医療関係者が巻き込まれる凶悪事件が、大阪の心療内科放火事件に続きまた起きた。埼玉県ふじみ野市の民家で27日夜に発生した発砲、立てこもり事件。人質となった医師鈴木純一さん(44)が死亡するなど3人が死傷する凶行に、現場周辺には規制線が張られ、周辺の3小中学校は休校となった。近隣住民らは学校への避難を余儀なくされ、不安な一夜を過ごした。
渡辺宏容疑者(66)が立てこもった自宅の民家周囲では、ヘルメットをかぶり、盾を手にした警察官ら数十人が待機した。半径300メートル余りの範囲に規制線が張られ、立ち入りが禁じられた。警察官らは突入のタイミングを慎重に計っていた。
発生から約11時間たった28日午前8時頃、県警が突入を決行。現場に詰めていた県警の広報担当者が「確保した」と叫ぶと、集まっていた報道陣は騒然とした。渡辺容疑者は室内で身柄を取り押さえられたという。
捜査車両の後部座席に乗せられて捜査員に囲まれたまま、午前8時15分頃に東入間署に到着。車内では視線を落とす渡辺容疑者の様子がうかがえた。
郊外の静かな住宅地の住民らが異変に気付いたのは、27日夜だった。
痛い、痛い――。現場となった民家の近隣に住む男性は午後9時半前、「ボン」という音を聞いて外に出ると、医療関係者とみられる男性が路上でもがきながらうずくまっていた。腹や胸の辺りに血が流れているのが見え、男女2人に介抱されていた。
現場周辺の住民は警察の誘導に従い、近くの小学校に避難し、その後現場からより離れた中学校に移動。厚手のコートを着込み、家族らと学校に入っていった。なかなか寝付けない人も多く、未明になっても教室の明かりがともっていた。
現場近くに住む自営業女性(53)は28日午前2時頃、自宅を訪れた警察官から要請され、15分ほど歩いて大井西中学校に避難した。校舎1階の被服室に待機し、水や乾パン、毛布を手渡されたが、ほとんど眠れずに過ごした。「夜の避難はとても怖かった。近くでこんな事件が起きるなんて」と疲れた様子を見せた。
近隣住民らによると、渡辺容疑者は現場となった民家に数年前に引っ越してきて、高齢の母親と2人で暮らしていたという。
被害に遭った医師らが勤めていたとみられる事務所は、現場から数キロ離れた住宅街にあり、容疑者が逮捕された直後の午前中は、時折厳しい表情のスタッフが慌ただしく出入りしていた。