熊本市の慈恵病院が独自に取り組む「内密出産」の手続きに沿って昨年12月に生まれた子供について、熊本地方法務局は10日、出産に立ち会った蓮田健院長が母親の名前を記載せずに出生届を提出した場合に公正証書原本不実記載罪に問われるかを「回答できない」と院長に伝えた。院長は14日にも出生届を提出する方針だったが、回答を受け見送る考えを示した。
昨年12月、西日本の10代の女性が「出産を親に知られたくない」として内密出産の手続きに沿って病院の新生児相談室長のみに身元を明かして出産。国内の法制度は内密出産を想定しておらず、病院が1月に法務局に質問状を提出していた。法務局は回答で「(罪に問われるかは)捜査機関で収集された証拠に基づき個別に判断されるべきであり、回答しかねる」とした。
女性は、自らの身元情報について「子供が18歳か20歳になったら開示してほしい」と話し、病院が保管することになっている。法務局の回答を受け、蓮田院長は「私が出生届を出すことで強制捜査を受け母親の身元情報が開封されては意味がない。内密出産のシステムが崩れることは避けなければならない」として出生届の提出を見送る考えを示した。
一方、法務局は無戸籍者を解消する観点から「速やかに日本国籍を持つ子供が戸籍に記載されるべきだと考えている」として、院長が出生届を提出しなくても両親が不明の「棄児」と同様に熊本市の区長の職権で戸籍が作成できるよう、子供の出生日と出生地を市に提供するよう求めた。【栗栖由喜、中村園子】