妻と娘2人を殺害された男性、地裁判決に「怒りで吐き気」…司法の壁に再び阻まれた無念の思い

2015年の埼玉県熊谷市6人殺害事件で妻子3人を奪われた加藤裕希さん(49)の無念の思いは、司法の壁に再び阻まれた。国家賠償請求訴訟のさいたま地裁判決は、請求棄却だった。加藤さんは「県警の情報提供が十分なら、妻子の犠牲はなかったはずだ」と訴えた。理不尽な犯罪の犠牲になった被害者の遺族が「真実を明らかにしたい」と願い、行動を続けていることの意味は重い。(水野友晴)
15日午後1時過ぎ。加藤さんは同地裁の法廷内でじっと目をつぶり、判決を聞いた。しかし、県庁に移った後の記者会見では、2人の代理人弁護士とともに報道陣約20人の前に座り、「怒りで吐き気がする」と憤りを隠さなかった。
刑事裁判でも、極刑を望む声は届かなかった。「(10歳、7歳で亡くなった)小さい娘たちに『パパ頑張ったよね』と言われるようにしなければ」。控訴に向け、自らを奮い立たせているようにも見えた。
加藤さん側は、請求を棄却した判断の前提が誤っていると主張する。判決は、十分な情報提供があれば、「加藤さん方の事件」が防げたかどうかに焦点を当てた。具体的な個人に危険が差し迫っていたかどうかの検討を重視したものだ。しかし、代理人の高橋正人弁護士はこれについて、「特定の個人の危険に限定してしまっている。事件は無差別殺人で、前提が違う」とする。この点を問題視し、控訴する構えだ。
また、証人尋問で出廷した当時の捜査幹部が対応に落ち度がなかったという趣旨の主張を重ねたことにも、加藤さんは「責任を持っているとは思えない」とし、納得できていない。

事件後の県警取り組み、「熊谷モデル」

県警は15年10月、事件当時の対応の検証報告書をまとめた。その後は住民に対する注意喚起を強化したり、外国人犯罪に備えて通訳者を増やしたりした。防災無線やメールで犯罪情報を積極的に伝える取り組みは「熊谷モデル」とされた。
判決を受け、県警は「被害者の

冥福
(めいふく)を心よりお祈りし、ご家族にお悔やみ申し上げます」とするコメントを発表した。