動物園でサイの角盗難、「漢方で珍重」か価値6000万円超…園長「許せない」

静岡市駿河区の市立日本平動物園で先月、展示していたサイの角が盗まれた。サイの角は、中国や東南アジアで漢方薬の材料として珍重され、生息地では密猟が絶えないという。販売目的か、収集家の犯行か――。静岡県警静岡南署が角の行方を追っている。(中島和哉)
事件は5月31日午前7時頃、職員が展示スペースのガラスが割られているのに気付き、発覚した。盗まれたのは、かつて飼育していたミナミシロサイのオス「サイ太郎」の角(重さ約5キロ、長さ約40センチ)。1999年に死んだ後、角や頭の骨を展示していた。
日本平動物園によると、角は人間の爪の主成分と同じケラチンと呼ばれるたんぱく質でできている。展示の説明には「中国では、がんから糖尿病まであらゆる病気に効くといわれ、漢方薬として売られている」と書かれていた。
そのような効能が本当にあるのだろうか。インターネット上では「薬効はない」という情報が多く見られるが、漢方薬に詳しい医心堂薬局総本店(静岡市葵区)の店長は「かつては日本でも解熱薬として使われていた」と話す。
店長によると、現在の日本の薬局で扱われることはなく、効能についてはわからないという。ただ、解熱薬としては代替品が多数あるため、店長は「貴重なものを持ちたい、使いたいというステータスシンボルの一面が強いのでは」と珍重される理由を語る。

静岡県河津町の動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長によると、サイの角の末端価格は1グラム当たり100ドル程度で、盗まれた角は6000万円を超える価値があるという。
高値で取引されるのは、絶滅を防ぐためにワシントン条約で国際取引を規制している一方、中国やベトナムなどの富裕層の需要が急激に高まっているからだ。世界のサイの約8割が生息する南アフリカ政府によると、2013~17年は毎年1000頭以上が密猟により殺された。
入手が難しいだけに、各地で窃盗事件も起きている。海外メディアによると、フランスやベルギーの博物館などで盗まれる被害があった。県内でも20年、裾野市の富士サファリパークの飼育員だったラオス国籍の男が、象牙などを許可なく輸出しようとしたとして逮捕された。鑑賞や販売が目的と供述し、持ち出そうとしたものの中には、シロサイの骨も含まれていた。
白輪園長は「忍び込んで盗んだとしたら、大きな目的があったはず。販売目的だろう」と推測する。

野生動物保護に詳しいNPO法人「トラ・ゾウ保護基金」(東京)の坂元雅行事務局長は「動物園の展示物の中には、高額取引されているものもある。防犯上の配慮が必要だ」と訴える。
日本平動物園の展示スペースはガラス越しになっていて、角はアクリル製の箱に入れていたが、壊されてしまった。園内には監視カメラがあるものの、飼育している動物の状況を確認するのが目的で、角の展示スペースにはなかった。30日は休園日で、夕方まで職員がいたが問題はなく、夜に巡回した警備員は「異常は感じられなかった」と話しているといい、来園者がいない時間帯に盗まれた可能性が高い。
日本平動物園の竹下秀人園長は「担当者はショックを受けていて、許せない。学術的に貴重なものなので、返してもらいたい」と話している。