東京に続いて大阪も“上乗せ”禁煙条例。喫煙所の整備を疎かにしてはならない

◆大阪万博を見据えた禁煙条例

国際イベントを控えた自治体の長にとって、たばこを槍玉にあげることが世界に対して国際化をアピールする大義名分…ということかもしれない。

3月2日、大阪市の松井一郎市長は市内全域を路上喫煙禁止とする旨を明らかにした。2025年4月から開催される大阪万博を見据えたもので、「世界中から認められる都市を目指していきたい」と語っている。

同様に大阪府では、19年3月に交付された大阪府受動喫煙防止条例が今年、22年4月から施行されている。大阪市の路上禁煙禁止条例とは別に、飲食店に対して国の法律である改正健康増進法(20年4月より施行)よりも客席面積基準を厳しくし、従業員がいる店は原則禁煙と、条件を“上乗せ”をしたものとなる。これは、「たばこのない五輪」を掲げ、現在も継続して施行されている東京都の受動喫煙防止条例と同じ流れだ。

◆国の法律よりも厳しい自治体独自の規制

“上乗せ”とは何か、改めて説明する。日本の法律では、望まない受動喫煙の防止を掲げた改正健康増進法を2020年4月より全面施行している。学校や病院、児童福祉施設などは全面禁煙で、飲食店は、店舗の開店時期や客席面積等の様々な条件によって、店舗における禁煙・喫煙のルールが定められている。

その中でも、既存店舗であり、客席面積100㎡以下かつ資本金5000万円以下等の一定の条件を満たすお店であれば、経過措置として全席喫煙を選択することも可能となっている。が、東京、大阪等ではこれに“上乗せ”して、客室面積100㎡以下であっても、従業員を雇用していれば「原則禁煙(専用室設置可)」。さらに、大阪で全面施行される2025年4月からは、従業員を雇っていなくても、客室面積100~30㎡の店舗は、「原則禁煙(専用室設置可)」となる。

路上喫煙禁止を打ち出した松井大阪市長は「受動喫煙をやめるのが世界の潮流」と語り、大阪府受動喫煙防止条例も「万博開催の2025年を目指し、国際都市として、全国に先駆けた受動喫煙防止対策をすすめる」を趣旨としている。

確かに建物内を禁煙にするのが世界の潮流であることは間違いない。が、屋外での喫煙に寛容な諸外国と違い、日本は、路上喫煙や歩きたばこを禁止する条例など、屋外から規制を強めてきたという違いがある。路上喫煙も禁じられている日本では、屋外でたばこを吸えるのは指定された喫煙所のみ、ということとなるが、その数が足りているとはいえない。事実、喫煙所の整備が不十分なエリアでは、多数の喫煙ジプシーが発生。周辺の路地裏、コインパーキング、公園など、人気のない場所での路上喫煙、ポイ捨てが目立つこととなった。

◆“野良たばこ”の責任はどこにある?

こうした“野良たばこ”は決して褒められたものではない。が、望まない受動喫煙を防ぐための法整備が結果として喫煙者を街の片隅に追いやっているのであれば問題だ。

受動喫煙防止条例を推し進めるならば、公共の喫煙所の設置を進めることが急務であることは、大阪府が大阪府民1742人を対象に行った意識調査をみてもわかる。

Q オフィスや飲食店等の施設における原則屋内禁煙が進むにつれ、施設周辺の路上喫煙が増加する懸念があります。屋外に分煙所の設置を進めることにつれ、あなたはどう思いますか。

(全体)
進めるべき 41.3%
「たばこの煙が漏れない」「人通りが少ない」など一定の配慮があれば 46.6%
進めるべきではない 5.5%
どちらでもない 6.6%

(非喫煙者)
進めるべき 37.0%
「たばこの煙が漏れない」「人通りが少ない」など一定の配慮があれば 56.4%
進めるべきではない 4.2%
どちらでもない 2.4%

(喫煙者)
進めるべき 48.4%
「たばこの煙が漏れない」「人通りが少ない」など一定の配慮があれば 30.3%
進めるべきではない 7.7%
どちらでもない 13.5%

「喫煙所を増やすべし」という意見は喫煙者のエゴではないことは、非喫煙者の9割以上が「進めるべき」と回答していることからも明らかだ。

◆喫煙所の整備と飲食店への支援なくして条例なし

日刊SPA!が非喫煙者に対して行った独自調査でも「喫煙者を虐めるのではなく、受動喫煙を防止するのが改正健康増進法の目的なら、公共の喫煙所の整備とセットじゃないと成り立たない」(45歳・医療機器)、「たばこ税を取る限り、喫煙所の設置は当たり前のこと。吸わない人だって恩恵は受けてるんだから。『たばこは体に悪いから撲滅しろ』って人もいるけど、じゃあ代わりの税収はどこから取るのかも合わせて言ってほしい」(52歳・食品)といった声が上がった。

令和4年度与党税制改正大綱は、令和3年度に続き「望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの公共の場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう促すこととする」としている。

たばこ税は国・地方合わせて年間2兆円。公衆喫煙所や屋外喫煙場所等の整備を積極的に行い、規制対象となる飲食店に対して十分な財政的・技術的支援を行うことは施政者として必須事項だ。また、そのことは大阪府受動喫煙防止条例にも附帯決議として承認されている。

国際イベントに向けたアピールのために、条例ありきで規制ばかりを推し進めることのないよう、引き続き動向を注視する必要がありそうだ。

<取材・文/日刊SPA!編集部>