再考・犯罪被害者 娘失った悲しみ「雑談に救われた」 京アニ放火犠牲の渡邊さん母

令和元年7月に起きた京都アニメーション放火殺人事件で、次女の渡邊(わたなべ)美希子さん=当時(35)=を亡くした母、達子さん(72)=滋賀県在住=は、滋賀県警が犯罪被害者支援として続けてきたカウンセリングに救われてきたという。娘を失った悲しみを抱えてきた3年だったが、カウンセラーとの「雑談」が心の整理につながった。昨年4月からは県警の誘いに応じ、講演活動にも足を延ばしている。
「被害者支援に関心のある方に、被害者の心の多様さを知ってもらいたい」
今月上旬、美希子さんのほほえむ遺影や、美術監督を務めた「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の多くの絵に囲まれた居間で、達子さんはこう振り返った。
事件後は「パニック状態」。葬儀や遺品の整理などに、とにかく忙しかった。そんな中で、京都府警から情報提供を受けた滋賀県警に紹介されたのが、県警犯罪被害者支援室のカウンセリング。被害者やその家族は無料かつ回数無制限で受けることができた。
「事件のことを話題にすることは少ないが、雑談に救われた」。月に1回、自宅を訪れるカウンセラーと「井戸端会議」のようなたわいもない会話を交わすにつれ、心の整理も徐々につき始めた。
「(娘を亡くして)悲しいのは当たり前、しんどいのは当たり前」との思いとともに、「私はかわいそうな人ではない」との気持ちも抱く。社会のカウンセリングに対する理解は低いと感じている。支援室の誘いで昨年始めた講演も、要請があれば続ける意向だ。
あの日から間もなく3年。娘の死と向き合いつつ、自らに言い聞かせるように言葉を紡いだ。「寂しいといった感情の整理は死ぬまで付かないし、忘れたいとも思わない。この思いとは一生付き合っていくでしょう」
(鈴木文也)
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