双葉町、住民が帰還可能に 復興拠点の避難指示、8月30日に解除

東京電力福島第1原発事故を受けた避難指示について、政府などは14日、福島県双葉町に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)で8月30日に解除する方針を明らかにした。双葉町は原発事故による全住民の避難が唯一続く自治体。住民は初めて帰還できることとなり、11年超にわたる「住民ゼロ」状態が解消される見通しだ。
政府と県、町によるこの日の協議でまとまった。協議後の記者会見で、伊沢史朗町長は「復興への大きな一歩となる。古里が早く取り戻せるよう全力で取り組む」と述べた。今後、政府の原子力災害対策本部で正式に決定される。
県内7市町村にまたがる原発事故の帰還困難区域で、居住地域の避難指示が解除されるのは葛尾(かつらお)村、大熊町に続いて3例目。対象は、かつて双葉町の中心部だったJR常磐線双葉駅の周辺など555ヘクタールで、町の面積の11%に相当する。
新たに帰還できるのは、2020年に避難指示が解除されたものの、生活インフラが整備されておらず帰還できなかった町の北東部の人たちも含めた3576人(今年7月1日現在)。原発事故当時、町の人口は7140人で、これらの地域に6割超が住んでいた。
復興拠点は早期の避難指示解除を目指して17年に国から認定され、国などによる生活インフラの復旧や除染作業が進められていた。
ただ、避難指示が解除されても、すぐに戻る住民は少ないとみられる。避難生活の長期化に伴い、避難先に新居を構えて生活の基盤を移した住民が多いからだ。復興庁が21年8~9月に実施した意向調査によると、帰還について「戻りたい」と回答した住民が11%だった一方、「戻らない」は60%に上った。避難指示解除に先立ち、22年1月に始まった「準備宿泊」に参加した住民は一部に限られる。
町は双葉駅周辺に商業施設や公営住宅を整備する方針だ。今後5年間で、復興拠点の居住者が2000人以上になると想定する。社会生活の維持に必要な救急医療や福祉・介護、教育などの体制づくりは今後の検討課題となる。
福島第1原発が立地する双葉町の住民は原発事故後、役場機能と共に埼玉県加須市や福島県いわき市などを転々としてきた。今年6月末現在で、避難後に生まれた人らを含めて県内に3955人、福島を除く41都道府県と国外に計2724人がそれぞれ避難している。
町内では20年3月、常磐線の全線運転再開などに伴い、線路や双葉駅前の道路や北東地域の240ヘクタール(町域の5%相当)で避難指示が解除されていた。復興拠点の避難指示が解除されても、町域の8割超は帰還困難区域のままだ。【柿沼秀行】