「あまりに突然で…」埼玉・局地的大雨、爪痕生々しく

埼玉県中央部を中心に13日未明にかけて局地的な大雨が降り、同県鳩山町では、12日午前10時~13日午前6時の降水量が平年の7月1カ月分の倍以上の395・0ミリに達した。河川氾濫や土砂崩れの爪痕が生々しく残る同町を歩き、異例の記録的大雨に遭遇した住民たちに話を聞いた。
民家や店舗、商業施設が並ぶ町内の通りに面した山中祐二さん(69)宅では、経営する自動車修理会社の業務スペースとして用いている1階部分が浸水した。顧客から預かっているという3台の自動車は全て泥水にのみ込まれ、無残な姿をさらしている。
「廃車にするしかない。どれくらいの額になるのだろうか」と山中さん。他にも業務で使用している機材が使用不能になっている可能性があるといい、被害総額は「想像もできない」と肩を落とした。
土砂崩れの影響だろうか。町内のそこかしこでは道路が赤土で覆われ、砂ぼこりが舞っている。土砂は田畑にも流れ込み、容赦なくなぎ倒された農作物の姿が被害の深刻さを物語っていた。
川沿いに位置する小高健一さん(48)宅は、2階建て住居の1階部分が床上約50センチの浸水被害を受けた。
12日夜、勤務先で大雨の発生を知りあわてて帰宅した小高さんは、自家用車を高台に移動させた後、妻と2人の子供とともに2階に移り、不安な一夜を過ごした。川の水位は短時間でみるみる上昇し、1階部分に泥などが流れ込んできたという。
小高さんによると、過去に2回続けて台風の被害を受けた際もこれほどの浸水は起きなかった。
「台風の場合、数日前から繰り返しニュースなどで取り上げられるので、対策もできる。しかし今回はあまりに突然で…」
小高さんが口にした言葉は、取材した多くの住民が異口同音に話していた感慨でもある。わずか数時間の間に猛烈な雨が観測された今回の大雨は、通常の台風や水害とは全く異なる対応や備えを必要としたといえる。
蒸し暑い中で懸命に復旧作業に汗を流す人たちの姿は日常を取り戻そうという思いを感じさせ、その力強さに心を打たれた。(星直人)