日本の選択 参院選、与野党とも緊張感が欠けているのでは 「野党の話は聞かない」山際再生相の発言、旧態依然の「憲法9条論」語る護憲派野党

参院選は終盤戦に入り、候補者や応援弁士が熱弁を振るっている。私も有権者の一人として、できる限り多くの政治家の主張に耳を傾けている。選挙の際、何を語っているかを確認しておくことは重要だからだ。
あくまで私の印象論だが、与野党とも全般的に緊張感に欠けているのではないか。もちろん、候補者や政党は議席獲得を目指して必死に訴えている。その点において、緊張感がないとは言わない。
だが、厳しい国際情勢のなか、日本が生き抜いていく方策を真剣に考え、緊張感を持って自らの言葉で語っている候補者が少ないのだ。
現在、冷戦以降の国際秩序が乱されようとしている。将来の分水嶺(ぶんすいれい)といってもよい瞬間だ。それは、ロシアが主権国家であるウクライナに突如侵略を始めたからだ。戦争を違法化し、力による国境変更は認めないという国際秩序に対する挑戦である。
国連加盟国の一員として、わが国がロシアの蛮行を非難するのは当然のことだ。同時にこれは、わが国の国益を守るための戦略でもある。
国連安保理の常任理事国であるロシアが、たやすく自らの領土的野望をかなえたと仮定してみよう。同じ常任理事国である中国が、台湾に対して武力行使をする可能性が非常に高まると考えるのが常識だ。
ロシアが主権国家を武力で打倒しても、国際社会は手をこまねいているだけである。台湾は主権国家ですらない。中国が武力侵攻し、自らの野望をかなえようとしても、国際社会は再び傍観しているだけであろう―。このような論理が働くからだ。
かつて安倍晋三元首相が指摘したように、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事」でもある。
ウクライナの次は台湾かもしれない。その際、日本は無関係ではいられない。
危機的な状況を正面から直視し、明日の日本のあるべき姿を熱心に語っている候補者がどれほど存在するのか。護憲派野党を眺めれば、旧態依然とした「憲法9条論」を語るばかりである。到底真剣に日本の安全保障を語っているようには思われない。
一方、与党にも緩みが見える。
山際大志郎経済再生担当相が3日、青森県八戸市での街頭演説で、「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない」と発言したと報じられた。いかにも緊張感に欠けた放言だ。
「野党の非現実的な主張を受け入れることができない」というなら理解できる。だが、どれほど国益にかなう提案であっても、野党の提案であるとの理由だけで拒絶するというのなら問題だ。民主主義の基本は「熟議」にある。数を頼んで、野党を侮るのは間違いだ。
日本の将来に大きく関わる参院選。与野党共に緊張感を持って戦うべきだ。
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本歴史探究会代表理事。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。