「詐欺に巻き込まれることは絶対にないと思っていた」…会社経営男性が体験を証言

ニセ電話詐欺の被害が広がっている。長崎県警によると、2021年に県内で確認された被害は97件(前年比59件増)で、被害額は約2億6889万円(前年比約1億5664万円増)に上った。実際に被害に遭った佐世保市の男性(70歳代)が読売新聞の取材に応じ、体験を証言した。(勢島康士朗)
「奥さんが納め過ぎた年金があるので、返金の手続きをします」
昨年5月、男性が経営する会社事務所に、佐世保市役所の職員を名乗る男から電話があった。男は、差額の約3万円を返金したいという。
男性は、「実際の還付金手続きに関する書類は既に送ったはずなのに」と疑問に思った。だが、男が書類は届いていないと伝えてきた。市職員を名乗り、男性の妻の名前や年齢などの個人情報を次々と口にするため、次第に疑念は薄れ、信じていったという。
男との電話の後、続けて銀行員の「タカハシ」を名乗る男から電話がかかってきた。「ATM(現金自動預け払い機)で至急手続きをしたい」。柔らかな口調だった。男性は、男から指定された近所の無人のATMに到着すると、「タカハシ」に電話をかけ直した。
「今から言う番号を入力してください」。丁寧に説明する「タカハシ」の指示に従い、男性は番号を押していった。普段からATMは利用しているが、当時、「早く手続きをしなければ、市役所の人に迷惑をかけてしまう」と焦り、冷静さを欠いていたと振り返る。
男性は指示通りに操作していたが、「タカハシ」は手続きができていないと主張。再度、操作を指示し、男性は従った。だが実際は、最初の操作で198万円を振り込み、再操作でさらに198万円を振り込んでいたという。
「高額の振り込みを行いませんでしたか?」。金融機関から電話があったのは、その数時間後だった。男性は「ATMは使ったが、振り込んではいないはずだ」と思いながら通帳を記帳。だがそこには、外国人の名前を思わせる名が書かれ、大金を振り込んだことを示す事実が記録されていた。「詐欺だったのか……」。男性は言葉を失った。ニセ電話詐欺の一つの還付金詐欺だった。
1回目の198万円は既に引き出され、返ってくることはなかった。せめてもの救いは、2回目の198万円は高額振り込みを不審に思った金融機関の担当者が取引を止めており、未遂に終わったことだ。
会社を経営している男性は、「お金の扱いには慣れているし、周りからしっかりしている人だと言われていた。自分が詐欺に巻き込まれることは絶対にないと思っていた」と肩を落とす。
還付金詐欺という言葉を見聞きしたこともあった。だが、自分には関係ないと思い、手口などを詳しく知ろうとは思わなかった。男性は悔やみながら、こう続けた。「相手は個人情報などを示し、うまく信じ込ませてくる。誰もが引っかかる可能性があると思う」