ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が、性的暴行を受けたとして元TBS記者の山口敬之氏(56)に約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は7日付で、山口氏側の上告を棄却する決定を出した。「性行為に同意がなかった」として約332万円の賠償を命じた今年1月の2審・東京高裁判決が確定した。
また、小法廷は著書などで虚偽の性被害を申告されて名誉を傷つけられたとして山口氏が伊藤さんに1億3000万円の賠償を求めた反訴について、伊藤さん側の上告を棄却した。一部で名誉毀損(きそん)の成立を認め、伊藤さんに55万円の支払いを命じた部分も確定した。裁判官5人全員一致の意見。
1、2審判決によると、伊藤さんは2015年4月、山口氏と飲食後に深酔い状態となり、自力でタクシーから降りられず2人でホテルに入った。山口氏は意識を失った伊藤さんと性行為をし、伊藤さんはその後、病院に駆け込み警察や友人に相談した。
2審判決は、伊藤さんと山口氏の間に性行為をするような親密な関係は認められないなどとし、同意がなかったとする伊藤さんの説明の信用性を認め、1審・東京地裁判決(19年12月)とほぼ同額の賠償を命じた。一方、伊藤さんが「山口氏から薬(デートレイプドラッグ)を飲まされた」と著書などで訴えた点について、「薬を飲ませたと認める的確な証拠はない」とし、山口氏のプライバシーが侵害されたと認定した。1審は反訴も含め、山口氏の全面敗訴としていた。
東京地検は16年7月、準強姦(ごうかん)容疑で書類送検された山口氏を容疑不十分で不起訴処分とした。検察審査会も17年9月に不起訴相当と議決し、刑事事件としての捜査は終結している。【遠山和宏】