野球部寮で相次ぎ集団暴行 聖カタリナ高、愛媛県に報告せず

2021年春の選抜高校野球大会に出場した聖カタリナ学園高(松山市)の野球部の寮で21年11月と22年5月に集団暴行があり、男子部員2人が被害に遭ったことが分かった。いずれも心や体に傷を負い、愛媛県外へ転校している。いじめ防止対策推進法の「重大事態」の疑いがあるが、愛媛県は同校から報告は受けていないという。同校によると、同校教員の監督と部長は辞任する意向。
学校は5月の問題について「生徒間の不祥事」として6月に公表したが、暴行であることや人数など詳細は明らかにしなかった。関係者によると5月18日午後5時ごろ、松山市郊外にある寮の一室で、1年と2年の計9人が約1時間にわたり1年の部員の腹や脚を殴る蹴るなどした。被害部員は2週間の打撲などと診断され、7月に転校。現在も体に傷痕があり、左腕が肩より上に上がらないという。
同校が被害を受けた元部員側に6月に提出した調査報告書によると、当時は中間考査のため寮生は午後から寮におり、暴行は3階の一番奥の部屋であった。元部員が「点呼の時間や食事の時間を守らなかった」ことなどを理由に挙げている。だが代理人弁護士は元部員には片頭痛の持病があり、点呼の遅れは薬の副作用で眠った事情があったとしている。
21年11月の集団暴行は取材で新たに判明。関係者によると11月18日の練習後の夜、当時1年の部員が自室で複数の当時1、2年生から、野球部のルールで禁止されている「スマートフォンの学校への持ち込み」を理由に、馬乗りになって殴られたり入浴後にベルトでたたかれたりした。被害部員は、この前から半年程度にわたって暴力や暴言を受けてうつ状態となっており、22年1月に転校した。
11月の問題について同校は22年3月、元部員側に「野球部員間でルール遵守(じゅんしゅ)を促す働きかけの中で、突発的に暴行に至った」と説明し、いじめとの認識を示していない。元部員の代理人弁護士は「転校を余儀なくされ、(いじめの)重大事態の疑いは明らかだ」と批判している。
いじめ防止対策推進法では、児童・生徒の生命や心身に重大な被害が生じた疑いのある状況を重大事態と定義し、速やかな調査を求める。また文部科学省のいじめの重大事態の調査に関するガイドラインは、調査と同時に地方自治体の長などに報告するよう義務づけている。学校側が11月に適切に対応しなかったことが、5月の被害を生んだ可能性がある。
二つの問題について同校は、本紙の取材に「部員同士のトラブル。内容はコメントできない。第三者委員会を設置して調査中」と回答。同校は両件ともに県高野連に報告し、日本高野連はいずれも厳重注意処分とした。7月7日開幕の夏の愛媛大会には、問題に関係していないとして3年生12人で出場し、準々決勝で敗れた。県高野連の松浦彰浩理事長は、集団暴行の認識の有無について、取材に「学校に聞いてほしい」と説明を避けた。
スポーツ現場での暴力の問題に詳しい明治大の高峰修教授(スポーツ社会学)は同校の姿勢について「私立校が生徒を集めるために強化部を作り、トラブルがあっても隠蔽(いんぺい)するという典型的な例。教育機関である以上、被害に向き合うのが責務だ」と指摘している。
同校は女子校から男女共学になった16年に野球部を創部。21年センバツで春夏通じて初の甲子園出場を果たした。【斉藤朋恵】