茨城県笠間市平町の民家で1月17日、住人の女性が殺害された事件では、容疑者の男が一時、逃走した。現場から約500メートルの市立宍戸小では下校時、わずか20分で全校児童の8割が保護者のもとに引き渡され、子供の安全確保で一定の成果を得た。地域住民らが「学校運営協議会」を通じて日頃から学校と連携し、緊急時を想定した引き渡しの手順や役割分担を話し合っていたという。
宍戸小は1月17日、容疑者逃走の知らせを受け、保護者付き添いでの下校を決めた。校庭に午後3時すぎ、子供を迎えに来た保護者の車が続々と入っていく。体育館前で待機していた児童は、保護者に連れられて下校していった。
この時、学校周辺の道路や校庭では、蛍光色のベストを着た地域住民15人が交通整理をしていた。同小の要請で集まった協議会委員の住民と、協議会の呼びかけに応じた一般住民だ。
同小はこれまで、引き渡しに時間がかかっていた。職員の人数が限られ、過去の訓練では交通整理が十分にできなかったという。保護者の車で学校周辺の道路は渋滞し、保護者から「もう少し迅速にできないか」との意見もあった。
同小は昨年10月、協議会の会合で課題を提示。協議会の委員は、地域住民が保護者を誘導すると決めた。
今年1月26日の訓練に向け、委員の一人で県警OBの雨谷高市さん(73)が中心となり、登下校の見守り活動を行う地域住民らに協力を呼びかけた。学校側とも情報交換し、交通整理が必要な地点を抽出。人員配置も決めた。
雨谷さんは17日朝、訓練での役割分担案を関係者に配布した。数時間後、容疑者逃走という予期せぬ事態で「本番」が訪れた。
「予定通りやりましょう」。集まった委員から自然と声があがった。訓練用に決めた手順に沿い、それぞれが持ち場に就いた。保護者の車は誘導に従って流れ、渋滞も起きなかった。
全校児童246人の約8割が、20分程度の間に保護者と合流。目立った混乱もなかった。「早く帰れてよかった」。同小には後日、保護者からこうした声が寄せられたという。
小松崎智史校長は、「職員を児童の安全確保に集中させることができた」と振り返る。雨谷さんは、「うまく誘導できた。子供たちにも安心してもらえたのではないか」と語った。
◆学校運営協議会=学校と保護者、地域住民らが一体となり、学校の運営方針や課題などの解決策を話し合う。宍戸小の場合、校長と教頭を含めた計10人で構成されている。2017年の地方教育行政法改正で、設置することが教育委員会の努力義務となった。
住民授業に協力も…運営協議会 全16校設置
笠間市は2019年度から、学校運営協議会の導入を進め、今年度には小中学校と義務教育学校の全16校で設置を終えた。協議会は地域住民との交流でも、大きな役割を果たしている。
宍戸小は教員の意見を基に、住民に授業で協力してもらいたいことを協議会の委員に伝えている。委員は要望に合致する住民を学校に紹介している。
この仕組みを活用し、宍戸小では今年度、住民が家庭科の授業に訪れ、児童に裁縫やミシンの使い方を教えた。協議会の長谷川良亮会長(70)は「子供たちと触れ合うことでこちらも元気になる。今後も協力したい」と話す。
「地域には、様々な分野で知見のある方がたくさんいる」と小松崎校長。住民が気軽に訪れ、子供たちと交流できる学校を目指したいという。すでに空き教室を使った交流スペースを設けており、利用の機会を増やす予定だ。
文部科学省によると、県内では今年度、小中学校と義務教育学校の協議会設置率は24・4%。全国平均の37・3%を下回る。県教育委員会は「地域と一体となり、特色ある学校作りを進めるため、市町村教委に働きかけていく」としている。