3歳女児「ななちゃん」遺体と対面、冷たい顔なでる祖父母…名前呼び声を上げて泣く

祖父母は3歳の孫の名前を呼びながら、冷たくなった顔をなでた――。北海道・知床半島の沖合で乗客乗員26人を乗せた観光船が遭難した事故。北海道斜里町に設けられた遺体安置所では悲しみの対面が続いた。

亡くなった東京都葛飾区の加藤七菜子ちゃん(3)は、両親と乗船していたとみられているが、2人は見つかっていない。
七菜子ちゃんは24日夜、知床岬灯台東の海上で見つかった。斜里町によると、祖父母が25日午後に遺体と対面し、本人と確認した。祖父母は名前を呼び、声を上げて泣いていたという。
七菜子ちゃんは自宅近くの幼稚園に通っていた。子供が同じ年少という女性は「小柄なかわいらしい子で、みんなに『ななちゃん、ななちゃん』と呼ばれ、友達も多かった」と話す。
死亡が確認された千葉県松戸市の

●島
(ぬでしま)


(まさる)さん(34)の母親と親しい50歳代女性は「『息子は旅行好き』と聞いたことがあるが、まさか優さんが乗客に含まれているとは。ショックです」と言葉少なに話した。(●は「木へん」に「勝」)
亡くなった香川県丸亀市の河口洋介さん(40)の知人男性によると、河口さんは同県坂出市の市役所に勤務。体を動かすのが好きで、スキューバダイビングやソフトボールを楽しんでいた。男性は「仕事では将来を有望視されていたらしい」と悔しそうだった。

第1管区海上保安本部などによると、観光船「KAZU I(カズワン)」には、豊田徳幸船長(54)(斜里町)、甲板員の曽山聖さん(27)(東京都調布市)のほか、北海道や東京都、千葉県、福島県、香川県などから訪れた3~78歳が乗っていたとみられる。うち子供は七菜子ちゃんと7歳の男児の計2人という。
安置所にはこの日、献花台が設置された。斜里町によると、死亡した11人のうち7人の身元を遺族が確認、うち1人の遺体が遺族に引き渡された。
町の宿泊施設では、海上保安庁などが朝昼夕の3回にわたり乗客の家族らに捜索状況の説明を行った。海保によると、午前9時に始まった1度目の説明会には運航会社の社長が出席したが、2、3回目は欠席した。
安否が分からない人の家族は不安といらだちを募らせている。家族3人が観光船に乗っていて安否不明になっているという関西地方の男性は、「何も考えられない」と悲痛な表情で語った。

男性によると、事故後に観光船の運航会社からは一度、電話があっただけだった。男性は「会社は『すみません』と謝るばかりで、事故の原因や捜索の状況は何も説明してくれなかった」と憤った。
船体は25日夜現在、見つかっていない。1管は観光船が沈没した可能性もあるとみている。現場周辺の海域は急激に深くなり、知床半島近くでも水深100メートル以上の場所があるため、24日からは水中音波探知機(ソナー)で海底を調べている。
札幌管区気象台によると、現場周辺では26日から28日にかけて風や波が強くなると予想されている。捜索活動に影響が出そうだという。