政府は、安倍晋三・元首相の「国葬(国葬儀)」について、国民への理解を広げることに注力する。多くの海外の首脳級要人の参列が見込まれるため、安倍氏の外交面でのレガシー(政治的遺産)の継承を内外に打ち出す「弔問外交」の舞台としても活用する考えだ。
松野官房長官は20日の記者会見で、安倍氏の国葬に対して一部の野党が「弔意の強制につながる」などと主張していることについて、「国民一人ひとりに政治的評価を強制するとの指摘は当たらない」と反論した。
政府は「国民に必ず喪に服してくださいと強制するものではない」(木原誠二官房副長官)との立場を丁寧に説明していく構えだ。
戦前の国葬の法的根拠だった「国葬令」(1947年に失効)には、「国民は喪に服す」と明記されていた。安倍氏の国葬は、1967年の吉田茂・元首相の国葬と同様に閣議決定に基づき行われる。国葬令に基づく国葬とは位置づけが異なるのに、「戦前の国葬と同一視するような誤解や批判が一部で生じている」(自民党閣僚経験者)と懸念の声も上がっていた。
89年の昭和天皇の「大喪の礼」では、その年に限り、開催当日(2月24日)を休日とする法律を成立させた。今回は、休日とする措置は取らない方針だ。
政府は、「弔問外交」も国益に資するとみている。外務省幹部は「安倍氏が提唱した『自由で開かれたインド太平洋』の重要性を国際社会に発信する絶好の機会になる」と指摘する。
外務省は、国葬日程の正式決定後、各国政府などに案内を出す。吉田氏の国葬には、本国から派遣された12か国の特使を含め、73か国の外交使節が参列した。2000年の小渕恵三・元首相の内閣・自民党合同葬には、クリントン米大統領や金大中・韓国大統領などが参列し、当時の森喜朗首相が個別に会談した。安倍氏は12年12月の第2次安倍内閣発足から首相退任時まで、80か国・地域を訪れ、各国首脳と信頼関係を築いた。参列を希望する要人が相当な数に上るのは確実で、「規模は想像もつかない」(政府関係者)との声も上がっている。