参院選「投票済み証」も熱く ゆるキャラ、御朱印…やめる自治体も

選挙で投票した人に自治体が交付する「投票済み証」が多様化している。今回の参院選でも、御朱印風のデザインから、ゆるキャラを使った絵はがき型、恐竜の頭骨をあしらったものまで多種多彩だ。選挙に関心を持ってもらうための工夫だが、とある事情から発行を見合わせたり、廃止したりした自治体も。それぞれの思惑を取材した。
寺や神社を参拝した証しとして授与される御朱印。近年は収集がブームとなり、令和への改元時には受付に行列ができた。
その御朱印のような投票済み証を発行しているのは岐阜県御嵩(みたけ)町。毛筆体で「投票済証」と縦書きされた文字の背景に、「御嵩町選挙管理委員会」と書かれた朱色の文字がはんこのように描かれている。
2019年6月の町議選から採用し、町民から「また出さないのか」と問い合わせが来るなど好評だ。参院選でも期日前投票から交付しており、担当者は「投票率アップにつながればうれしい」と期待する。
工夫いろいろ、暑中見舞いにも
大阪府箕面市では、19年の前回参院選から市のマスコットキャラクター「滝ノ道ゆずる」を使用。「ゆるキャラグランプリ」のご当地ランキング(20年)で4位に入った人気者だ。
今回は浴衣姿で舟に乗り、市内の名所「箕面大滝」を見上げるイラスト。暑中見舞いのはがきに使えるよう工夫されている。これまでの選挙で3回発行し、「毎回楽しみ」と市民も歓迎する。
同府富田林市では参院選に合わせ、大阪芸術大の学生にデザインを依頼。市のシンボルツリーのクスノキが茂る公園を若者が歩く爽やかなイラストで、右端には市章が半分だけ描かれている。次にある選挙で投票済み証をもらえば、合わせて市章が完成する仕組みだ。市選管の担当者は「選挙に行くモチベーションになるよう工夫した。若年層にも興味を持ってもらいたい」と話す。
一方、インパクトで勝負するのは福井県勝山市。国内の恐竜化石の約8割が出土する「恐竜のまち」らしく、恐竜の頭骨を大胆にデザインした。これまでは文字のみのシンプルなものだったが、今回の参院選で初めて採用。同市で見つかったフクイラプトルの頭骨を描いたものだ。担当者は「投票率を上げるため、記念になるものを配布しようと考えた」と明かす。
法規定なし、「無駄遣い」批判も
総務省によると、投票済み証を発行している自治体は全体の6割ほど。17年衆院選は55・4%、19年参院選は63・5%、21年衆院選は61・1%だった。公職選挙法には規定がなく、自治体の判断に委ねられる。
大阪市では、記録が残る範囲で1963年から、全ての地方・国政選挙で投票済み証を交付。しおりサイズの厚紙に市の名所や選挙啓発のキャラクターをあしらったものだったが、13年の参院選から廃止した。市民から「経費の無駄遣いではないか」との問い合わせが増えたためだという。市選管は「投票済み証がどこまで投票率に影響するかは分からない。それよりも選挙に行ってもらう啓発が大事だ」と話す。
佐賀市も投票済み証を発行していない。市選管は「(他の自治体で)政党や団体が、投票に行ったかどうかを確認するために投票済み証を回収するなどした例があったと聞く。市民に不利益を与えかねないので発行しない」と説明する。
徳島市は、投票済み証が店舗の割引サービスなどに使われることを懸念し、交付を見合わせている。「特定の店に人が集まるクーポンのようになっており、行政が関わるのは望ましくない。仮に、その店が特定の候補を応援していたら、その候補への投票を促す可能性もある」と指摘している。【山田毅、榊原愛実】