「きちんと見てほしかった」 水俣病「子世代」訴訟敗訴の原告団長

水俣病公式確認当初の重症患者の子世代として初めてとなる集団訴訟は、2007年の提訴から約15年後に原告敗訴が確定した。熊本県水俣市で記者会見した原告側は「今なお被害を訴える原告の苦痛と苦悩を、具体的な理由を述べずに蹴飛ばしてしまう最高裁の姿勢には怒りを覚える」などと批判した。
「悔しいし、憤りしかない。水俣で生まれ育った私たちの被害を、最高裁にはきちんと見てほしかった」。会見で佐藤英樹原告団長(67)は語った。中学生のころから手足のしびれなどの症状に苦しみ1審・熊本地裁では患者と認められていた。今回の決定に「裁判所は水俣病を終わったものと考えているのでは」と落胆した。
水俣病は、司法が国の基準より幅広く被害を認定するなどして救済が進んだ経緯がある。会見に同席した被害者団体「水俣病被害者互助会」の谷洋一事務局長(73)は「敗訴でどん底になったが、山あり谷ありの中で患者は勝訴判決を勝ち取ってきた。ゼロから始めるしかない」と述べた。
今回の原告8人中7人は熊本、鹿児島県に公害健康被害補償法に基づく水俣病認定を求めた別の訴訟を起こしており、熊本地裁での判決が30日に控える。原告団と弁護団は緊急声明で、最高裁決定について「極めて政治的と判断せざるを得ない」と、地裁判決への影響に懸念を示した。【西貴晴】
専門家「今後も声を上げて」
熊本学園大学水俣学研究センターの花田昌宣(まさのり)センター長の話 地球規模で水銀被害を防ごうと2017年に発効した「水俣条約」をはじめ、世界は日本が水銀被害にどう向き合うか注目している。水俣病問題は行政だけでなく司法を含めて解決すべき役割があるのに、今回の決定は「水俣病は終わり」という宣言に思える。今後も患者が声を上げ続けていくしかない。