「記事を読ませていただきました。今まさに被害者です。内容が自分とほぼ同じなので驚いております。私の場合、ロマンスも存在しないのにロマンス詐欺です」 先日、国際ロマンス詐欺師と思われる人物とのやりとりを3回に渡り寄稿した。直後に、その記事を読んだという一人の女性から、私のFacebookに冒頭のメッセージが寄せられたのだ。 聞けばこの女性、約2週間でなんと1250万円を騙し取られてしまったという。一体なぜ、どのようないきさつで被害に遭ったのか。 女性の言う“ロマンスも存在しないのに”とはどういうことなのか。急遽、詳細な経緯を取材した。(エッセイスト・紫原明子) ●「税金を払わなければ引き出せない」 言葉巧みにお金を引き出されていった田中さん(61歳=仮名)。 ようやく7日が経過すると、取引所Bのサイトが表示する田中さんの資産は、日本円にして1000万円近くに膨れ上がっていた。ほっとしながら、このまま一刻も早く引き出して不安を終わらせたいと願う田中さんに冷や水を浴びせるかのように、ビリーから新たな要求が提示された。 「お金を引き出すには、取引にかかる税金を払う必要があります」 ビリーは、仮想通貨の取引には税金がかかること、今回その金額は390万円であり、取引所Bに入金する必要があることを田中さんに告げた。 本来、仮想通貨の取引にかかる税金は納税者自身が確定申告の際に計算し、納付することになっている。そのため、取引所に税金を支払うという行為は本来発生し得ないはずだが、田中さんはやはりここでも、父のお金をなんとか取り戻さなければならないという焦りから、誰にも相談しないまま、今度は夫に黙って、夫の預金に手をつけてしまう。 預金は1日50万円までの出金制限がかかっていたため、田中さんは夫には内緒で7日間かけて390万を用意し、ビリーに言われるままに入金した。ところがここでさらにとんでもない事態が起きる。ビリーはそんな田中さんの390万円を、誤って新たな取引の資金として入金させてしまったと言うのだ。 「すみません、日本の法律を知りませんでした」 とぼけるビリーに、田中さんは怒りで手が震えた。しかし激怒したところでスマートフォンの向こう側にいる相手にそれをぶつける術もなく、また連絡が途絶えればお金が引き出せないかもしれないという不安が頭をよぎる。 お金を引き出すために、別途税金分350万円の支払いが必要になったと白々しく告げるビリーに、田中さんはとうとう、クレジットカードのローンで350万円を借金してしまう。
「記事を読ませていただきました。今まさに被害者です。内容が自分とほぼ同じなので驚いております。私の場合、ロマンスも存在しないのにロマンス詐欺です」
先日、国際ロマンス詐欺師と思われる人物とのやりとりを3回に渡り寄稿した。直後に、その記事を読んだという一人の女性から、私のFacebookに冒頭のメッセージが寄せられたのだ。
聞けばこの女性、約2週間でなんと1250万円を騙し取られてしまったという。一体なぜ、どのようないきさつで被害に遭ったのか。 女性の言う“ロマンスも存在しないのに”とはどういうことなのか。急遽、詳細な経緯を取材した。(エッセイスト・紫原明子)
言葉巧みにお金を引き出されていった田中さん(61歳=仮名)。
ようやく7日が経過すると、取引所Bのサイトが表示する田中さんの資産は、日本円にして1000万円近くに膨れ上がっていた。ほっとしながら、このまま一刻も早く引き出して不安を終わらせたいと願う田中さんに冷や水を浴びせるかのように、ビリーから新たな要求が提示された。
「お金を引き出すには、取引にかかる税金を払う必要があります」
ビリーは、仮想通貨の取引には税金がかかること、今回その金額は390万円であり、取引所Bに入金する必要があることを田中さんに告げた。
本来、仮想通貨の取引にかかる税金は納税者自身が確定申告の際に計算し、納付することになっている。そのため、取引所に税金を支払うという行為は本来発生し得ないはずだが、田中さんはやはりここでも、父のお金をなんとか取り戻さなければならないという焦りから、誰にも相談しないまま、今度は夫に黙って、夫の預金に手をつけてしまう。
預金は1日50万円までの出金制限がかかっていたため、田中さんは夫には内緒で7日間かけて390万を用意し、ビリーに言われるままに入金した。ところがここでさらにとんでもない事態が起きる。ビリーはそんな田中さんの390万円を、誤って新たな取引の資金として入金させてしまったと言うのだ。
「すみません、日本の法律を知りませんでした」
とぼけるビリーに、田中さんは怒りで手が震えた。しかし激怒したところでスマートフォンの向こう側にいる相手にそれをぶつける術もなく、また連絡が途絶えればお金が引き出せないかもしれないという不安が頭をよぎる。
お金を引き出すために、別途税金分350万円の支払いが必要になったと白々しく告げるビリーに、田中さんはとうとう、クレジットカードのローンで350万円を借金してしまう。