新型コロナウイルスの感染拡大で休園する保育園が増加の一途をたどっている。現場では感染予防対策に細心の注意を払うが、子どもたちの距離が近くなる園の性質上、対応には限界もあり、「これ以上何をすればいいのか」と戸惑いの声も上がる。
1月27日、愛知県春日井市の市立第二保育園に清水宣明・愛知県立大教授(感染制御学)の姿があった。保育室やトイレ、遊戯室、職員の休憩室などをくまなく回り、集まった周辺保育園の園長らを前に、感染防止対策のポイントを解説した。
感染のもとになるエアロゾル(ウイルスを含んだ微粒子)は呼気から出て人の周りを漂うが、清水教授は「園児の近くに空気の流れを作り、エアロゾルをとどまらせないこと。さらに窓などに向けて空気の流れを作り、戸外へ押し出すのが有効だ」と説明。「一番大事なのは空気のよどみに敏感になること」とアドバイスした。
園長や保育士からは「サーキュレーター(送風機)はどちらを向けた方がいいか」「窓がない場合はどうするのか」などと質問が相次いだ。各部屋の出入り口に風向きをチェックする薄いテープがぶら下がっているのに気付いた清水教授は「いいアイデアですね」とにっこり。「十分に対応しているので誇りと自信を持ってください」と言うと、園長らの表情が明るくなった。同園の余語純子園長は「子ども、職員とも感染者を出さないよう毎日プレッシャーを感じているが、これまでやってきたことは良かったんだと安心できました」と話した。
厚生労働省のまとめでは、1月27日時点で全国644カ所の保育園が臨時休園しており、同20日時点の327カ所から約2倍に増えている。愛知県や県内各市によると、2日現在、感染者の発生で県内保育園139カ所が臨時休園している。このうち名古屋市では、市内の保育施設728カ所のうち117カ所が臨時休園し、利用者に登園自粛を求めている。
感染の急拡大で、全国福祉保育労働組合東海地方本部(名古屋市)には組合員の保育士から悲痛な声が寄せられている。「(感染対策で)やれることはやりきった。これ以上何をすればいいのか」「保育士の子どもが通う保育園が休園し、出勤できない」「働く保護者の大変さがわかっているので休園できない」など、ギリギリの状況が浮かび上がる。保護者から「子どもを休ませられなくて、ごめんなさい」と謝られた保育士もいたという。
相次ぐ保育園の休園に、子どもを預けて働く保護者も神経をとがらせる。岐阜市のこども園に2歳の長男を預けている同市の公務員女性(33)は「別のクラスに感染者が出たので園全体が閉鎖にならないか心配だったが、息子のクラスは通常通り開かれたので安心した」と胸をなで下ろす。
岐阜市の保育園やこども園では、園児の新型コロナ感染が1人確認された場合、当該クラスのみ閉鎖し、異なる年齢にまたがって2人以上確認された場合は園全体を閉鎖にするケースが多いという。
清水教授は「保育園は子どもたちの距離が近く、マスクもうまく着けられないため完全に感染を止めるのは不可能。街中にもリスクはある。極端に恐れず、エアロゾルを吸い込まないための換気と通常通りの衛生管理、大人は不織布マスクの徹底を実践してほしい」と話している。【太田敦子、酒井志帆、井上知大】