岸田首相は21日深夜のバイデン米大統領とのテレビ会談で、個人的な信頼関係の構築に手応えを得た。自ら掲げる経済政策で意気投合するなど会話が弾んだためだ。中国や北朝鮮への対応、地球規模の課題などで日米の連携が一層必要とされる中、バイデン氏との本格的な会談を待ち望んだ首相にとって順調な滑り出しとなった。
両首脳の気脈が通じたのは、「新しい資本主義」に話題が及んだ時だ。
首相が、成長と分配の好循環を目指し、格差や分断など資本主義が生み出した弊害に向き合うと持論を説明すると、バイデン氏は「私の大統領選公約を読んだのかと思った」と笑顔を見せた。話し足りない様子で「直接会って話したいものだ」とも続けたという。中産階級を重視するバイデン氏にも首相の主張が響いたようだ。首相は会談後、「大統領から強く支持するとの発言があった」と記者団に語った。
会談は、予定を20分オーバーして1時間20分行われた。バイデン氏が冒頭から中国を巡る諸課題を語り続け、半分以上の時間は中国に割かれたという。両首脳は、今春に日米豪印4か国の枠組み「クアッド」の首脳会談を日本で開くことで一致。米側からは
習近平
(シージンピン)国家主席が過去の米中首脳会談で、「『クアッド』は開催しないでくれ」と嫌がった様子も紹介されたという。
首相は就任後、最初に対面で会談する外国首脳にバイデン氏を希望したが、新型コロナウイルスの感染拡大で調整は滞った。1月に入り、テレビ会談方式での日程調整が進展した立役者は、ラーム・エマニュエル駐日大使だった。オバマ政権時代に大統領首席補佐官を務め、バイデン氏にも近い。日米外交筋は「エマニュエル氏の政治力で一気に動いた。さすがの剛腕だ」と驚きを隠さない。
会談後の米側の発表文には対中国、安全保障、経済協力、人的交流など、対面会談にも劣らない多岐にわたる合意事項が並んだ。ただ、日本は夏に参院選、米側は11月に中間選挙を控える。両政府内には「合意事項の本格的な実施は、それぞれが政権の支持基盤を固めてからだ」との声もある。