安倍元首相銃撃 容疑者の精神鑑定実施へ 責任能力調査 奈良地検

安倍晋三元首相(67)が奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した事件で、殺人容疑で送検された無職の山上徹也容疑者(41)について、奈良地検は刑事責任能力を調べるため、本格的な精神鑑定を実施する方針を固めた。捜査関係者への取材で判明した。
捜査当局は山上容疑者の行動は計画的だったとする一方、安倍氏を狙った動機には論理の飛躍があるとみている。裁判員裁判が想定される公判では責任能力が争点になる可能性があり、地検は起訴前に鑑定留置を裁判所に請求する必要があると判断した。
親族によると、山上容疑者の母親(69)は約30年前、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に入信。少なくとも約1億円を献金し、2002年に自己破産した。家族の生活が困窮する中、山上容疑者は海上自衛隊に在籍中の05年1月、自殺未遂を起こした。
捜査関係者によると、山上容疑者は「家庭を壊した団体を国内に広めたのが安倍氏と思った」と供述。安倍氏の母方の祖父にあたる岸信介元首相(故人)の名も挙げ、「そもそも団体を日本に招いたのが岸氏で、その孫の安倍氏を狙うようになった」とも話しているという。
山上容疑者は、安倍氏側は団体とのつながりが深いと思い込んでいたとされる。地検や奈良県警は一方的に敵視していた疑いがあるとみて、山上容疑者の精神状況についても慎重に調べる方針だ。【林みづき、吉川雄飛】