東京の夏を彩る隅田川花火大会など都内三つの花火大会の中止が今月、相次いで決まった。主催者は国の指針に基づいて3年ぶりの開催を模索したが、新型コロナウイルスの感染拡大を恐れる東京都が待ったをかけた形だ。花火業者の落胆は大きく、地元自治体からも規制が厳しすぎるという不満が高まっている。(石川貴章、田村美穂)
「技術を注いだ花火を今年も見てもらえず、ショックだ」。国内有数の規模を誇る2万発の花火を90万人が楽しむ隅田川大会の中止を知り、コンクールに参加してきた新潟市の花火業者「新潟煙火工業」の小泉欽一社長(51)が肩を落とした。
国指針では可能…苦境の業者「ショック」
大会実行委員会は8日、「十分な感染対策を取ることが困難」と発表し、「江戸川区花火大会」(江戸川区)や「足立の花火」(足立区)も後に続いた。
日本経済研究所(東京)の試算では、コロナ禍が始まった2020年、全国で約850の花火大会がなくなり、花火業者の損害は約170億円に達した。新潟煙火工業の売り上げも8割減り、約2年間にわたって工場の休止を余儀なくされた。3月に花火作りを再開したばかりだが、「知名度も規模も桁違い」(小泉社長)の隅田川大会中止の影響は無視できないという。
国は昨年11月、基本的対処方針を改定し、大規模イベントの開催に道を開いた。主催者に参加者の把握や密集回避策といった安全計画を作ることを求め、細部の運用は都道府県に委ねた。
2日間に100万人超が訪れる新潟県の「長岡まつり大花火大会」は、事前購入の有料席のみを設けることにし、県のお墨付きを得て今夏の開催が決まった。
一方、複数の関係者によると、都内各大会の主催者も再開を目指したが、都は難色を示した。
国はスマートフォン用の接触確認アプリの活用を推奨し、会場などで利用を呼びかければ基準を満たせるとの考えだ。ところが、都は来場者全員のダウンロードが必要だとする見解を示したという。大会に携わる区の幹部は「数十万人を超え、到底不可能だ」と語る。
一方、都内では連日数千人規模の新規感染が続いており、都は「感染者との接触の有無が判断できなければ、対策の実効性が担保できない」と強調。「国は明確な運用基準を示してほしい」と主張している。
国は「できる限りの対策を実施した上で、社会経済活動を回してもらうことが主眼だ。ルールで縛りすぎると何もできなくなる」としており、地元区長の一人も「このままでは、都内で花火大会は二度と開けなくなる」と頭を抱えている。