アダルトビデオ(AV)出演者が無条件に契約を解除できることなどを定めた「AV出演被害防止・救済法」が成立したことを受けて、「撮影が中止された」といった訴えが出演者らから相次いでいる。
施行前の契約なら新法に縛られないことになっているが、なぜなのだろうか。業界団体に取材して、その状況を詳しく聞いた。
「女優が守られるどころか仕事が無くなって現役の女優たちが苦しむ構図」
このAV新法は、出演強要などの被害をなくそうと超党派の議員から提案され、2022年6月15日の国会で、与野党の賛成多数で可決・成立した。
作品発表後1年間は、出演者が無条件で契約解除できる(施行後2年は2年間)ほか、業者に出演への説明や契約を義務付け、契約から撮影まで1か月、撮影から発表まで4か月を空ける、などが骨子だ。
施行後の契約から縛りがかかるが、ツイッター上などでは、新法の成立日ごろから、撮影が中止や延期になった、契約に伴う作業が増えて仕事が入りづらくなった、といった訴えが相次いだ。
フリーで活動している出演者の金苗希実(かなえ・のぞみ)さん(27)が19日、次のようにツイートすると、まとめサイトも取り上げるほどの反響を呼んだ。
その背景には、メーカーが新しい契約書を作るなど対応に追われている状況があるという。金苗さんは、AV新法には良い部分もあるとしながらも、いわゆる適正AVでは本人確認を徹底しているとして、「取り締まるべき部分がズレている、制作者側を悪と決めつけないでほしい」と訴えた。
最初のツイートには、AV新法の音頭を取った立憲民主党の塩村文夏参院議員が20日、「決まっていた撮影が中止に?なぜ?」とツイッターで反応し、こう説明した。
業界団体「被害者救済に焦点を当てすぎて、通常業務が配慮されなかった」
AV新法の施行前にもかかわらず撮影中止などの影響が出ているのかについて、業界の「適正AVプロダクション」でつくる日本プロダクション協会の担当者は6月22日、J-CASTニュースの取材に次のように説明した。
プロダクションに所属する出演者は、営業担当者が準備をしているが、それでも新しい契約書を作ろうとして影響が出てくると担当者は明かした。
新法の国会審議に当たっては、第3者団体のAV人権倫理機構はヒアリングに呼ばれたものの与えられた時間はわずか数分、メーカーやプロダクションの業界団体はどこも呼ばれなかったという。
内閣府の男女間暴力対策課は22日、取材に対し、次のように答えた。
なお、AV新法は、22日に公布されており、翌23日から施行される。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)