トンガ沖噴火 潮位変化の原因は「ラム波」 ほぼ音速で日本到達

気象庁は7日、南太平洋のトンガ沖で1月に発生した海底火山噴火による潮位上昇のメカニズムについて報告書をまとめた。通常の津波の到達予想時刻より数時間早く日本付近で潮位変化をもたらした要因を、大規模噴火時に発生することがある気圧の波で、音速に近い速度で伝わる「ラム波」によるものと結論づけた。気圧の波は通常の津波とは異なる仕組みで潮位上昇を引き起こす。気象庁は大規模噴火に伴う情報発信の際、ラム波の速度を参考にした津波の到達予想時刻を公表することを決めた。
報告書は、火山や地震の専門家らでつくる「津波予測技術に関する勉強会」(座長=佐竹健治・東京大地震研究所教授)がまとめた。
海底火山「フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ」は日本時間の1月15日午後1時ごろ噴火した。潮位上昇は、噴火地点から70キロ南のトンガの首都ヌクアロファ付近で80センチ超を観測したものの、日本までの8000キロの間にある潮位観測点では小さかった。だが、日本沿岸では最大1メートル超を観測し、養殖施設の損傷や船舶約30隻の転覆などの被害が出た。
報告書によると、気象衛星「ひまわり」の観測画像から、噴火地点から気圧の変化が音速(常温で秒速約340メートル)に近い秒速約300メートルで同心円状に広がり、噴火から約7時間半後の15日午後8時40分ごろ、本州付近に到達していた。ほぼ同じ頃、日本ではトンガのある南東から北西方向へ向けて約2ヘクトパスカルの気圧変化が観測された。太平洋沿岸では、気圧の変化から30分~1時間遅れて潮位の変化が始まっていた。
これは通常の津波の伝わり方よりも早い。気圧変化の速度から、この現象はラム波によるものと考えられるという。
一般的に、低気圧などによる1ヘクトパスカルの気圧の低下では潮位が約1センチ上昇するとされるが、今回の潮位上昇はそれよりも大きかった。その要因については、ラム波などの気圧波によって生じた潮位変化が、沿岸部の地形や湾の形状によって共振して増幅された可能性が高いと分析した。
佐竹座長は報告書公表に先立つ記者会見で、「潮位の変化をもたらすものは今回のような火山の他、地震や地滑りがある。発生場所が遠く離れている場合は、地震などを感じることがないまま津波が来ることがあるので注意してほしい」と話した。
気象庁は報告書を受けて今後、同様の事例が発生した場合の情報発信の仕組みを検討する。当面は、暫定的に運用している「遠地地震に関する情報」に、ラム波の速度を参考にした到達予想時刻を盛り込んで発表する。【垂水友里香】