岸田文雄首相(自民党総裁)は参院選の大勝を受けて、8月下旬にも内閣改造・党役員人事を行う。党内基盤を着実に固めたい意向だが、最大派閥を率い、「岩盤保守層」の強い支持を得てきた安倍晋三元首相の死去が影を落とす。日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、リベラル色がにじむ岸田政権には不安・懸念があるのだ。「岸田カラー」を前面に出した人事を強行すれば、岩盤保守層の反発を招きかねない。国政の焦点である「憲法改正」や「防衛力強化」は大丈夫なのか。安倍氏の葬儀は12日午後、東京・芝公園の増上寺で営まれる。岸田首相の人事手腕が注目される。 ◇ 「岸田内閣への信任だけでなく、安倍氏のこの国への思いを正面から受け止め、全力で仕事を進めよと、叱咤(しった)激励をいただいた」「(安倍氏の)思いを受け継ぎ、(北朝鮮による)拉致問題や憲法改正など、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む」 岸田首相は11日、参院選大勝(=自民党単独で改選過半数に達する63議席獲得)を受けた自民党本部での記者会見で、こう語った。 今後の焦点は、岸田首相がどのような人事を行うかに移る。 参院選の投開票(10日)直後から、すでに麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長、松野博一官房長官、林芳正外相らの留任案が浮上している。 政治学者の岩田温氏は「有権者は『真の保守』としての自民党政権を信任した。ロシアによるウクライナ侵攻で国防に関心が高まるなか、安全保障や外交で国益に関わる人事を誤れば、一気に支持を失うだろう。岸田首相は、自らが領袖(りょうしゅう)の宏池会に強いこだわりがあるようだが、『安倍氏の遺志を継ぐ』と明言した以上、お友達人事に走ることは許されない」と語った。 ポイントとなるのが、安倍氏に近い人材の遇し方だという。 具体的には、安倍氏の実弟である岸信夫防衛相や、安倍派(清和政策研究会)の萩生田光一経産相、2021年の総裁選で安倍氏が支持し、政策も近い高市早苗政調会長らの処遇が注目される。 岸田首相周辺には、最大派閥・安倍派の力を弱め、宏池会政治を進めるため、「安倍派パージ」を画策する側近が存在するとの見方もある。 岩田氏は「安倍イズムを継承する岸氏や高市氏を明確な理由もなく交代させれば、国内外から『安倍政治からの脱却』と受け取られる。日本の国益を直視できない、かつての自民党に逆戻りしかねない」と懸念する。 現に、永田町では、次期防衛相候補として、岸田首相と同じ広島県出身で宏池会所属、財務官僚OBの寺田稔衆院議員の名前が出ている。
岸田文雄首相(自民党総裁)は参院選の大勝を受けて、8月下旬にも内閣改造・党役員人事を行う。党内基盤を着実に固めたい意向だが、最大派閥を率い、「岩盤保守層」の強い支持を得てきた安倍晋三元首相の死去が影を落とす。日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、リベラル色がにじむ岸田政権には不安・懸念があるのだ。「岸田カラー」を前面に出した人事を強行すれば、岩盤保守層の反発を招きかねない。国政の焦点である「憲法改正」や「防衛力強化」は大丈夫なのか。安倍氏の葬儀は12日午後、東京・芝公園の増上寺で営まれる。岸田首相の人事手腕が注目される。
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「岸田内閣への信任だけでなく、安倍氏のこの国への思いを正面から受け止め、全力で仕事を進めよと、叱咤(しった)激励をいただいた」「(安倍氏の)思いを受け継ぎ、(北朝鮮による)拉致問題や憲法改正など、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む」
岸田首相は11日、参院選大勝(=自民党単独で改選過半数に達する63議席獲得)を受けた自民党本部での記者会見で、こう語った。
今後の焦点は、岸田首相がどのような人事を行うかに移る。
参院選の投開票(10日)直後から、すでに麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長、松野博一官房長官、林芳正外相らの留任案が浮上している。
政治学者の岩田温氏は「有権者は『真の保守』としての自民党政権を信任した。ロシアによるウクライナ侵攻で国防に関心が高まるなか、安全保障や外交で国益に関わる人事を誤れば、一気に支持を失うだろう。岸田首相は、自らが領袖(りょうしゅう)の宏池会に強いこだわりがあるようだが、『安倍氏の遺志を継ぐ』と明言した以上、お友達人事に走ることは許されない」と語った。
ポイントとなるのが、安倍氏に近い人材の遇し方だという。
具体的には、安倍氏の実弟である岸信夫防衛相や、安倍派(清和政策研究会)の萩生田光一経産相、2021年の総裁選で安倍氏が支持し、政策も近い高市早苗政調会長らの処遇が注目される。
岸田首相周辺には、最大派閥・安倍派の力を弱め、宏池会政治を進めるため、「安倍派パージ」を画策する側近が存在するとの見方もある。
岩田氏は「安倍イズムを継承する岸氏や高市氏を明確な理由もなく交代させれば、国内外から『安倍政治からの脱却』と受け取られる。日本の国益を直視できない、かつての自民党に逆戻りしかねない」と懸念する。
現に、永田町では、次期防衛相候補として、岸田首相と同じ広島県出身で宏池会所属、財務官僚OBの寺田稔衆院議員の名前が出ている。