ラッシュガード着用に校長面談!? 水泳授業で保護者困惑

今年は多くの学校で3年ぶりに水泳の授業が再開され、太陽の下ではしゃぐ子供たちの姿が戻ってきた。ところが、紫外線防止などのために上半身を覆う「ラッシュガード」の着用を巡り、学校の対応に困惑する保護者もいるようだ。着用を許可するにあたって申請用紙を提出させたり、校長との面談を求めたりする学校もあるという。日焼けだけでなく、体形を周囲に見られる恥ずかしさも軽減できるのに、なぜなのか。【中嶋真希】
着用意思、紙に書いて提出
「『ラッシュガードを使います』と用紙に書いて、学校に提出しないといけないんです」
小学3年と中学1年の子供を持つ女性(30代)=さいたま市=は戸惑いを隠さない。2人が通う学校ではラッシュガードとゴーグルを使用する場合、水泳のシーズンが始まる前に配られる用紙に使用の意思を明記して届けるよう求められるという。
「許可が出ないことはほとんどないのに、なぜわざわざ提出しないといけないのか。最初は疑問を持ちました」。女性はこう言いつつも、学校側に一定程度の理解を示す。「まあ、先生は1人で40人近くの児童生徒を相手にしなくてはいけないし、子供たちを管理するためにイレギュラーをなるべく減らしたいという方向に進めたくなるのも理解できますけどね」
娘の日焼け憂い、担任に相談すると…
東京都内の女性(40代)は昨年夏、小学校の水泳の授業で真っ黒に日焼けした娘の姿に強く思った。「ラッシュガードを着させたい」。だが、水泳の授業の案内にラッシュガードに関する記載はない。そこで連絡帳に書いて担任教諭に伝えると、思いもよらぬ返事が戻ってきた。
「校長と面談して許可をもらってください」
女性はその時の心境をこう振り返る。「普段から学校にはお世話になっているし、面談に抵抗はありませんでした。でも、ラッシュガード着用のために面談が必要と聞いて、仕事などで時間がなく諦める保護者もいるんじゃないか……」
女性は学校に出向き、申請書を提出した。だが、そこに記した理由を細かく問われることもなく、面談は穏やかに進んだ。「なぜ申請が必要なのか」。校長に尋ねると「ラッシュガードを着ると水の抵抗が増し、泳ぎにくい」と説明されたという。ともあれ、紺色でフードのないタイプに限り、着用が認められた。
女性は「あまりにあっさり面談が終わり、学校側が特別に反対する意思も感じず、拍子抜けでした。これなら子供を通じて申請書類を受け取って、親が記入して提出するのと大差ありません。ゴーグルの着用みたいにプールカードに書いて印鑑を押すだけにしてほしいです」と話した。
対応バラバラ、自由に着られる学校も
元々、ラッシュガードはサーファーが肌を守るために着るようになった長袖のスポーツウエアで、最近はプールや海水浴などで広く一般にも愛用されている。しかし、教育現場では画一的な指針がないため、学校ごとに対応が異なるケースもある。女性が住む区の教育委員会は「規定はなく、学校に任せている」と取材に答えた。さいたま市教委も同様に「学校ごとに柔軟に判断するよう任せている」とした。
一方で、自由に着用できる学校もある。東京都新宿区の中学校に通う子供がいる女性(40代)は「小学校の時は色や柄も指定がなく、自由でした。中学校では指定のラッシュガードがあり、着たい子は購入して着ています。そんなに厳しくない印象ですね」。千葉県市川市の中学2年生は「フードがなければ届け出はいりません。妹の小学校や、友人が通う市内の別の中学校もフードやファスナーが付いていなければ着られます」と話した。
紫外線対策、約5年前から着用の動き
「着用の許可制を廃止し、指定された販売店などで購入して着られる学校が増えています」
こう語るのは、水泳用品などを製造・販売する「フットマーク」(東京都墨田区)で、学校向けの営業を担当する白川純也さん(45)だ。「過去には、皮膚の疾患など特別な理由がなければ着用できなかったのが、今は理由がなくても着られる学校が多い印象です。保護者や生徒から要望が出て、学校側が動くことが多いのではないでしょうか」
同社は2000年代から太ももを隠す長めの丈の水着のほか、「シャインガード」と呼ばれる長袖の上着を販売。シャインガードは紫外線対策として、沖縄や九州地方など西日本を中心に約5年前から着用が広まり、関東地方でも約3年前から普及し始めたという。
肌の露出嫌がる生徒、授業参加のきっかけに
例年夏以降に注文が減るが、今年は7月に入っても追加注文が続く売れ行き。特に中学生の需要が高まっており、サイズの大きい商品の売り上げが伸びている。学校現場では男女ともに肌の露出を嫌がっているとの声も耳にすることから、白川さんは気になる体形を隠したいとの思いも働いていると見る。
「中学生になると、体形の変化から水着を嫌がって授業を見学する生徒が増えます。ある学校では『参加率が高まるなら』と長袖着用の許可を出したところ、見学していた生徒が授業に参加してくれた例もありました」
着用すると泳ぎにくくなるとの理由で許可をためらう学校もあるというが、白川さんは授業参加率の低さを解決するアイテムだと胸を張る。「水泳の授業は泳力をつけ、水の事故を防ぐ目的もあります。そのためにも、水着の選択肢が増えることで水泳嫌いの生徒が減ったらうれしいです」と熱く語った。
課題や疑問、募集中
皆さんの学校で、ラッシュガードの着用などに関し、水泳の授業で疑問に感じる決まりごとはありますか。記者に取材してほしいことを「つながる毎日新聞」(https://mainichi.jp/tsunagaru/)からお寄せください。専用フォームとLINEがあります。郵送も可。理不尽な校則に関する情報もお待ちしています。