0歳児虐待死疑い「逮捕まで3年半」の事情 福岡県警「慎重に捜査」

福岡県川崎町で2018年7月、生後11カ月の長女に暴行を加えて死亡させたとして、福岡県警は16日、母親で同県糸田町のパート従業員、松本亜里沙容疑者(25)を傷害致死の疑いで逮捕した。容疑を否認しているという。県警は田川署に捜査本部を設置し、長女が死亡した経緯について慎重に調べを進める。
逮捕容疑は18年7月28日午前ごろ、当時住んでいた川崎町の自宅などで、長女笑乃(えの)ちゃんの頭部に強い衝撃を与える何らかの暴行を加え、急性硬膜下血腫などで死亡させたとしている。
生後11カ月で死亡した松本笑乃ちゃんが一部の医師に診断された、虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)とは、従来の乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)を含んだ概念として日本小児科学会などが提唱している呼称だ。しかし、SBSが疑われた刑事裁判では無罪判決が出るケースが相次ぎ、福岡県警の捜査幹部は「慎重に捜査を進めた結果だ」と、事件発生から容疑者逮捕まで3年半あまりがかかった裏側を口にした。
2020年9月、生後3カ月の長男を揺さぶり、脳に重い後遺症を負わせたとして傷害罪に問われた母親に、岐阜地裁は「ソファからの落下で生じたことは否定できない」として無罪を言い渡し、2審の名古屋高裁もこれを支持した。14年以降、SBSが疑われる傷害や傷害致死事件で1審や2審で無罪判決が出たのは全国で10件を超える。
背景には、これらの事件では目立った外傷がなかったり、目撃者がいなかったりするなど、現場が密室で客観的な証拠が乏しい上、揺さぶりがあったとの根拠が医学的に確立されていないことなどが指摘される。
今回、県警は早い段階から福岡地検と連携。全国30人以上の医師や専門家らに聴取を重ね、容疑者による意図的な頭部外傷と特定して逮捕に踏み切った。捜査幹部は「動機や手段、方法を含めて事件の全容解明に努める」と述べた。【飯田憲】