生まれたばかりの子供たちが一人、また一人と亡くなっていった。
神奈川県大和市の自宅アパートで小学校1年生の次男、雄大君(当時7)を窒息死させたとして、自称看護助手の上田綾乃容疑者(42)が殺人の疑いで逮捕された事件。17年の間に男女4人の実子が次々亡くなり、いずれも不可解な死を遂げていた。
「息子の具合が悪くなった。突然、苦しみ始めた」
2019年8月、上田容疑者は自ら119番し、雄大君は搬送先の病院で死亡が確認された。雄大君の顔から血の気が引き、生死の境をさまよっていたというのに、上田容疑者は取り乱すこともなく、落ち着いた様子だったという。
「司法解剖の結果、死因は窒息死で、後頭部に皮下出血が確認されました。上田容疑者の説明と遺体の状況が一致せず、雄大君には突然死するような持病もなかった。複数の医師から『鼻や口を塞いで窒息死させた可能性がある』と指摘され、逮捕に踏み切った」(捜査事情通)
上田容疑者は病院に搬送される際、「ぜんそくの持病がある」と説明し、警察の調べには「何で死んでしまったのか分からない」と答えていた。近隣住民には「朝起きたら息をしていなかった」「原因が分からないと病院で言われた」と話し、雄大君が通う小学校には「熱中症で死亡した」と伝えていた。
■3人の子供が亡くなりながら家裁は保護を解除
上田容疑者は前夫との間に1男1女をもうけ、内縁関係の男性との間に雄大君と三男の計4人の子供を産んだ。長男は02年、ミルクの誤えんで窒息死。長女は翌03年、乳幼児突然死症候群で亡くなり、17年に死亡した三男の死因は不明。4人はすべて急死で、雄大君も生後5カ月だった12年に自宅で心肺停止となったことがあった。子供たちが次々と亡くなること自体、怪しまれかねないのに、上田容疑者は隠そうともせず、近隣住民にペラペラしゃべっていた。
大和綾瀬地域児童相談所が上田家と関わるようになったのは、12年5月のこと。児相は、長男と長女が過去に死亡していたことから、雄大君を2年5カ月にわたって保護した。17年、三男が死亡したことを受け、自宅に戻っていた雄大君を再び保護。上田容疑者はたびたび家を訪れる児相職員に対し、「絶対に渡さない」と怒鳴り、雄大君は「お母さんに投げ飛ばされて口から血が出た」「お母さんは怒るととても怖い」と漏らしていた。児相は18年に「家庭に戻さず、施設に入所させるべきだ」として家裁に申し立てを行った。児相の担当者がこう言う。
「お母さんは保護に同意されていなかったので職員と押し問答みたいになったことや、『犯罪になっても構わない』と言われたこともあった。入所が家裁に認められなかった理由は『故意に殺人を行ったわけではない』ということ。それ以外の日常生活上の報告からは、入所条件に該当する不適切な行為は見られなかった。三男が死亡した際は、このままでは危険だと判断し保護しました。児童相談所としては3人のお子さんが亡くなっているので、家に居させるわけにはいきませんでした」
18年11月、児相は家裁の判断に従い、雄大君の一時保護を解除。在宅指導に切り替えたが、その9カ月後、雄大君は帰らぬ人となった。なぜ4人の子どもたちは、尊い命を落とさなければならなかったのか。