「地獄からの貴重な一歩」AV救済法 被害者ら会見 断れるか懸念も

アダルトビデオ(AV)の出演被害防止を目指し、議員立法として提出した「AV出演被害防止・救済法」が15日の参院本会議で可決し、成立した。法の整備を呼びかけてきた支援者や弁護士、AV出演被害者らが同日、衆院会館で記者会見を開き、「被害者の希望につながる一歩」と新法を評価し、今後の課題を語った。【宇多川はるか】
新法はAV被害に特化した初の法律。年齢・性別を問わず、AV公表後1年間(法施行後2年間に限り2年間)は無条件で契約を解除できるなどとする内容で、契約成立から撮影まで1カ月、撮影から公表までも4カ月空けることを義務付ける。契約の不実告知には3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金を科す。また、原則として「出演者に対し性行為を強制してはならない」と明記した。
この日の記者会見は、AV出演被害を巡り法整備を求めてきた被害者支援団体「ぱっぷす」のメンバーや弁護士らが開催した。ぱっぷす理事長の金尻カズナ氏は声明(代読)で「公表後1年間は契約解除できる」としたことなどを「画期的で、多くの若年層の救済につながる」と評価。「DV(家庭内暴力)被害で言えば、これまで『夫婦の痴話げんか』とされてきた被害が(DV防止法で)法律上定義付けられたことで『被害』と認められた。AV出演被害も同じように『被害』として認知されてくると信じている」と発表し、今後に期待を込めた。
国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士も「今までの何の救済手段も無かった地獄のような状況から比べれば、本当に貴重な一歩。被害者にとって希望につながる法律」と話した。
新法の議論を巡っては、AVの定義に「性交」を含む性行為が明示されたことにより、支援団体からはAVでの性交自体を禁止するよう求める声も上がった。この点については、金尻氏は「今後の積み残し課題」と指摘。このような課題について、新法には「施行後2年以内に検討する」と規定があることから、伊藤弁護士は「社会のコンセンサスを得ていくため、議論の進展が重要」との見解を示した。
「現場で断れるか」懸念も
大学生の時に意に反する形でAV出演に至った経験がある女性で、社会活動家のユーチューバー「くるみんアロマ」さん(32)も、新法を「(出演や意に反する撮影を)断るための勇気につながる」と歓迎しつつ、自身の体験を振り返りながら、「実際問題、現場で断れるのか」との懸念も語った。
「くるみんアロマ」さんは、音楽デビューを目指していた大学生の頃にスカウトされ、AV出演を断れない状況に追い込まれた経験があるという。音楽の夢と引き換えに、業者から「一回水着になったら」「ヌードになったら」「AV女優は業界では一番上だよ」などと言葉巧みに誘導され、AV出演を迫られた。「何度も断ろうとしたけれど、結局断ることができなかった」と振り返り、「法律ができたことは前進だが、立会人がいない中で、被害を受けている子が1人で『嫌だ』と言える保証があるのかは心配です」と語った。