埼玉県熊谷市で7年前に男女6人が殺害された事件を巡り、遺族の加藤裕希さん(49)が県に約6400万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁(石垣陽介裁判長、市川多美子裁判長代読)は15日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。加藤さんは県警が不審者情報などの周知を怠ったと訴えたが、判決は「情報提供しても被害を防げたとは言いがたく、県警の対応に違法性は認められない」と退けた。加藤さんは記者会見し、控訴する意向を明かした。
県警は、6人を殺害した受刑者が事件前に熊谷署から逃走したことや、夫婦殺害事件の参考人として全国手配したことを防災無線などで周知していなかった。
だが、判決は「報道発表や市教委への呼びかけなど、できる範囲で情報提供を行っていた」と言及。防災無線や警察車両を使った呼びかけで危機意識を高められた可能性はあるが、その効果は不明と指摘。「加藤さん宅に危険が差し迫っていたとは認められず、被害を防ぐことができたとは言いがたい」と結論付けた。
判決後の会見で加藤さんは「憤りしかない」と沈痛な表情を浮かべ、今後、控訴する意向を示した。「警察には妻と子どもに心から謝罪してほしかった。市民の安全をしっかり守る組織であってほしい」と語った。原告側代理人の高橋正人弁護士は「殺人事件の連続発生の予見可能性について、判決の法解釈は大きく間違っている」と憤った。
県警は「判決内容を精査中」とし、「亡くなられた被害者のご冥福を心よりお祈りし、ご家族の皆さまにお悔やみを申し上げます」とコメントした。【成澤隼人】
■ことば
熊谷6人殺害事件
2015年9月14~16日、熊谷市の住宅3軒で50代の夫婦▽1人暮らしの女性(当時84歳)▽加藤裕希さんの妻子3人の計6人が相次いで殺害された。強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者(36)は1審で死刑判決を受けたが、2審の東京高裁は心神耗弱を理由に無期懲役に減刑。20年に最高裁で確定した。