ホームに響いたSOS とっさの連係、若い命を救った女性客の一言

年の瀬も押し迫った2021年12月26日午後10時過ぎ、福岡県久留米市の西鉄天神大牟田線花畑駅で、女性(19)が自ら命を絶とうとしていた。ホームから線路に飛び込む直前、運転士の千代島信義さん(56)=大木町=と乗客のアルバイト、内川紗希さん(20)=同市=によるとっさの連係プレーが若い命を救った。
客もまばらになった同駅上り線ホームの端に立ち尽くす女性が、急行電車の追い越しを待つ普通電車の運転士だった千代島さんの目に留まった。「どうかされましたか」と声をかけると、女性は「死なせて」と叫び、線路へ走り出そうとした。慌てて背後から両腕をつかんで引き留めようとしたが、女性が暴れたため、線路を挟む下り線ホームの乗客に助けを求めた。
下り線ホームにいた内川さんはアルバイトを終えて母親と電話中だったが、千代島さんの叫び声を耳にすると自然と体が動いた。上り線ホームに駆け付け、2人で協力して女性を救助した。
「勉強も真面目にやってきた」「頑張っていたのに。良い子でいたのに」。泣きながらそう繰り返す女性の手を取り、内川さんは優しく語り掛けた。「無理しなくていい。頑張ってきたね」。次第に女性の顔からこわ張りが消えたという。
久留米署は4月、的確な判断で人命を救ったとして千代島さんと内川さんに感謝状を贈った。千代島さんは「相手が女性でなかなか接触しづらい部分もあったが、内川さんが助けてくれた」と振り返った。内川さんは「誰でも苦しい時はSOSのサインを出してほしい。周囲の人が手を差し伸べる世の中であってほしい」と話した。
10~30代の死因、自殺が1位
厚生労働省によると、2020年に全国で自殺した39歳以下は5908人。年代別の死因調査では、10~30代で自殺が1位だった。うつ病やその他の精神疾患を原因とする自殺が多く、職場や学校での人間関係、経済状況の悩みが背景にあるケースが目立つという。同省は「独りで悩まず、身近な人や関係機関に気軽に相談してほしい」と呼び掛けている。【河慧琳】
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