「隠れ重症者」への対応課題に 逼迫する医療現場の今

感染力が強いとされる新型コロナウイルスのオミクロン株の感染急拡大により、発熱外来の現場が逼迫(ひっぱく)の度合いを増している。スタッフの間でも感染者や濃厚接触者が相次ぎ、一般医療にも影響が出ている。大阪府の吉村洋文知事が「最後の砦」と位置付ける重症病床では、コロナの病状は軽いものの、他の理由で受け入れざるを得ない「隠れ重症者」への対応が課題に。昨夏の「第5波」以前とは異なる光景が広がっている。
人繰り厳しく、続く〝綱渡り〟
「コロナ病床も足りず、発熱外来もパンク寸前。一般医療への圧迫が日に日に強くなっている」。軽症・中等症患者用の病床を運用する「大阪暁明館(ぎょうめいかん)病院」(大阪市此花区)の西岡崇浩本部長は焦りをにじませる。
1月下旬に院内クラスターが発生、約40人が感染者・濃厚接触者となった。17床あった病床を27床(1月31日時点)に増やし、治療を行っている。
発熱外来には連日感染を不安に思う人が押し寄せ、混乱が続く。その数は1月上旬までは1日十数人だったが、31日には252人に急増。うち半数はPCR検査で陽性になるという。
「検査結果や今後の対応を伝えるだけで1人につき10分はかかる。スタッフは感染状況を保健所に伝えるためのパソコン作業も行うため、日付が変わる前に業務を終えられたらいい方だ」(西岡本部長)。スタッフの人繰りや業務量過多も深刻になっている。
医療スタッフの間でも陽性者や濃厚接触者が増え、1日10~20人が欠勤する。コロナ病棟の人手確保が難しくなり、夜間の一般救急の一時停止のほか、緊急性の低い手術の延期も行いながら、綱渡り状態で病棟を回している。
地域医療も「災害級」
地域の医療機関も逼迫具合は変わらない。「第5波までとは比べものにならない検査数。災害レベルだ」。コロナ専用病床44床を抱える南奈良総合医療センター(奈良県大淀町)で救急センターの看護師長を務める山本悦子さん(50)はそう話す。
同センターは約230の病床を備え、奈良県南部の医療の中核を担う拠点病院だ。年明けから救急(発熱)外来の患者が増加。車で訪れる人にはドライブスルー方式の検査で対応している。
一方、タクシーで直接訪れる高齢者らに対しては、これまでパーティションなどで区切った待機スペースに誘導していたが、建物の外にもあふれるように。このため急遽(きゅうきょ)プレハブの施設を設置、2日から運用を始めることにしている。
山本さんは「第6波を迎え、県のコールセンターや保健所に電話がつながりにくくなったため、こちらに電話したり、直接訪れたりするケースが急増しているのでは」と分析。これ以上検査数が増加すると、一般医療への影響が出かねない状況だと危惧する。
急がれる実態把握
オミクロン株はデルタ株などと比較し、重症化リスクが低いとされる。大阪府によると、2月1日時点で重症者の確保病床(612床)の使用率は11・8%に抑えられている。
ただこれとは別に、コロナが軽症・中等症でも他の病気やけがが重いとして、重症病床を使っている患者が50人いる。こうした「隠れ重症者」(吉村氏)を含めた重症病床の実質的使用率は、実に19・9%に上っている。
15床の重症病床を確保する近畿大病院(大阪府大阪狭山市)では2月1日時点で10床が埋まった。東田有智(とうだゆうぢ)病院長によると、うち約半数はがんや自己免疫疾患などの持病がある隠れ重症者。「コロナによる重症患者の対応に追われた第5波以前とは様子が違う」と明かす。
東田病院長は、リスクの高い隠れ重症者を重症病床で受け入れ、命の危機を脱すれば中等症病床に移すといった病院間の連携強化の必要性を強調。「コロナの重症者が出た場合に、(重症病床で)受け入れられない事態は避けなければならない」と訴える。
吉村氏は先日出演した民放番組でコロナの重症病床について「命を守る最後の砦。あぶれるような状態には絶対なってはならない」と強調。「隠れ重症者は全国にいる」と述べ、こうした患者の実態把握が急務との認識を示した。