「ずっと我慢しているのに」 小松基地爆音訴訟判決に原告ら憤り

航空自衛隊小松基地(石川県小松市)の周辺住民約2100人が、米軍機と自衛隊機の一部時間帯の飛行差し止めや騒音被害の賠償を国に求めた「第5、6次小松基地爆音訴訟」の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部(蓮井俊治裁判長)は16日、国に住民らへの賠償を命じたものの、1審判決に続いて飛行差し止めを認めなかった。住民の健康被害や将来分の賠償請求も同様に認められず、原告らからは「ずっと我慢しているのに」と失望の声が上がった。
判決を前に原告らは、横断幕やのぼり旗を手に裁判所前まで行進。「平和で静かな空を」との願いを胸に判決に臨んだ。しかし控訴審結審時までの損害額が上乗せされたものの、1審判決とほぼ同内容の判断に原告らは落胆の表情を浮かべた。閉廷後、原告側弁護士らは厳しい表情で「賠償認容」「差し止め認めず」「将来請求認めず」などの垂れ幕を掲げた。
金沢市内で開かれた報告集会で、原告団は「国民の権利救済を使命とする裁判所が任務を放棄したと評価せざるを得ず、到底容認することはできない」などとする声明を発表。参加者からは「どうすれば飛行差し止めが認められるのか」といった諦めにも近い悲痛な声が上がり、原告団長の出渕敏夫さん(74)は「いいかげんにしろという気持ちがこみ上げた。国は飛行の安全や騒音低下に具体的に取り組むべきだ」と憤りを見せた。
集会には全国各地で基地騒音訴訟に関わる弁護士も駆けつけた。米軍嘉手納基地(沖縄県)の騒音訴訟に関わる神谷誠人弁護士は「本当に裁判所の壁は冷たいと感じた」と述べ、「雨だれ石をうがつという言葉がある。今までの戦いがあったからこそ今後の明るい将来が開けていく。頑張りましょう」と呼びかけた。【深尾昭寛】