新型コロナウイルスの感染者が再拡大している。8日には全国の感染者が約2カ月半ぶりに5万人を超えた。東京や大阪では前週に比べ倍増の勢いで、過去最多を更新する地方もあり、知事らは警戒を強めている。
感染再拡大は山陰地方で顕著だ。鳥取県では6日以降、新規感染者が200人を超え、3日連続で過去最多を記録。平井伸治知事は7日の対策本部会議で「流行の第7波に入った」と強調した。急増の背景にオミクロン株の派生型「BA・5」への置き換わりが進んでいることや、職場や学校などでクラスター(感染者集団)が発生していることなどを挙げ、改めて感染対策の徹底と無料検査の活用を呼びかけた。
隣接する島根県も深刻だ。新規感染者は6月12日に6人だったが、同27日に305人、7月4日には最多の753人が確認され、1カ月足らずで100倍超に。丸山達也知事は7日の記者会見で「全国に先駆けてBA・5が増えている。フロントランナーだ」と危機感を示した。県は飲食店利用時の人数・時間制限を県内全域に広げるなど対策を強化している。
都市部でも増加傾向が続く。東京都の小池百合子知事は8日の定例記者会見で、感染が急拡大している現状について「(都としては)特性を踏まえたまん延防止等重点措置の適用基準を国として明確化してほしいとずっとお願いしている」と指摘。「本来は昨日(7日)の時点で国としてアドバイザリー会議を開くなりすべきだった。皆さん、選挙で散らばっておられるが、緊張感、危機感を持って取り組んでいかなければならない」と述べ、政府の対応を批判した。
その上で、重点措置の適用可能性については、国の方針の明確化を待つとともに「専門家の意見を踏まえながら判断ということになろうかと思います」と述べた。
大阪府では5日以降、4日連続で新規感染者が4000人を超え、いずれも1週間前の同じ曜日に比べて倍増している。年代の偏りなく増えているといい、吉村洋文知事は6日の記者会見で「新たな波の入り口に立っているかもしれない」と急激な感染拡大に危機感を示した。
軽症・中等症を中心に入院患者もじわじわと増加し、病床全体の使用率は8日時点で18・7%。使用率が20%以上になれば、感染状況を示す府の独自基準「大阪モデル」で「警戒」を示す黄信号を点灯させる。
変異株を検出する府のスクリーニング検査では、オミクロン株の派生型「BA・4」または「BA・5」の疑い例が3日までの1週間で26・9%になり、前週の約3倍に増えている。吉村知事は「感染者の増え方を見ても、(変異株が)作用している可能性が高いとみるべきだ」と話す。【中尾卓英、目野創、黒川晋史、近藤諭】