取水施設漏水、パイピング現象か 専門家「兆候つかみづらい」

愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で発生した大規模漏水で、愛知県は19日、仮設ポンプで河川の水をくみ上げる応急措置により、工業用水を供給する下流の浄水場で取水を再開した。県は同日夜から事業所への使用自粛要請を緩和したが、農業用の給水復旧のめどは立っていない。一方、専門家は漏水の原因について「パイピング現象の可能性が高い」との見方を示している。
愛知県は西三河地区9市3町の131事業所に対し、工業用水の受水停止を求めていたが、19日午後7時から段階的に再開したと発表した。通常の3割程度の利用を依頼する。
施設を所管する東海農政局は、19日朝までに矢作川に設置した仮設ポンプを42台に増やし、自動車関連企業などへの供給に必要な量の工業用水をほぼ確保した。用水路で安城浄水場(同県安城市)へ送り、工業用水の取水が可能になった。20日までに、さらにポンプ6台を増設するという。
トヨタ自動車は19日、朝から稼働を停止していた豊田自動織機の完成車工場(同県大府市)が同日夜に再開したと発表した。20日以降も通常通りに操業できる見通しで、漏水事故の影響は限定的となりそうだ。
県の調査によると、131事業所のうち少なくとも25事業所が漏水の影響で操業を停止したという。工業用水の供給停止は回避されたが、県の担当者は「ポンプを使った暫定的な取水のため、安定供給できるのかは不確定」と話し、事業者に対し引き続き節水を呼びかけている。
一方、大規模な漏水が発生した原因について、河川堤防に詳しい名城大の小高猛司教授(地盤工学)は、大雨で水位が高くなった河川で、地下や堤防に染み込んだ水が土を押し出して地表から湧き出る「パイピング現象」が起こった可能性が高いと指摘する。
小高教授によると、パイピング現象で地中に水の通り道ができ、一気に水の流れが加速して川底の土砂を削り取る。台風や豪雨の際に堤防決壊などにつながるケースも多いという。
明治用水頭首工は、砂の上にコンクリートの底が接している構造のため、「砂とコンクリートの境界に水の通り道ができやすい」。今後の対応は「止水壁を作ることになると思うが、また新たな水の道ができる可能性もある。長年かけて道ができるので今回のような漏水に至る兆候はつかみづらい」と語った。
東海農政局の担当者もパイピング現象について「原因の一つとして考えられる」とした。せきの上流と下流部の川底にそれぞれ穴が見つかり、地下でつながっているとみられる。地中には漏水防止のために鉄板が埋め込まれているが、老朽化により鉄板が腐食してできた隙間(すきま)から水が漏れている可能性があるという。【酒井志帆、田中理知、立山清也】