファンの支持も厚い。
ナショナルジオグラフィックは山形県を「東京から320キロほどの距離にもかかわらず別世界のような静けさを保ち、混雑を避けて伝統と神秘的なアウトドア体験ができる」と評価。蔵王の樹氷や、山岳信仰と山伏で知られる出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)などを紹介した。
山形市の佐藤孝弘市長は海外からの熱視線に「もっと磨いてブランドにしたい」と意気込む。春から初夏にかけては名産のサクランボも旬を迎える。高まる注目が山形のさらなる追い風となりそうだ。
埼玉・戸田市の住宅から2人の遺体が見つかる 死体遺棄の疑いで57歳の男を逮捕 遺体は父親(80代)と伯父(90代)とみて警察が身元確認進める
きのう(7日)午後、埼玉県戸田市の住宅から2人の遺体が見つかりました。警察は、この家に住む57歳の男を死体遺棄の疑いで逮捕し、いきさつを調べています。
埼玉県警によりますと、きのう午後、埼玉県戸田市美女木の住宅に住む男性の親戚から「長年、会っていない人がいる。心配なので確認してもらえないか」との相談があり、警察官が住宅を訪れたところ、2人の遺体が見つかったということです。
遺体は、1階にある和室2部屋の布団の上からそれぞれ見つかり、現場の状況から長い間放置されていたとみられるということです。
警察は、この家に住む萩原利一容疑者(57)を死体遺棄の疑いで逮捕し、萩原容疑者は「間違いありません」と容疑を認めているということです。
警察は、亡くなったのは萩原容疑者の80代の父親と90代の伯父とみて、身元の確認を進めるとともに、これまでのいきさつを調べています。
【速報】北海道雌阿寒岳で噴火 ポンマチネシリ火口 大きな噴石に警戒を 札幌管区気象台
速報です。
8日午前9時15分ごろ道東の雌阿寒岳で噴火が発生しました。
気象台は大きな噴石への警戒を呼びかけています。
札幌管区気象台によりますと雌阿寒岳のポンマチネシリ火口で噴火が発生しました。
噴煙は火口からおよそ100メートルの高さまで上がり南東に流れているということです。
現在までに噴火による大きな噴石の飛散は確認されていません。
気象台はポンマチネシリ火口からおよそ500メートルの範囲で大きな噴石への警戒を呼びかけています。
雌阿寒岳が噴火するのは去年10月25日以来です。
熱海土石流起点の土地の旧所有者を再逮捕 新型コロナ協力金詐欺疑い
新型コロナウイルス流行期に休業や営業時間短縮に応じた飲食店へ支払われた協力金をだましとったとして、静岡県警は7日、神奈川県小田原市城山3の会社役員、天野二三男容疑者(75)ら2人を詐欺の疑いで再逮捕した。2人の認否は明らかにしていない。
再逮捕容疑は、小田原市内で閉店中のライブハウスを営業しているかのように偽りの申請をし、2021年4月に神奈川県が交付した新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金約170万円をだましとったとされる。また、当時、天野容疑者の下で働いていた綾瀬市落合北5の警備員、石塚加代子容疑者(57)と共謀して同年4月、同様に約200万円をだましとったとされる。
天野容疑者は21年7月に熱海市で発生した大規模土石流で、土砂崩落の起点となった土地の旧所有者。土石流を巡る捜査の中で詐欺が発覚した。【藤渕志保】
「道路に牛いる」鳥栖の県道に突如6頭の牛、一時渋滞…近くの牛舎から逃げたか
7日午後5時半頃、佐賀県鳥栖市真木町の県道付近で、「道路に牛がいる」と110番があった。複数の牛が道路上を歩き回るなどしたため、県道は一時渋滞したが、けが人はいなかった。
佐賀県警鳥栖署などによると、牛は6頭で体長2メートルほど。近くの牛舎から逃げ出したとみられ、連絡を受けた所有者が誘導していずれも連れ戻したという。
現場は県道17号の佐賀県鳥栖市と福岡県久留米市の境付近。近くの「大龍ラーメン小森野店」の女性店員(25)は「動き回っていて危なかった」と驚いた様子だった。