この時期はまだ冷たい海、地元男性「想像を絶する」「孫だったらと思うと胸が苦しい」

北海道の知床半島の沖合で乗客乗員26人を乗せた観光船「KAZU I(カズワン)」が遭難した事故で、海上保安庁などによる行方不明者15人の懸命な捜索活動が続く。捜索には地元の別の観光船業者や漁業者も船で参加しており、「人ごとではない。一刻も早い発見を」との声が聞かれた。
カズワンが出航したウトロ漁港(斜里町)では25日午前5時半頃から、十数隻の遊覧船や漁船が次々と出港していった。カズワンの運航会社が入っている知床小型観光船協議会の加盟社からも2隻が捜索に加わっている。
自社の観光船の出港を見守った同業他社の20歳代の従業員は、事故を受け、キャンセルや安全に対する問い合わせが相次いだと打ち明けた。従業員は「人命が第一。微力だが行方不明者の手がかりを見つけたい」と語った。
地元の2漁協からは漁船約10隻が参加。午後4時頃、捜索からウトロ漁港に帰った漁船は、漁師ら7~8人で知床半島先端部の沖で不明者を捜した。男性船長は「あすは半島の東側も捜索したい」と力を込めた。
25日は見つかった子供の死亡が確認された。斜里町のウトロ漁港近くを散歩していた60歳代の地元男性は「この時期の海はまだ冷たく、長時間その中にいるつらさは想像を絶する。自分の孫だったらと思うと胸が苦しい」と話した。

北海道、安全の徹底求める

知床半島の沖合で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が消息を絶った事故で、北海道内の関係機関は25日、道庁で第2回の災害対策本部会議を開催した。
ゴールデンウィーク(GW)に多くの観光客が道内を訪れることが予測されるため、関連団体などに安全の徹底を求める通知を出したことが報告された。
通知は同日付。道は、道内観光を安全に楽しむことができるよう、交通・物流団体や航空会社、観光団体に、シートベルトや救命胴衣の着用などの安全確保、車両などの整備点検といった対策を要請したことを明らかにした。
会議では、カズワンの乗客の家族の支援のため、道が斜里町などと連携して保健師による健康相談の実施を検討していることも報告された。