「期待していたのに…」 3連休直前の被災に観光業者ら落胆

宮城、福島両県で16日夜に最大震度6強を観測した地震で、両県の観光業者らに動揺が広がっている。旅館の施設が破損して片づけに追われたり、東北新幹線の一部区間不通でキャンセルが相次いだり……。新型コロナウイルス禍のダメージが抜けきれない中で迎えた新たな局面に、関係者は落胆している。
「ダメージが大きすぎて、何をどうしたらいいのか……」。最大震度6強を観測した福島県相馬市の景勝地・松川浦。付近で約60年続く老舗旅館「いさみや」を経営する4代目、管野功さん(45)は困惑を隠そうともしなかった。
地震の影響で、建物の屋根瓦は大半がはがれ落ちた。地震から一夜明けた17日に屋根をブルーシートで覆ったが効果はなく、18日の大雨では客室で雨漏りを確認したという。
部屋の中では、天井の一部や備え付けのエアコンが落ち、窓ガラスが割れている。風呂のボイラーは故障し、水道の配管は破損。トイレも使えない状態だ。19~21日の3連休で利用するはずだった家族連れ3組は、いずれもキャンセルとなった。
松川浦は、太平洋の一部が砂州で隔てられた潟湖(せきこ)。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で旅館の廃業が相次いだものの、いさみやは一時休業を経て復活した。2021年2月に宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震の際も壁がずれるなどしたが、修繕して営業を続けた。新たな地震はそうした中で起こった。
「もう骨が折れた感覚」
相馬市によると18日現在、市内の8割以上の旅館・民宿がボイラーの故障や雨漏り、天井の落下など大きな被害を受け、再開の見通しが立たない状況だ。昨年2月の地震の際は、早く修復して来客を迎えられるよう頑張ろうと奮起できたという管野さん。「今回はもう骨が折れた感覚。先が全く見えない」。消え入るようにつぶやいた。
「6階から地下まで水浸しになった。地震よりも水害に遭ったみたいだ」。最大震度6強を観測した宮城県蔵王町の遠刈田(とおがった)温泉にある老舗旅館「さんさ亭」の被害について、総支配人の志田智美さんは説明する。
屋上の貯水タンクが破損して24トンの水が館内に流れ込み、臨時休業を余儀なくされた。落胆したのは、雪化粧をした蔵王山のふもとで温泉を堪能しようとした予約客ばかりではない。約60人の従業員が総出で2日間、廊下のじゅうたんをぞうきんなどで拭き続けた。
営業再開はタンクの修理後で25日からの予定。3連休のため19、20日は全84室がほぼ予約で埋まっていた。損失は、臨時休業の期間だけで約1000万円に上る見通し。「29年間勤めてきて、こんなことは初めて。コロナ禍から回復の兆しが見え、期待していた春休みなのに……」。志田さんは嘆息した。
町観光物産協会によると、周辺の旅館には東北新幹線で遠隔地から訪れる客が少なくない。東北新幹線は地震による脱線の影響で一部区間の運転を見合わせ、予約客のキャンセルが相次ぐ。担当者は「余震を嫌がる客もいるようだ。蔵王山の観光道路が開通する4月ごろまでに落ち着いてほしい」と話した。
新型コロナのまん延防止等重点措置は段階的に解除が進み、21日の期限で全面解除される。県内の観光関係者は客足の回復を期待していた。だが、連休初日の19日は日本三景の一つ、松島でも人影がまばらだった。松島島巡り観光船企業組合によると、松島湾を巡る遊覧船の乗客は、前週土日の半数以下に落ち込んだ。担当者は「『連休で挽回できるぞ』と意気込んだ矢先に、天に見放された気分だ」と残念がった。【磯貝映奈、深津誠】