国家の流儀 劇的に変貌を遂げる日米同盟 中国への対峙姿勢鮮明に 宇宙・サイバーなどあらゆる領域の危機に対応するため「現代化」

中国や北朝鮮の脅威を念頭に、第2次安倍晋三政権から日米同盟が質量ともに拡充されてきているが、意外なことに、その動きは岸田文雄政権のもとで加速されている。
今年1月7日、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会、いわゆる「2プラス2」が、岸田政権の発足後初めて開かれ「共同発表」が公表された。この発表は4つの大きな特徴を有している。
第1に、中国を名指しで批判したことだ。昨年3月16日の「2プラス2」でも、《中国による、既存の国際秩序と合致しない行動》という形で中国に言及し、中国から激しい反発を買った。
ただし、昨年の時点では《既存の国際秩序と合致しない行動》という穏やかな表現だったが、今回は《ルールに基づく秩序を損なう中国による現在進行中の取組》《地域の平和と安定を更に損なう東シナ海における中国の活動に懸念を表明》と、中国を明確に批判したのだ。
第2に、昨年までは《日米は、現状変更を試みる、あるいは、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対する》といった原則論的な表現だった。だが、今回は《地域における安定を損なう行動を抑止し、必要であれば対処するために協力する》と、紛争になれば日米両国で対処することを明記し、中国に対する共同(作戦)計画作業を進めていることを認めたのだ。
現に、昨年12月23日付の共同通信は、自衛隊と米軍が、沖縄県・尖閣諸島とも関係する「台湾有事」を想定した共同作戦計画の原案を策定したと報じている。
第3に、《サイバー、宇宙及びその他の領域において増加する悪意ある行動、並びに武力紛争に至らない、威圧的又は利己的な手段》を含む、《国力のあらゆる手段、領域、あらゆる状況の事態を横断して、未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づけることによって、同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する決意を表明》した。
通常の軍事紛争だけでなく、宇宙・サイバーなどあらゆる領域の危機に対応するため、日米同盟を「現代化」させていくとしたのだ。
第4に、昨年まではインド太平洋地域との連携にとどまっていたが、今回は《英国、フランス、ドイツ及びオランダそしてEU及びNATOを通じたものも含めた、欧州のパートナーや同盟国による、インド太平洋における更なる関与を歓迎し、多国間演習や展開の拡大に支持を表明》と、NATOなどと連動して、中国と対峙(たいじ)する方向性を打ち出しているのだ。
日本政府は何もやっていないみたいな批判も聞くが、日米同盟が劇的に変貌を遂げていることに注目しておきたい。
■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書に『日本人が知らない近現代史の虚妄』(SB新書)、『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)など多数。