石川県珠洲市で最大震度6弱の揺れを観測した地震から26日で1週間。地震の爪痕が残る被災地では、今も市民らが家の片付けや修理に追われている。本格的な梅雨シーズンを迎え、土砂崩れなどへの不安も高まるほか、長期化が予想される地震を懸念して引っ越しを検討する人も。震源から比較的遠い地域を含め宿泊客のキャンセルが相次いでおり、新型コロナウイルスで疲弊した地域経済への影響は深刻さを増している。【阿部弘賢】
「いつでも(屋外へ)逃げられるように家族はずっと緊張状態。今後も地震が続けば、ここに居続けるのは難しい」。市内の自宅でガラス引き戸を修理していた50代の男性はこう吐露する。築約70年の借家は地震でゆがみ、あちこちの引き戸が動かなくなった。
兵庫県出身の男性は、1995年の阪神淡路大震災の被災経験があり、子供の教育環境を考え、約15年前に家族で移住。だが、1年以上続く群発地震に加え、今回の強い揺れの地震を機に、県外への引っ越しを本格的に検討し始めたという。
珠洲市正院町の無職、榎木正春さん(74)の自宅は、2007年の能登半島地震で母屋の屋根が大きくゆがみ、約5年前に修理が終わったばかり。今回も母屋のふすまが開かなくなるなどの被害が出たが、経済的な理由から母屋のさらなる修理には二の足を踏む。榎木さんは「震度7の地震があれば柱が折れて下敷きになるのではという不安はあるが、(高齢の)妻と2人暮らしなので、修理しても切りがない」と諦め顔だ。
相次ぐ宿泊キャンセル
県の調査では、土砂の崩落や亀裂などで市内4カ所が危険判定を受けた。その一つ、同町の乙谷守一さん(74)宅裏では、けい藻土の崖が高さ数メートルにわたり崩落し、大きな岩石や土砂が家まで到達。現在土砂の多くは撤去され、家の前に大きな土のうを積んで応急処置をしているが、小さな崩落は続いている。梅雨入り後まだまとまった雨は降っていないが、乙谷さんは「けい藻土は湿気を含むと崩れやすいので心配」と話す。市内には、瓦が落ちたりして屋根にブルーシートが掛けられたままの家も目立ち、地元の工務店などには修理依頼が殺到しているという。
観光への影響も大きい。県によると、地震発生後の4日間で県内の宿泊キャンセルは延べ約1900人分に上る。「小さな宿は1組のキャンセルでもきつい。コロナ禍が落ち着き始めていたのに、先が見通せなくなった」と話すのは、珠洲市中心部の旅館「まつだ荘」(9室)の女将(おかみ)、松田由美子さん(72)。地震後に13組26人分の宿泊がキャンセルされ、新たな予約も入らない状況だ。
また、震源地から約40キロ離れた輪島市の観光協会によると、宿泊施設などに大きな被害はなかったが、23日までに延べ約660人が宿泊をキャンセルした。同協会の平正秋理事は「被害はなくても、同じ『能登』のくくりで見られる。早く地震が落ち着いてほしい」と切実に訴えている。