空前のサウナブームの到来で、全国のサウナ施設はどこも満員御礼。「サウナー」と称されるサウナ愛好家たちが“ととのい”という名の悦楽を求めて行列をなす一方、サウナがきっかけで身を崩した男がいる。 彼の名は冨田裕樹(45)。2019年4月に大阪府池田市長選挙に出馬し当選するも、市役所内の市長控室に家庭用サウナを持ち込んだことが問題視され、百条委員会を設置されるまでに発展。パワハラ疑惑なども噴出し、2021年7月で辞職に追い込まれた男である。 あの騒動から1年。「サウナ市長」と呼ばれた冨田氏は妻と子を大阪に残し、単身で東京にいた。彼はいま何を思い、あの騒動と結末をどう飲み込んだのか。元サウナ市長の知られざる苦悩の日々を追った──【全3回の第1回】。 * * * そもそも、あの騒動が明るみに出たのは冨田氏が池田市長に就任して一年半後のこと。2020年10月に配信された『市役所に勝手に住み着いた大阪「池田市長」 家庭用サウナも持ち込んだ証拠動画』というネット記事からだった。 「私が市長に着任したときから、完全にアウェイの風が吹いていました。前の市長は市議を20年、市長を20年やっていて、役人も部下もみんなファミリー意識が強く、多くのコネや既得権益が存在するといった完全なるムラ社会でした。そのため、私を蹴落とすためにさまざまな嫌がらせを受けてきたので、そのたびにデイフェンスして跳ね除けながらなんとか公務を遂行してきました。家庭用サウナやパワハラ疑惑が報じられたときは、『マスコミに売ったか』、『いよいよここまで来たか』という感じでしたね。 家庭用サウナを市長控室に持ち込んだ理由は2点。ひとつは、学生時代にアメフトをやっていたため首のヘルニアになり過去に4回も手術しているのですが、実は公務中にも頸椎に痺れが出始めまして。サウナの中で首をけん引したり、体を温めることで体調管理をする必要があったから、家庭用サウナを市長控室に設置して昼休みにだけ使わせてもらうことにしました。 そしてもうひとつは、旧体制から執拗な嫌がらせを受け続けていたため、いずれ家族にも危害を加えられるのでは……と考えるようになりまして。私に危害が及ぶのはまだいいとして、それが家族に及んだら悔やんでも悔やみきれません。そのため妻と子供には別の家に引っ越してもらい、私だけ小さな部屋で暮らし始めたのです。 これまで使っていた家庭用サウナを単身用の新居に持ち込むことはスペース的に難しかったため、秘書とも話し合いながら、『体調管理もあるし、一時的に置かせてもらってもいいかな』ということで、家庭用サウナを市役所に移送することにしたんです。落ち着いたら広い部屋に引っ越しをして、そこにサウナを移送するつもりでした」(冨田氏、以下同)
空前のサウナブームの到来で、全国のサウナ施設はどこも満員御礼。「サウナー」と称されるサウナ愛好家たちが“ととのい”という名の悦楽を求めて行列をなす一方、サウナがきっかけで身を崩した男がいる。
彼の名は冨田裕樹(45)。2019年4月に大阪府池田市長選挙に出馬し当選するも、市役所内の市長控室に家庭用サウナを持ち込んだことが問題視され、百条委員会を設置されるまでに発展。パワハラ疑惑なども噴出し、2021年7月で辞職に追い込まれた男である。
あの騒動から1年。「サウナ市長」と呼ばれた冨田氏は妻と子を大阪に残し、単身で東京にいた。彼はいま何を思い、あの騒動と結末をどう飲み込んだのか。元サウナ市長の知られざる苦悩の日々を追った──【全3回の第1回】。
* * * そもそも、あの騒動が明るみに出たのは冨田氏が池田市長に就任して一年半後のこと。2020年10月に配信された『市役所に勝手に住み着いた大阪「池田市長」 家庭用サウナも持ち込んだ証拠動画』というネット記事からだった。
「私が市長に着任したときから、完全にアウェイの風が吹いていました。前の市長は市議を20年、市長を20年やっていて、役人も部下もみんなファミリー意識が強く、多くのコネや既得権益が存在するといった完全なるムラ社会でした。そのため、私を蹴落とすためにさまざまな嫌がらせを受けてきたので、そのたびにデイフェンスして跳ね除けながらなんとか公務を遂行してきました。家庭用サウナやパワハラ疑惑が報じられたときは、『マスコミに売ったか』、『いよいよここまで来たか』という感じでしたね。
家庭用サウナを市長控室に持ち込んだ理由は2点。ひとつは、学生時代にアメフトをやっていたため首のヘルニアになり過去に4回も手術しているのですが、実は公務中にも頸椎に痺れが出始めまして。サウナの中で首をけん引したり、体を温めることで体調管理をする必要があったから、家庭用サウナを市長控室に設置して昼休みにだけ使わせてもらうことにしました。
そしてもうひとつは、旧体制から執拗な嫌がらせを受け続けていたため、いずれ家族にも危害を加えられるのでは……と考えるようになりまして。私に危害が及ぶのはまだいいとして、それが家族に及んだら悔やんでも悔やみきれません。そのため妻と子供には別の家に引っ越してもらい、私だけ小さな部屋で暮らし始めたのです。
これまで使っていた家庭用サウナを単身用の新居に持ち込むことはスペース的に難しかったため、秘書とも話し合いながら、『体調管理もあるし、一時的に置かせてもらってもいいかな』ということで、家庭用サウナを市役所に移送することにしたんです。落ち着いたら広い部屋に引っ越しをして、そこにサウナを移送するつもりでした」(冨田氏、以下同)