42店舗が焼けた北九州市小倉北区の旦過(たんが)市場一帯の火災は19日、発生から1カ月を迎える。市場のメインストリート「アーケード通り」の通行規制が14日に全面解除されるなど復旧に向けて動き出した半面、焼け跡に残された大量のがれきは大半が今なお手つかずのまま。地権者らが複雑に入り組む事情に加え、数千万円規模とみられる撤去費の負担や、建物密集地ならではの撤去作業の難しさなど課題が山積している。「北九州の台所」にかつての日常を取り戻すべく、関係者の模索が続く。
同意50件、撤去費用も「数千万円規模」
「生鮮食品を扱っているので、がれきの臭いは気になる。できるだけ協力してなるべく早く動かしたい」。アーケード通り沿いで鮮魚店を営む30代の男性店主がこぼした。被災した店舗の前には、安全確保のための仮囲いが設置され、アーケード通りは通行できるようになったが、がれき自体は残されたままだ。
被災したエリアの店舗の多くは地権者や建物の所有者、店主らが異なるため、内装や店内に置いてあった物の撤去は店主の同意が、建物の解体は土地・建物の所有者の同意が不可欠となる。がれきの早期撤去に向け、被災した地元の関係者らが設立した「旦過地区復旧対策会議」によると、がれきの全面撤去に向けて必要な同意は少なくとも約50件に上るという。
市環境局の担当者は「被災者の関係性が複雑に絡んでいることも、がれきの撤去作業が始まるまで時間がかかっている要因だ」とみる。復旧対策会議の中尾憲二副会長は「まずは地主やテナントの同意を得るのが先決だ」として、地権者ら全員の同意を前提にして6月に作業を開始し、7月中の撤去完了を目指すが、先行きは不透明だ。
がれきの撤去費も重くのしかかる。2012年に「あやどり市場」(同市若松区)で起きた火災は約1800平方メートルが焼失し、がれき撤去の費用は約3000万円に上った。北橋健治市長は旦過市場での撤去費用について「数千万円規模になる」との見通しを示す。がれきの解体や撤去、運搬にかかる費用は各所有者の負担が原則で、北橋市長も「基本的には事業者負担」との姿勢を崩していない。
地元商店街などによる「小倉中央商業連合会」が開設したクラウドファンディング(CF)には18日時点、目標額を上回る3500万円近い寄付が集まっている。これらは、がれきの撤去費に充てられる予定だが、最終的に必要な費用がいくらになるかは不透明だ。
重機の進入にも課題
被災エリアはアーケードに囲まれた店舗の密集地で、重機によるがれき搬出などの作業は難航も予想される。復旧対策会議によると、市場北側の魚町グリーンロードのアーケードを一部取り外し、重機を入れるなどの案も出ているという。
02、03年と火災に見舞われた大阪・ミナミの飲食店街「法善寺横丁」では、03年の2度目の火災が工事用車両の入れない狭い場所で発生し、がれきの撤去方法が課題となった。店主らによる「法善寺会」の渡辺国雄会長(77)は「最初は手作業でがれきを取り出し、リヤカーに積んで行き来しながら小型重機が入れるスペースを作り、徐々に作業を進めた」と振り返り「がれきが片付かないと先も考えられない。思いを束ねて助け合うことが大事だ」とアドバイスする。
市場北側部分の東に隣接し、激しく燃えた「新旦過横丁」も、がれき処理が進んでいない。バーを営んでいた50代男性は「またここで営業を再開したいが、がれきがなくならないことには始まらない」と頭を抱える。復旧対策会議の吉田和直会長は「被災エリアでは、水道や電気などライフラインも止まったままだ。復旧に向け、まずはがれきの撤去・解体に全力を挙げたい」と話した。【日向米華、青木絵美、林大樹】