兵庫県明石市で花火大会の見物客11人が死亡し、247人が負傷した歩道橋事故から21年となる21日、事故遺族や弁護士らが、手記や事故前後の経緯をつづった本を出版した。母トミコさん(当時75歳)を亡くした白井義道さん(62)らは記者会見を開き、「一人でも多くの人に事故を知ってもらいたい」と思いを語った。【村田愛】
事故は2001年7月21日夜、花火大会の会場と最寄り駅を結ぶ歩道橋で発生した。長さ約103メートル、幅約6メートルの橋に大勢の見物客が滞留し、折り重なるように倒れた。当時の明石署地域官や警備会社支社長ら現場責任者5人が業務上過失致死傷罪で有罪となった。同署の元副署長は4度の不起訴を経て強制起訴されたが、実質無罪の免訴判決が確定している。
事故の記録を伝えて同じ被害を防ごうと、遺族や弁護士らは420ページ、3章で構成する「明石歩道橋事故 再発防止を願って」を編集した。1章では、遺族らが花火大会に足を運ぶまでの経緯や事故当日の状況を手記を交えて紹介。2章は遺族会の活動や、元副署長の刑事訴訟の経緯などを記す。事故から21年となり遺族5人が改めて思いをつづったうえ、事故責任や刑事司法の問題点について弁護士らの寄稿を3章にまとめた。
事故で長男勇太さん(当時9歳)を亡くした柳原圭伸さん(61)は手記で「21年もたちました。今更振り返っても、むなしさ、悔しさ、切なさしかありません」と癒えない気持ちを吐露した。三木清さん(53)も次女優衣菜さん(当時8歳)を亡くした悲しさと元副署長が免訴判決となった悔しさに触れ、「想(おもい)と共に、もう二度と同じような事故が起きないことを願っている」との思いを寄せた。
長女千晴さん(同9歳)と長男大さん(同7歳)を亡くした有馬正春さん(63)は2人の葬儀で「お父さん、お母さんよく頑張ったね。と言われるように精いっぱい生きていきます」とあいさつしたエピソードを記した。これまでの自身の活動について「亡き子どもたちから、私たちに出された宿題だと思い、今日まで頑張ってきたつもりです」とつづった。
17日にあった記者会見で有馬さんは「再発防止と事故を風化させないことはイコールなので、本にして残すのは大切だ」と出版の意義を語った。白井さんは事故後に作成された県警の雑踏警備の手引が更新されていないとし、「体制が変わらない限り再び事故が起きる可能性があることを伝えたかった」と説明した。事故の遺族弁護団事務局長を務めた佐藤健宗弁護士は「単に民事・刑事裁判の内容を引用するのではなく、遺族が調べた雑踏警備の歴史や、強制起訴の裁判を紹介するようにした。安全管理に携わる人に参考にしてほしい」と話した。
本は2200円。問い合わせは神戸新聞総合出版センター(078・362・7138)。