「実は、数日前……」
警察署員からの電話を受けた彼女は、そう切り出した。一度はなくなったと思った暴力を再び振るわれ、憤りと疲れが入り交じった気持ちのやり場は他になかった。暮らしを共にするテレビマンの彼氏が警察に捕まり、その立場を危うくするとしても――。
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関西準キー局のテレビマンと女医のカップルに起きたトラブル
4月19日、兵庫県警芦屋警察署は関西テレビ社員の高橋光記容疑者(30)を傷害容疑で逮捕した。警察署に呼び出し、逮捕に至ったのは夕方だった。地元紙記者が言う。
「容疑は同棲する交際相手のAさん(29)に暴力を振るってけがをさせたというものです。事件があったのは2人が住む自宅マンション内で、いわゆるデートDVと呼ばれる事案です。Aさんは病院に勤める医師で、関西準キー局のテレビマンと女医のカップルと言えば響きは良いのですが……」
2人が暮らすマンションは、兵庫県芦屋市の住宅街にある。北にJR、南に阪神電車が走り、南北に流れる芦屋川にも近い人気のエリアだ。高橋容疑者が勤める関西テレビ本社(大阪市北区)へのアクセスも良い。
「芦屋と聞いてイメージする山の手の高級住宅街やないけど、このへんもええとこなんよ。特に大阪方面に出る勤め人には便利やし若い人は多い。その分、どこにどんな人が住んでんのかはよう分からんけどな」(地元住民)
激高した容疑者がAさんに馬乗りになり、押さえつけた
そんな住宅街の公園に面して建つ賃貸マンションの一室で、高橋容疑者とAさんは交際を始めて間もない昨年から一緒に暮らしていた。事件があったのは逮捕の3日前、4月16日午前0時すぎのことだ。
日付が変わってから帰宅したAさんは、家に入るなり高橋容疑者に詰め寄られた。首をつかまれ壁に押さえつけられた。びっくりしたAさんは怖くなり、手を振りほどいて逃げた。だが、激高した高橋容疑者はAさんを捕まえると馬乗りになり、押さえつけた。
「昨日は散々自分が文句を言っていたのに、いったい何なんだ!」
高橋容疑者は、Aさんの遅い帰宅時間に怒っていた。
両腕や両足を打ってあざのようになり、全治2週間の診断
実は2人は前日も似たような理由で口論を繰り広げていた。ただし、その時の立場は逆だった。
事件前日、飲み会に出かけた高橋容疑者は日付が変わった15日未明に酔っ払って帰宅した。そして、既に自宅にいたAさんに「なんでこんなに遅くなるのか」となじられたという。
兵庫県警関係者が言う。
「次の日に、なじった彼女が同じ事をして、今度は彼氏の方が気にくわなかったわけです。ようある彼氏、彼女の痴話喧嘩ですが、暴力沙汰になると事件になってしまう。殴ったり叩いたりといった行為はなかったようだが、Aさんは両腕や両足を打ってあざのようになり、診断では全治2週間と言われている」
交際相手がすぐに警察に通報しなかった理由
暴力を振るわれたAさんだが、すぐに自ら警察に通報したわけではない。その後も予定通りに仕事をこなし、日々の生活を続けた。警察が一件を知ったのは2日後の18日だ。
「実はAさんは1カ月ほど前の3月中旬にも芦屋警察署へ行っています。同棲している彼氏に暴力を振るわれたという相談です。当時は警察から高橋容疑者にも注意をしたし、Aさんも被害届を出すには至らず、結局は様子を見るという話に落ち着いた。ただ、こういった事案はその後も定期的なフォローが必要になるので、担当の警察官が18日にAさんに連絡を取ったんです。そこで伝えられたのが16日の出来事でした」(前出の地元紙記者)
警察からも諭され、高橋容疑者が3月以後暴力を振るうことはなかったようだ。実際に、Aさんからその後に警察へ相談が寄せられることもなかった。だが、思わぬ2度目の暴力にAさんは耐えかねたのだろう。芦屋署員から受けた連絡でその内容を明かすと、翌日には直接出向き、診断書を添えて被害を詳細に届け出た。
職場では淡々と仕事をこなしていたのだが…
「前の日に自分が飲み会で遅く帰ったら彼女に散々文句を言われた。それなのに次の日に彼女自身も同じように遅くに帰ってきて、ついカッとなった」
逮捕直後、高橋容疑者はそう供述した。関西テレビ関係者によると、本社の放送推進部に所属する技術系の社員だという。
「エンジニアとしてカメラや映像機器を扱い、バラエティー番組やドラマの現場に入ったこともあります。目立ったトラブルを起こしたことはないと聞いていますし、職場では淡々と仕事をこなしていたのだと思います」
高橋容疑者が日常的に暴力を振るっていた疑いは低く、前出の県警関係者は「弁護士を介すなどして当事者同士で話し合って合意ができれば、被害届を取り下げることもありえる。容疑者が起訴されて厳罰を科されるということはないだろう」と話す。
だが、高橋容疑者の逮捕を受け、関西テレビは20日に「弊社放送推進部に所属する男性社員が、交際相手への暴行による傷害容疑で兵庫県警に逮捕されました。弊社は現在、事実関係を確認中ですが、社員が逮捕されたことは遺憾であり、捜査の進展を見守った上で、厳正に対処します」とのコメントを出した。
痴情のもつれと言えばそれまでだが、代償は高くついた。
(稲本 千晴/Webオリジナル(特集班))