「真実知る望み、市教委が無視」名古屋中1自殺、遺族が市を提訴

名古屋市名東区で2018年1月、市立中学1年の斎藤華子さん(当時13歳)が自殺したのは、学校がいじめを防ぐ安全配慮義務を怠ったためだとして、両親が19日、市に1540万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。記者会見した父信太郎さん(50)は「真実が知りたいという私たちを市教育委員会が無視するのは、いじめではないかと強く感じる」と話した。
訴状によると、一家は17年9月に大阪府豊中市から転居。斎藤さんはソフトテニス部に所属したが、同11月後半ごろから同じ部の部員に練習相手を頼んでも無視されるようになった。18年1月、部活の合宿に参加するため自宅を出た後、自宅マンションから転落しているのが見つかった。
アンケート結果などから学校は精神的苦痛を察知でき、本人との面談や両親との協議で命を救えた可能性が高いのに、何も対処しなかったと主張している。
名古屋市教委の坪田知広教育長は「尊い命が失われたことについては、申し訳なく思う。訴状の内容を確認して対応したい」とのコメントを出した。
市教委は19年4月、いじめは認められなかったとする第三者委員会の結果を公表したが、調査が不十分だとして遺族が再調査を要望。市の再調査委員会は21年7月、部活動でいじめを受けていたとする報告書をまとめた。【藤顕一郎】
父「二度と起こらないように」自ら奮い立たせ
愛娘を失ってから5度目の夏を迎えた。亡くなった斎藤華子さんの父信太郎さんはセミ時雨を聞くたび、一家で大阪から名古屋に引っ越してきたころを思い出し、気がめいる。それでも「二度とこんなことが起こらないように」と自らを奮い立たせ、名古屋市教委や学校と向き合い続けてきた。
信太郎さんには忘れられない光景がある。2020年3月に開かれた中学校の卒業式。学校側には出席の意向を伝えていたが、当日出向くと、同級生や保護者がいない講堂に通された。数人の教職員が見守る中でたった一人、娘の代わりに卒業証書を受け取った。信太郎さんに声を掛ける教職員はいなかったという。
卒業生は数日前に校長から卒業証書を受け取り、写真撮影も既に終わっていた。「なぜこんな仕打ちを」。孤独感だけが募った。
市教委の第三者委員会がまとめた調査結果に不信感を持つ遺族が強く要望した結果、市が再調査に着手し、いじめがあったと認定された。だが、市教委にはこれまでの対応を検証し、いじめを見逃さないための取り組みにつなげようとする姿勢が見えなかった。
「この時の対応は誰で、どう責任を取って、今後どうチェックしていくかを遺族に説明してほしいだけ。なぜそれができないのか」。信太郎さんの苦しみは今も晴れない。【藤顕一郎】