小中学生の学力、コロナ禍「影響なし」 文科省が全国学テ結果分析

日本の小中学生の国語と算数・数学の力は5年前に比べて下がっておらず、上位層と下位層の差も開いていない――。文部科学省が28日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の一環として、こんな分析結果を公表した。2021年度の小中学生は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う20年春の全国一斉休校などを経験しているが、文科省は「学力面での影響は確認されなかった」としている。
文科省が公表したのは、全国学力テストの中でも「経年変化分析調査」と呼ばれるもの。小6と中3が全員参加して毎年実施し、都道府県別に平均正答率などを公表する本体調査とは別に、数年おきに行う抽出調査だ。年度ごとに難易度にばらつきがある本体調査と違い、テスト理論に基づいて難易度がそろえられているため、異なる年度の成績を比較できるのが強みだ。
21年度の経年変化分析調査では、全国の小学校600校と中学校749校の計11万人を抽出し、国語と算数・数学、英語(中3のみ)のテストを解いてもらった。初実施の英語を除いた2教科の成績を、前回の16年度と比較した。
国語の平均スコアは小6は505・8点で変化がなく、中3も508・6点から511・7点とほぼ横ばい。児童生徒の成績分布もほとんど変わらなかった。
算数・数学の平均スコアは小6が502・0点から507・2点に、中3が502・0点から511・0点に上昇した。成績分布でちょうど真ん中の順位に位置する人のスコアを示す中央値も、小6が501・7点から508・1点に、中3が500・3点から512・1点に上がっていた。
算数・数学も成績分布にはほとんど変化がなく、全体的にスコアが高い方へ移動しているため、21年度の方が学力が高い可能性がある。ただ、文科省の担当者は「1度の変化で学力が上昇したと言い切ることは難しく、24年度に予定している次回調査で改めて分析する必要がある」と慎重だ。
21年度の調査に参加した小中学生は、20年3月から最長で約3カ月続いた一斉休校を含め、「コロナ禍」の影響を受けた。休校中の学習時間やオンライン授業への対応力などには、地域や家庭環境で差があったとの指摘もあるが、今回の分析では学力低下や格差拡大は確認できなかった。今後、文科省は要因を精査したいとしている。【大久保昂】