維新3氏出演番組「政治的公平性損なうおそれ」 BPO委員長談話

毎日放送(MBS)がバラエティー番組に日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)ら3氏を出演させた件で、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の小町谷育子委員長は2日、委員長談話を公表した。既に審議入りは見送っているが、小町谷委員長は「視聴率重視によるキャスティングが相次ぐことで、政治的公平性を損なうおそれがある」と厳しく指摘。また「政党の政策について何ら異なる視点を提示しておらず、質的公平性を欠いているのではないか」と疑義を呈した。
問題となったのは、1月1日放送のトークバラエティー番組「東野&吉田のほっとけない人」。司会のお笑いタレントがゲストとトークをする構成で、ゲストの1組が維新の松井代表と吉村洋文副代表(大阪府知事)、創設者の橋下徹氏だった。衆院選での維新の躍進や大阪の新型コロナ対策が話題に上がった。
小町谷委員長は、3人がキャスティングされた理由の一つに高視聴率獲得への期待感があったとし、「話題性のある政治家が出演者として選ばれることになれば、特定の政党の政治家のみが取り上げられるおそれを払拭(ふっしょく)できない」と危惧した。加えて、「面白さを求めるあまり情報が偏り、結果として誤った印象を視聴者に与えることがありうる」と指摘した。
さらに、番組内で新型コロナ対策に関する行政の実績を紹介する一方、対策の評価について不都合な事実に触れないなど、維新の政策を一方的に肯定する構成となっていたと疑問視した。
その上で、今夏の参院選を念頭に積極的な政治報道を求め、「各放送局が政治的公平性に配慮しながら、有権者のために政治に関する情報を分かりやすく多角的に伝える放送を行うことを期待している」と呼び掛けた。
毎日放送は取材に対し「委員の意見の一つ一つを重く受け止めています。当社の自律的な自浄作用が継続して働くことが、委員長談話や視聴者の期待に応えることにつながると肝に銘じ、今後は3月に公表した取り組みを着実に進めてまいります」と回答した。
番組を巡っては、放送倫理検証委で4回にわたり議論された。再発防止策を講じるなど、毎日放送の自律的な自浄作用が働いたことなどを理由に「紙一重」で審議入りを見送っていた。【松原由佳、倉田陶子】