春の褒章に603人28団体…絆の逆転劇「りくりゅう」、リア王の吉田鋼太郎さんなど

政府は28日付で、2026年春の褒章受章者603人(うち女性137人)と28団体を発表した。29日に発令される。
学術研究や芸術、スポーツなどの分野で活躍した人に贈られる紫綬褒章には、ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートのペアで日本勢初の金メダルを獲得した三浦璃来(りく)選手(24)と木原龍一選手(33)、俳優の吉田鋼太郎さん(67)ら26人(同7人)が選ばれた。
各職業分野で一筋に励んだ人が対象の黄綬褒章は、195人(同18人)、福祉や教育など公益に尽くした人への藍綬褒章は373人(同104人)が受章した。社会奉仕活動に貢献した緑綬褒章は9人(同8人)と28団体だった。人命救助に力を尽くした紅綬褒章の受章者はいなかった。
「あなたのために滑る」に奮起
2月のミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートで、ペアとして日本勢初の金メダルに輝いた。ショートプログラムはリフトが崩れて5位と出遅れ、「もう終わった」と落ち込む木原さんを、三浦さんが「積み重ねてきたものがある」「私はあなたのために滑る」と励まし、フリーで逆転。その絆が感動を呼んだ。
2019年にペアを結成し、カナダを拠点に鍛錬を重ねて世界トップに上り詰めた。受章について2人は「大変光栄に存じます。パートナーとともに歩んできた日々、そして多くの方々の支えがあってこそ、今の私たちがあります」とコメントした。
今後はプロとして活動し、後進の育成にも携わる予定で、「もっとフィギュアのペアを知っていただけるように、様々な活動に2人で挑戦したい」と木原さん。「りくりゅう」の歩みは続く。
点数出ない仕事に合格点もらったよう
「点数の出ない仕事。大丈夫だよという点数をもらったよう。背筋を伸ばし、邁進していこうという勇気をもらえた」と喜びを語る。
大学在学中の18歳の時にシェークスピア劇を始めて、50年。近年は映画、ドラマでも高い評価を受けているが、演出家の蜷川幸雄、出口典雄の薫陶を受けた生粋のシェークスピア俳優だ。演出も多く手がけている。
現在は、5月にさいたま市で開幕する主演舞台「リア王」の稽古中。老境の王を演じるが、「感情の振幅がとてつもなく大きい。体力、精神力、知力がいる」と難役ゆえの魅力を語る。
師匠の蜷川と同じく、「シェークスピアと言えどエンターテインメント。知性を大事にしつつ、涙と笑いと感動がないとやる意味がない」を持論としている。そして、今後の目標も定まった。「リア王を80代でやりたい。やれるもんなら90代、100歳でも」
芸術の枠超えた多角的な視点
「受章の知らせに驚きました。音楽評論家になるつもりはなく、ただ好きな音楽について書きたい一心でやってきただけですから」と驚きを隠さない。
中学生の頃から伊福部昭など近現代の日本の作曲家を好んで聴いていた。「最初は刹那的に耳の刺激を楽しんでいたのが、やがて音楽の形式などに関心を持つようになり、聴く音楽の幅が広がった」と振り返る。
慶応大教授として政治思想史を教えるかたわら、雑誌や新聞で音楽批評や時事コラムなどを担当。歴史的背景や社会情勢などを踏まえた多角的な評論は、ジャンルを超えた博覧強記に支えられ、クラシック音楽評論に新風を吹き込んだ。
音楽を芸術の枠を超えた大きな視点で捉えることで、「これまでなおざりにされていたマイナーな作曲家や作品に新しい光を当てたい。まだまだやるべきことはあります」と話す。
紫綬褒章受章者(敬称略、年齢は発令日の29日現在)
東北大教授 北澤春樹(63)▽音楽評論家 片山杜秀(62)▽東大名誉教授 高薮縁(67)▽東大名誉教授 相澤清晴(66)▽東大名誉教授 荒木尚志(66)▽日本舞踊家 中村梅彌(68)▽東大教授 今橋映子(64)▽フィギュアスケート選手 木原龍一(33)▽スノーボード選手 木村葵来(21)▽映画美術監督 上條安里(64)▽スノーボード選手 戸塚優斗(24)▽KDDI総合研究所会長 中村元(60)▽東大教授 東山哲也(54)▽スノーボード選手 深田茉莉(19)▽フィギュアスケート選手 三浦璃来(24)▽スノーボード選手 村瀬心椛(21)▽小説家 宮部みゆき(65)▽俳優 吉田鋼太郎(67)▽元森永乳業常務執行役員研究本部長 阿部文明(64)▽東京理科大教授 工藤昭彦(65)▽元情報通信研究機構副研究開発推進センター長 隅田英一郎(70)▽京大教授 原田博司(56)▽京大名誉教授 金光義彦(68)▽広島大教授 二川浩樹(64)▽熊本大名誉教授 荒木栄一(68)▽京大名誉教授 松田祐司(66)

“焼却炉遺体” 聴取の男性「妻は東京に行った」…周辺が感じた“異変” 「遺棄」供述も捜査難航の理由は

北海道・旭山動物園の焼却炉に妻の遺体を遺棄したとして任意の聴取を受けている男性職員が、周辺に対し、「妻は東京に行った」などと説明していたことがわかりました。
27日午後、旭山動物園は、今回の件について、初めてコメントを出しました。
旭山動物園HPより
「この度、誠に遺憾ながら、本市職員が重大事案に関与した疑いで警察に事情聴取を受けております。皆様にご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます」
GW初日の4月29日から、夏の営業が始まる予定でしたが、2日間遅らせて、5月1日から開園するということです。
動物のありのままの動きを見せる「行動展示」が魅力の、北海道・旭山動物園。営業開始日が変更されたワケは、30代の男性職員がとったとされている行動です。
旭山動物園 男性職員(30代)
「動物園の焼却炉に妻の遺体を遺棄した」(※趣旨の供述)
男性は、任意の事情聴取を受けていて、26日から2日連続で家宅捜索が行われました。
妻の遺体を遺棄したという趣旨の話をしている男性。殺害についても、ほのめかしているといいます。
捜査関係者によりますと、男性の妻は、3月下旬ごろから連絡が取れなくなっているということで、近所の住民は…。
近隣住民
「(これまで)2人で仲良く(川の)堤防に行ったり」
──今年4月に入ってからは?
近隣住民
「1回も見てないです」
また、男性と話したことがある人は。
男性職員を知る人
「夫婦の間ではあまり会話がないと聞いていた」
妻の姿が見えないことについて、男性から、ある説明を受けたという住民も…。
近隣住民
「4月7日にご飯を届けた。母さん(妻は)どうしたのって言ったら『東京に行った』と私に言うから。1週間後にウソついてるんじゃないの?入院してるんじゃないの?と言ったら『入院してないよ』って言うから、違和感はあったね」
男性は「妻は東京に行った」と話していたといいます。
一方、妻は行方不明になる前、相談のメッセージをスマートフォンで関係者に送っていたといいます。
男性職員の妻(行方不明前)
「夫から脅迫を受けていて怖い」
これまでの捜査関係者への取材では、男性が妻に対して、危害を予告するような言動をしていたとみられることがわかっていますが、さらに27日、新たに男性が妻に対して「残らないよう燃やし尽くしてやる」などと脅していたとみられることもわかりました。
ただ、夫婦に関する警察への相談歴は、現時点で確認されていないということです。
男性が「遺体を遺棄した」と証言するなか進む捜査。逮捕に踏み切らない理由について、元神奈川県警捜査1課長の鳴海氏は…
元神奈川県警捜査1課長 鳴海達之氏
「普通に考えれば男性が『(遺体を)遺棄した』と言ってるんだから、それ以上確実なことはないんだろうと。ところがそれは供述だけであって、その供述の裏付けが何もない。焼却炉の中に遺棄したといわれる遺体があったのかというと、今のところない。遺体がなければ、そこに遺棄したということの証明にならない」
「(Q.今後の捜査について)今その男性が任意の取り調べに応じているのであれば、それは取り調べは続けるべきだと思う。もし(遺棄を)やったのなら細かい話、ここに鍵があって、こうやって入ってスイッチを入れて、こうやって燃やしたんですという話ができなきゃいけない。秘密の暴露が多ければ多いほど、その話は信ぴょう性がある」
男性が、妻の遺体を遺棄したと供述する焼却炉。その場所は、園内の東側で、動物が展示されているエリアとは、少し離れています。また、近くにある旧東門は、関係者のみが通行できる場所となっています。
旭山動物園によりますと、この焼却炉は、死んだ動物を燃やすためのもので、火力は、骨が灰になるほどだということです。
元科捜研の雨宮氏は、焼却炉の捜査の難しさを指摘します。
元埼玉県警科捜研 法科学研究センター所長 雨宮正欣氏
「完全に灰の状態に例えばなっていたとすると、これは個人の識別はおろか、人間の骨であるか、動物の骨であるか、それ自体も判断するのはまず無理。 火葬した骨からDNA鑑定すること自体は結構、技術的には難しくて成功率は極めて低いです」
そのため、ポイントになるというのが。
元埼玉県警科捜研 法科学研究センター所長 雨宮正欣氏
「何らか人間についている服装品といいますか、例えばアクセサリーであったりとか歯の詰め物であったりとか、そういう痕跡が残る可能性はあります。金であったり銀であったりとかそれ以外の金属でも、動物の死骸から出る可能性はほとんどないですから、人間のご遺体を焼却したという一つの痕跡という形にはなると」
警察は、先週末には園内で使用している車なども押収していて、引き続き、園内や男性の関係先を調べています。
(4月27日放送『news zero』より)

「麻生氏は食べたのか?」高市首相の「焼き魚定食」の次は進次郎防衛相の「高級焼肉」で大ブーイング、政治家はなぜ食でここまで叩かれるのか…明暗分けた“その瞬間”

最近、永田町で「会食絡み」の話題がつきない。高市早苗総理が麻生太郎副総裁に振る舞った「焼き魚論争」が勃発。さらには「週刊文春」電子版が、三陸沖地震の直後に小泉進次郎防衛相が「2万円焼肉会食」をしていたことを報道。こうした中、危機管理力を発揮し、“難”を逃れた「2人の大物政治家」もおり――。
【画像】会食騒ぎの中、“会食中止”を決断した政治家
焼き魚定食で揺れる永田町
“会食嫌い”を公言する高市総理。党幹部とのコミュニケーション不足が指摘される中、4月上旬に、首相官邸で約1時間、珍しく「ランチ会」を催した。
招待したのは、自民党総裁選で自らの後ろ盾となった麻生太郎副総裁、その義弟・鈴木俊一幹事長、そして萩生田光一幹事長代行である。
高市総理が3人に振る舞ったのは、官邸の食堂から取り寄せた「焼き魚定食」という庶民的なメニューだった。
ただし、党内からは、戸惑いの声も出ていた。
気心知れた相手とは別にして、自民党では先輩政治家との会食の場合、相手のキャリアや好みに合わせて、メニューやお店を決めるのが通例だからだ。
伝統的に政治家にとっての会食は、信頼関係を醸成する目的があるとされてきた。会食のメニューや、もてなしは、相手への感謝や重要視していることを示すメッセージにもなり得る。
志公会(麻生派)の派閥領袖として君臨してきた麻生氏は、まさにそうした気配りを重視してきたとされる。
「その意味では、麻生さんに “焼き魚定食”を出すのは、ちょっと……。通常なら、少なくとも、それなりのお弁当などを用意すると思います。高市さんにはそういう発想がない。
よく言えば、庶民的ですが、ビジネスマナーとしてはどうなのか。結局、高市さんが、あまり気配りや人心掌握が上手ではないことの現れでしょう」
4月13日に「集英社オンライン」が、そんな自民党の副大臣経験者の声を報道した後、にわかに勃発したのが「焼き魚論争」である。
「毎日新聞は4月20日に、麻生氏が運ばれてきた切り身の『焼き魚定食』に手をつけることはなかったと報道しました。麻生氏周辺が、焼き魚定食というメニューに、総理の気遣いが見えないと、イラだっていると伝えました」(全国紙政治部記者)
「政策最優先」の高市総理は、古典的な人間関係重視の政治スタイルとは異なると指摘されている。
この毎日新聞の報道に対して、“カウンター”に打って出たのがフジテレビだった。
「FNNオンラインは4月23日に、高市総理がランチ会を定例化する意向だとした上で、“焼き魚会食”を巡っても、麻生氏は定食に『手をつけていた。何も問題ない』という同席者の証言を報じました」(同前)
かように、麻生氏が焼き魚に手をつけたのかどうかは未だはっきりしないが、高市総理の「焼き魚会食」は論争の様相を呈したのだった。
官僚出身の自民元職議員は筆者の取材に対して、こう語る。
「霞ヶ関の官僚は昔、政治家との会食や、返礼品のマナーを徹底的にたたき込まれたものです。
いいか悪いかは別にして、そうした永田町・霞ヶ関の“常識”からすれば、麻生さんに官邸の(食堂の)焼き魚を出すという、高市総理の振る舞いは“型破り”なのは間違いありません」
災害時対応ににじむ政治家の資質
こうした中、焼き魚定食とは対照的な“高級会食”も注目されている。
「週刊文春」電子版は、4月20日に最大震度5強を観測した三陸沖地震の直後、小泉進次郎防衛相が港区の高級焼き肉店で「高級カルビ」を堪能していたと報道した。
「政府として災害対応に動いている中、自衛隊などを所管する防衛省のトップとして、あまりに危機感のない対応だと問題視する報道でした」(前出・全国紙政治部記者)
実はこの日、小泉氏とは異なり、会食を予定していたものの、中止した2人の大物政治家たちがいた。
「林芳正総務相と、武田良太元総務相です。2人は都内のイタリアンレストランで会食を予定していましたが、三陸沖地震を受けて、中止したのです」(自民党関係者)
政策通として知られる林氏は、自民党総裁選にも出た、旧宏池会(旧岸田派)の重鎮だ。
一方の武田氏は、旧志帥派(旧二階派)の実力者として知られた。4月には、事実上の“武田グループ”となる政策集団「総合安全保障研究会」も立ち上げた。
「党内での立ち位置が異なる2人ですが、陽気な性格が共通しており、実は仲がいいのです」(同前)
会食の中止をいち早く提案したのは、武田氏だったという。
「総務省は外局に、消防庁を抱えており、災害対応に関係します。武田氏は林氏と同じく、総務大臣経験者ですから、林氏の立場がよくわかる。
また、第二次安倍政権で、防災担当の内閣府特命相として、千葉県を直撃した台風15号の対応などを担った経験もあり、初動の重要性を実感していた。
そのため、武田氏から会食の中止を林氏に提言したといいます」(同前)
政治家にとって、会食は切っても切れないコミュニケーションツールで、もはや仕事の一つともいえる。店選びやメニューには、人柄や価値観が出る。そして時には、その実施を巡り、危機管理能力が問われる局面もある。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班

「メディアは沈黙」は本当か…辺野古転覆事故を1か月追って分かった、沖縄2紙と産経新聞の決定的な違い

あの痛ましい海難事故から1か月以上が経った。辺野古(沖縄県名護市)で修学旅行中の高校生を乗せた船が転覆し、生徒と船長の2人が死亡した事故である。
「メディアはこの事故をあまり報じていない」は本当か
この事故を巡っては発生直後から気になる言説がある。「メディアはこの事故をあまり報じていない」というものだ。SNSやネット上でよく見かける。地元紙の琉球新報や沖縄タイムスも同様だ、という声もある。
転覆した「平和丸」と「不屈」の2隻はともに、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する市民団体「ヘリ基地反対協議会」に所属し、普段は海上での抗議活動に使われていた船だった。だから基地問題を報じる沖縄2紙は今回の事故や背景に触れたがらないのではないか、という見方につながっていると思われる。
果たして本当にそうなのか。確かめるため、国会図書館で1か月間の紙面を確認してみた。
結論から言えば、沖縄2紙は連日大きく報道していた。検証企画は事故直後から早々に始まっていた。琉球新報は『検証 辺野古沖転覆事故』、沖縄タイムスは「なぜ 辺野古船転覆」。いずれも3日連続の企画(3月18日~20日)だ。
その内容も、「学校側「船使用料5000円」 反対協「無償」説明と矛盾」(琉球新報3月19日)や、「安全管理の認識甘く 船の出航基準 明文化なし 乗船名簿も把握せず」(沖縄タイムス3月19日)など、市民団体と学校双方の責任を厳しく問うものだった。
さらに、旅行を担当していた会社が学校側に直接手配させており、旅行会社を通じた安全管理が十分に機能していなかった点も問題にしていた(沖縄タイムス3月31日)。
これらの記事を読んでまず感じるのは、海という大自然を相手にしながら、子どもを預かる側の安全管理が極めて脆弱だった可能性だ。「平和学習」とは究極的には命の話だろう、なのになぜ、と痛切に感じた。二度とこのような事故を起こさないために何が問題だったのか。
運航していた市民団体は海上運送法に基づく事業登録をしていなかった。2022年4月に北海道・知床半島沖で起きた観光船沈没事故を契機に、従来の届け出制から登録制に改正されている。今回の修学旅行生を乗せる活動が「事業」なのか「ボランティア」なのかという認識は曖昧だった。そもそも登録制への移行はどこまで周知されていたのかという疑問も残る。
産経新聞を追っていると気づくことがある
地元紙を読むと、あの日は実は海上保安庁の船も転覆していた。それほどの天候変化もあった。「過失」かどうかを巡り、専門家の間でも見解が異なることを3月23日の沖縄タイムスは伝えている。出航時の判断で防げたという声もあれば、海保元幹部は出航時の天候が即座に取りやめる判断要因にはならないのでは、という見方も示す。いずれにしろ捜査は長期化しそうという。だとしたら今問われるのは経緯であり、長年の油断はなかったのかという点もあるだろう。
辺野古転覆報道は全国紙もしている。知床の事故当時と比べても社説などの本数もあまり変わらない。今回、目立つのは産経新聞だ。
『危険出航 ずさん管理 「知床の教訓」生かされず悲劇』(3月23日)
『辺野古抗議団体 生徒に座り込み「お願い」 高校、過去のしおりに掲載』(3月28日)
『抗議団体 事故・違反10件超 平成26年以降 海保が実態調査』(4月24日)
沖縄の地元紙に劣らぬ勢いで連日報じている。そんな産経新聞を追っていると気づくことがある。事故原因の究明もさることながら、沖縄の平和学習に対する視点だ。
産経は事故翌々日、初めての社説で『辺野古沖で転覆 「平和学習」はき違えるな』と書いていた。抗議船に生徒を乗せることが「平和学習」になるという学校側の姿勢もおかしいとし、「教育に求められる政治的中立を逸脱している。(略)文部科学省も指導を強めてもらいたい」としている。
いつの間にか、修学旅行で沖縄に関する平和学習や基地問題を学ぶことに問題があるというような「イデオロギー」や「思想」の問題に比重がおかれていることに注目したい。こうした論調がネットでも広まっているように思える。つまり「メディアは辺野古転覆を報じていない」を言い直すなら、「メディアはなぜ産経新聞ほど報道をしないのか」なのだろう。
「イデオロギーではなくアイデンティティー」
平和学習がイデオロギーまみれという批判に対しては、沖縄タイムスで川満彰氏(沖縄国際大学非常勤講師)が、沖縄の根強い基地に反対する思いは「イデオロギーではなくアイデンティティー」という歴史を書いていた。
沖縄戦には「基地があるところから戦争はやってくる」「軍隊は住民を守らない」「命どぅ宝(命こそ宝)」という教訓がある。県民にとって反対運動は沖縄戦を踏まえた沖縄人としてのアイデンティティーを取り戻すための行為であり、平和学習とは本土とは異なる沖縄のいびつな歴史の過程を知ることだと解説していた。
これを読むと、沖縄の平和運動や平和学習は「命こそ宝」から出発したと理解できる。だからこそ今回の事故は絶対に起きてはいけない事故だった。ただ、事故原因の検証と「思想チェック」のようなものが平気で混同されてしまえば、本来必要な再発防止の議論は見えにくくなるのではないか。
しかし産経の追撃は止まらない。一面コラムでは「こんな偏向教育をする私学にまで血税が使われるのは、とんでもない」(3月30日)、「家族思いの生徒の人生は、左派活動家らによる独善的で無謀な平和学習とやらに奪われた」(4月4日)。
那覇支局長は「近年まれにみる人災」というコラムを書き、「移設工事の進む辺野古を見学することが、どうして『平和学習』になるのか。何かはき違えてはいないか」(4月4日)。これらからは沖縄そのものに対する激しい感情すら感じた。
ここまで読んで、新聞好きなら「産経と沖縄」の因縁を思い出すだろう。知らない方のために少し振り返っておきたい。
その「事件」は2017年12月、沖縄で起きた。沖縄自動車道を走行中の米海兵隊曹長の男性が、意識不明の重体となる人身事故があった。産経新聞は「曹長は日本人運転手を救出した後に事故に遭った」という内容の記事を掲載した。救出を報じない琉球新報や沖縄タイムスについて「報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と書いたのだ。かなり強烈な紙面である。
産経新聞の記事はデマだった
ところが、琉球新報が米海兵隊や警察に取材をするとそのような事実はなかったのだ。産経新聞の記事はデマだった。
ここでのポイントは誤報という点ではない。新聞にも間違いはあるからだ。問題は、沖縄2紙を罵倒したいがために、真偽不明な情報に飛びついて裏取りもせず発信した姿勢である(どうやら元ネタはFacebookだったらしい)。
当時の琉球新報は、検証した理由を次のように書く。
《産経新聞が不確かな「救助」情報を前提に、沖縄メディアに対して「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と書いたことが大きい。産経新聞の報道が純粋に曹長をたたえるだけの記事なら、事実誤認があっても曹長個人の名誉に配慮して私たちが記事内容をただすことはなかったかもしれないが、沖縄メディア全体を批判する情報の拡散をこのまま放置すれば読者の信頼を失いかねない》
記事の最後は、
《産経新聞は、自らの胸に手を当てて「報道機関を名乗る資格があるか」を問うてほしい》
基地問題でいろいろな考えがあるのは当然だろう。しかし相手を罵倒したいために事実確認が不十分なまま批判して騒ぐ。これは「なぜ沖縄2紙は辺野古転覆にダンマリなのか」という今回のネット上で溢れる言説の構図にも似ていないだろうか。
最後に重要な発見も書いておこう。今回の件で報道量の多い沖縄2紙と産経新聞を読み比べると決定的に大きな違いがあることに気づく。
産経は転覆事故を「人災」と書いたが、それでいえばデマ被害も酷い。沖縄タイムスは事故翌日の社説で「事故を巡る誤情報や誹謗中傷がインターネット上などで広がることがないよう注意したい」と書いた。しかし『転覆事故巡り誤情報拡散』(沖縄タイムス4月9日)などデマや誹謗中傷を伝える記事が後を絶たない。これも「人災」だろう。
高校には「責任を取って死ね」という言葉が
例を挙げるなら「高校生に基地への抗議活動をさせた」「県の予算で実施している」「定員オーバーだった」「宿泊先(民泊)の思想が極端すぎる」「旅行社とオール沖縄結託」や、亡くなった生徒の尊厳をおとしめるコメントや生徒・学校への誹謗中傷・デマが多数あったという。高校には「責任を取って死ね」という言葉が電話やメールで投げつけられた。
ところがである。産経新聞にはこうした誤情報や誹謗中傷の拡散そのものを問題として扱った記事は見当たらないのである(4月27日時点)。京都・南丹市の事件での誹謗中傷には警鐘を鳴らす記事を書いているのだが沖縄はスルー。今回の沖縄に関してあれほどの報道量があるにもかかわらずである。
辺野古転覆事故で「メディアはなぜ産経新聞ほど報道をしないのか」にもう一つ付け加えるならば、「産経新聞はなぜ沖縄へのデマや誹謗中傷問題を報じないのか」という問いも浮かび上がってくる。
今回の事故で大事なのは、誰かを罵倒することではない。沖縄戦の惨禍を知り、ここまでの歴史や現状を学ぶ重要性があるのは間違いない(それは修学旅行生に限らないが)。だからこそ問うべきは、校外学習としての安全管理をどう徹底するかという原点の問題ではないだろうか。
(プチ鹿島)

重機に挟まれる…橋の架け替え工事中だった48歳作業員が死亡 ワイヤーで取り付けていた小型重機が突然落下

名古屋市瑞穂区で27日夕方、橋を架け替えるための工事をしていた48歳の男性作業員が、重機に挟まれて死亡しました。 27日午後4時15分ごろ、瑞穂区桃園町で熱田区との境にある文斉橋の架け替え工事中に、「作業員が重機に挟まれた」と別の作業員から119番通報がありました。 警察などによりますと、重機に挟まれたのは豊田市の建築業・河合裕之さん(48)で、意識不明の状態で病院へ搬送され、およそ1時間後に死亡が確認されました。 事故当時、現場では橋の土台を埋め戻す作業をしていて、河合さんは大型の重機に吊り下げる小型の重機をワイヤーで取り付けていたところ、突然小型重機が落下し、鉄の板との間に挟まれたということです。 警察などが原因を詳しく調べています。 ※画像は名古屋市提供

ガールズバーで「まだいけるでしょ」と強い酒、路上で目覚めると230万円のカード明細…30代男性「妻には打ち明けられていない」

仙台市青葉区の繁華街・国分町で客引きがコロナ禍後、増加している。案内された店で高額請求や犯罪被害に遭う事例があり、被害対策弁護団が今月結成された。安全な街のため、県警が取り締まりを強化するほか、市も6月、警備会社による巡回活動を開始する。(小山太一)
「なんでこんなに」
「申し訳なくて、妻には打ち明けられていないんです」。客引きに案内された店でクレジットカードなどを不正に利用され、計約230万円をとられた県内の30歳代男性は肩を落とす。
昨年10月、仕事の飲み会帰りに国分町通りを歩いていると、30歳代くらいの男に声をかけられた。「ガールズバーすぐ行けますよ」。帰宅するつもりだったが国分町が久々だったこともあり、誘いに乗った。
30分ほど飲んで店を出ると、同じ客引きが待ち構えていた。「次どうですか?」しつこさに負けしぶしぶ次のガールズバーに入った。ウイスキーの水割りなどを飲むこと1時間。「そろそろ出たい」と伝えると、女性2人が現れ、頼んでもいない度数の強い酒が運ばれてきた。「まだいけるでしょ」。あおられて酒を口にしたところまでは覚えている。
午前6時半頃、路上で目が覚めた。ポケットには高額のカードの明細書が3枚。確認すると約180万円が利用され、キャッシュカードで50万円が引き出されていた。「なんでこんなに」。頭が真っ白になった。
男性は県警に被害届を提出。同店を経営する男(25)や従業員らが、男性のクレジットカードを不正に使った電子計算機使用詐欺罪で逮捕・起訴されるなどした。
44件摘発
同様の被害は多い。国分町を管轄する仙台中央署には昨年、ぼったくり被害の相談が約140件寄せられ、被害額は約8000万円に上っている。国分町の店舗も加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合は「女性や学生が怖くて避けてしまう」とイメージダウンを懸念する。
コロナ禍の後、人の流れが戻るのに連動し、客引きも増えてきている。
市では、市職員が定期的に夜(午後6時~翌午前0時)、仙台駅西側や国分町の客引きの人数を目視で調査。2018年度、確認された人数(重複あり)は1日あたり延べ1079人。それが市の客引き禁止条例が全面施行された19年度は872人、コロナ禍の21年度は388人と激減したが、昨年度は727人と戻りつつある。
県警は、客引きが複数で仲間を作り活動し、案内先の店舗から報酬を受け取っているほか、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)とみて捜査。昨年は、執拗(しつよう)な客引きをしたなどとして、県迷惑行為防止条例違反や風営法違反の容疑で客引き44件を摘発した。過去5年で最多という。
広がる対策
仙台中央署は今月、トクリュウの特別捜査課を新設。客引きグループや、客引きと連携する店舗の取り締まりを強化している。
仙台市も対策を強化する。地区を巡回し、客引きに行政指導を行う指導員を3人増員し12人態勢とするほか、6月から委託先の警備会社「エグゼクティブプロテクション」(東京都)による巡回も行う。悪質な客引き行為をチェックする。
同社は東京都新宿区や大阪市などで客引き警備の実績があるといい、仙台市市民生活課の担当者は「巡回員がいることで、安心感にもつながる」と話す。
仙台弁護士会の弁護士18人は今月1日、悪質な客引きやぼったくり被害の救済を目指す被害対策弁護団を結成。ぼったくり店の経営者や従業員、客引きへの損害賠償請求などを目指す。
団長の高田英典弁護士は、客引きは店から高額な見返りを受け取れるため、客を連れて行くと指摘。「被害弁済をさせるようにし、客引きやぼったくりを経済的に見合わない行為にする必要がある」と強調している。
◆客引き禁止条例=仙台市中心部で風俗店や飲食店への客引きが多く見られることから、2019年4月に全面施行された。仙台駅西側や国分町地区などで客引き行為を禁止している。勧告と命令に従わないと5万円以下の過料が科され、氏名や住所も公表される。

「高市チルドレン」のホープ、吉村悠・衆院議員に浮上した常習的な有権者買収疑惑「会費2000円で飲み放題・着席方式」正規より安い料金で酒食提供か

今年2月の衆院選で初当選した自民党の新人議員は「高市チルドレン」と呼ばれる。なかでも麻生太郎・副総裁と近く、ホープの1人と見られているのが自民党青年局次長の吉村悠氏(福岡10区)だ。その吉村氏に疑惑が持ち上がった。
吉村氏は、祖父と父が元福岡県議会議長、母も県議を務めた40歳の3世議員だ。本人は25歳で県議に当選して4期務めており、国政初当選とはいえ政治キャリアは長い。
会費2000円では安すぎるとの声も
その吉村氏は衆院選公示日前々日の1月25日、自身の選挙区である北九州市小倉北区のカラオケレストランの大ホールで「吉村はるか新春の集い」を開いた。案内状によると会費は2000円。連絡先は吉村氏の資金管理団体「吉村はるか後援会事務所」だ。
〈200人を超える支持者の方々に参加していただきました〉
吉村氏はSNSに新春の集いの様子をそう書き込み、吉村氏を囲むように参加者たちが右手を突き上げた写真をアップしている。その写真では、各テーブルに瓶ビールとコップが置かれ、3種類ほどの揚げ物が盛られた皿も見られる。
参加者の1人が語る。
「毎年参加しています。飲み放題で着席方式。1人ずつ料理も出た。今年は総選挙の直前とあって決起集会の熱気でした」
別の参加者の話だ。
「当日参加で、会費2000円は会場で現金で払いました。満席でしたね。あのホールは200人は無理だが、150人近かったかもしれない」
会場の大ホールの着席形式の宴会定員は約100人。大盛況だったのは間違いないようだ。
ところが、地元では「会費が安すぎるのではないか」(地元政界関係者)と問題視されているのだ。同カラオケレストランに、この大ホールを使った場合、料金設定がいくらになるか聞いたところ、「飲み放題付きだと軽いおつまみが付くコースで1人2700円。3品の料理が付くコースで3800円、シメのご飯モノが付くコースで4500円になる」という。
吉村氏側が地元での新春の集いの参加者に店の正規料金より安い会費で酒食を提供したとすれば、公職選挙法に抵触する疑いがある。
政治とカネの問題を監視してきた上脇博之・神戸学院大学教授の指摘だ。
「吉村氏や後援会が地元の有権者に2000円の会費でそれ以上の料金に相当するコースの飲食を提供した場合、公選法第199条の2で禁じている公職の候補者による選挙区内への寄附行為、つまり有権者買収にあたる疑いがあります」
店側の説明と食い違う事務所の回答

ドライな人事で「1強」強める高市首相、方針に沿わねば「ベテランでも冷遇されるという圧を感じる」

[政治の現場]高市政権半年<4>
23日夜、東京・平河町のホテルで行われた自民党新人議員の懇親会。2月の衆院選で初当選した59人が歓談しているさなか、党総裁で、首相の高市早苗(65)がサプライズで登場し、会場が沸いた。
高市は「一つでいいから自分の得意分野を作ってほしい」と激励し、写真撮影にも応じた。幹事長の鈴木俊一(73)、幹事長代行の萩生田光一(62)もテーブルを回って、「国会議員には慣れたか」と声をかけた。
「自民党は1年前に比べて明るくなった」。副総裁の麻生太郎(85)は、たびたびこう口にする。発足から半年たった高市内閣の支持率は今も高い水準を維持する。衆院選で大勝し、高市は「1強」体制を築いた。
高市は無派閥だった期間が長く、強い党内基盤があったわけではない。党内唯一の派閥を率いる首相経験者の麻生を筆頭に、麻生に近い鈴木、高市と同じく安倍晋三を慕った萩生田が党側の重しとなっている。
周囲をにこやかな笑顔で和ませる高市だが、身内の仕事ぶりを厳しく評価するドライな面も併せ持つ。
「党役員会のメンバーを総裁が決められないのはおかしい」
高市は3月下旬、周辺にこう迫り、参院自民幹部を交代させるため、党則を改正できないか検討するよう求めた。自身がこだわった2026年度予算の年度内成立がかなわず、参院自民幹部の国会運営に不満を持っていたためだ。高市は「『できる』と言う参院にだまされた」と繰り返し不満を口にした。
結果的に改正は断念したものの、ある関係者は「参院幹部も自分の意に沿うように動かしたいと考えたのだろう」とみる。
最近では、衆院議長の下に置かれた衆院選挙制度協議会の座長だった逢沢一郎(71)を、麻生派の鈴木馨祐(49)に交代させた。逢沢は昨年10月、日本維新の会代表の吉村洋文(50)が求めていた衆院議員定数削減について「いきなりは論外」と自身のX(旧ツイッター)に投稿し、異議を唱えていた。
衆院選後、衆院議院運営委員長の浜田靖一(70)も外した。昨年の臨時国会の運営では前例を踏襲し、野党に配慮することが多く、高市は不満を持っていたのではないかと受け止められた。
党中堅は「首相の方針に沿わなければ、ベテランでも冷遇されるという圧を感じる」と漏らす。高市は人事を掌握することで、自らの「1強」を更に強めている。党内には高市を批判する声は目立たず、ある議員は「今動いてもダメだ」と声をひそめる。
「褒めちぎるんだ、私を」
東京・高輪のホテルで12日に開かれた自民党大会の直前、高市は来賓あいさつを控えていた吉村と冗談を言い合った。吉村は笑いながら、「早急に組み立てます」と応じた。
高市は昨年10月に総裁に就任した直後、公明党が連立離脱するという窮地に陥った。それを救ったのが、連立を組んだ吉村であり、以来、両者の蜜月関係は続く。
一方、高市は他党の党首には冷たい態度を隠さない。国民民主党代表の玉木雄一郎(56)に対しては、繰り返し連立入りの秋波を送ってきたが、玉木が予算賛成と引き換えに政策の要求をつり上げたとみて、不信感を募らせ、両者の関係にはひびが入ったままだ。
自民は参院での少数与党を解消するため、国民民主との連携を模索する。だが、高市と玉木の距離が遠のいた今、連立拡大の道も険しくなっている。(敬称略)

動物園の焼却炉に妻の遺体を遺棄か「自供だけでは起訴はできない」遺体なしの立件にハードル【なぜ?元検察官の弁護士が解説】30代男性職員は「焼却炉に妻の遺体を遺棄して燃やした」と供述

北海道旭川市旭山動物園の焼却炉に妻の遺体を遺棄したとして、事情聴取されている30代の男性職員は、妻を「残らないよう燃やし尽くしてやる」などと脅していたとみられています。
聴取を受けているのは、北海道旭川市の旭山動物園に勤める30代の男性です。
男性の30代の妻は3月末ごろから行方不明で、男性は警察の任意の聴取に「焼却炉に妻の遺体を遺棄して燃やした」という趣旨の供述をしています。
妻は行方不明になる前、「夫から脅迫を受けていて怖い」と親族に相談していました。 その後の取材で、妻の関係者が3月30日までは妻の姿を確認したものの、その後、行方不明となり、4月に入ると会社にも姿を見せなくなったことが新たにわかりました。
警察によりますと、男性は妻と2人暮らしで、男性の自宅では26日に続き、27日も警察が家宅捜索を行っています。
元検察官の中村浩士弁護士に立件の可能性について聞きました。
【元検察官が解説】立件へのハードル
Q:遺体が見つかっていない場合、逮捕への最大のハードルは何か。 A(元検察官・中村浩士弁護士):通常は、ご遺体が発見されている場合には、司法解剖を実施して、死亡事実それから死因、これが特定されます。それに基づいて逮捕状が発布という流れになるんですが、今回はその最大の証拠たる遺体が発見されていませんので、死亡事実それから死因、これが証拠上特定できない、そもそも犯罪なのかというところから問題になりますので、非常に逮捕状発布のハードルが上がっていると、こういう現状があります。
Q:本人が認めていても、自供だけでは逮捕に踏み切れないことがあるのでしょうか。 A(元検察官・中村浩士弁護士):そうですね。自供だけでは起訴はできない。これが刑事訴訟法という法律の建前になってますね。 まず、自供というのはいつでも覆せますので、あの時話した話は誘導された、強制された、全くの虚偽であったと裁判で仮に弁解をした時に、自供以外の証拠で何を証明できるのかと、そこが大事になってくる。自供がなくても証明できる一定の証拠、これの積み重ねをしないと起訴には至れないという刑事手法の限界があります。
客観的証拠による「死亡の立証」は難航か
Q:自供には、どのような客観的な裏付けが必要になるのか。 A(元検察官・中村浩士弁護士):自供の裏付けとしては、まず死亡事実の裏付け、証拠ですよね。一定期間経過していること。それから、生存しているとすれば、当然、人との接触だったり、あるいはSNS更新だったり、何かカード支払いだったり、そういった生活実態があるのは通常ですけれども、こういったものがない。もう死亡していることが合理的に推認されると、こういった状況証拠、まずこれが必要になってきます。 また、殺人罪でということになるのであれば、例えば凶器の発見だったり、血痕、肉片、組織片、通常は殺害されたと認めるのが合理的であろうと、こういったことを推定させる証拠、これの積み重ねというのが必要になってきます。
Q:遺体がない中で、死亡していることをどのように立証していくのか。 A(元検察官・中村浩士弁護士):今回は、動物の死骸等を焼却して骨等まで溶解する、そういったかなり強い溶解炉で溶解したという報道が流れてますので、それが真実だとすると、骨片、肉片、こういったものが残ってない。あるいはもうすべて灰になってしまっているということで、DNA解析ということも困難な状況になっているとすると、なかなか死亡事実を裏付ける直接的な物証というものがないわけですね。 立証するのは難航することが予想されて、やはり失踪前後の生活実態、それから現在までの一定期間の経過、こういったところから裁判官が通常もう生存の可能性は著しく低いだろうということが合理的に推認できる、こういった状況証拠を積み重ねていくしかないのかなと思います。
殺人での立件「死因の特定」が重要に
Q:殺人を立証する場合は死因の特定も必要になると思いますが、それが特定できなくても殺人で立件できる可能性はあるのか。 A(元検察官・中村浩士弁護士):原則やはり死因を特定できないと、殺害態様、ひいては故意、ここが明らかになりませんので、起訴それから有罪のハードルというのは相当に高くなってしまう。無罪のリスクが高いことになりますよね。 ただ、完全に死因を特定できなくても、被告人の行為によって死亡したんだということが合理的に推認されるというところまできちんと立証ができれば、必ずしも死因の特定ということは、実務上厳格な要件が課されてるというものではないので、不可能というわけではないとは思います。
Q:殺人が証明できない場合、死体遺棄や死体損壊の疑いで逮捕するのが精一杯なのでしょうか? A(元検察官・中村浩士弁護士):やはり殺人で起訴する場合には、死因の特定というのが重要になってきますので、その特定ができずに死体遺棄あるいは損壊だけで起訴を諦めるというケースは実務上非常に多いんですよね。 ただ今回の場合、遺体自体が存在しないとなると、やはり死亡事実、それから遺棄、遺棄にあたっての運搬、こういったところを裏付ける客観証拠ですよね。失踪前後の生活実態、これを見て、もう死亡してることが明らかだということを裏付ける客観証拠。あるいは血痕が残ってる車両の捜索によって、そういった状況を証拠化して、死体を運んだということを推認させられるかどうか。そういった証拠収集の積み重ねというのが非常に重要になってくるかなと思います。

「1万円あげるから足の裏のにおいを嗅がせて」歩行者の女性が不審な男に声かけられる… 阪急西院駅近くの路上

京都府警によると、4月28日午前1時ごろ、京都市右京区西院三蔵町の路上を歩いていた女性が、後方から来た男に、「1万円あげるから足の裏のにおいを嗅がせて」と声をかけられる事案が起きました。
男の特徴は、▽年齢が40~50歳ぐらい ▽身長165cmぐらい ▽中肉 ▽短髪だということです。
府警が注意を呼びかけています。
現場は、阪急京都線の西院駅のすぐ近くです。