五輪利権にメス、組織委関係者「早く解明を」…スポンサー募集役の電通にも動揺走る

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事(78)がスポンサー企業から資金提供を受けたとされる疑惑は、刑事事件へと発展した。東京地検特捜部は26日、受託収賄容疑で高橋氏の自宅のほか、スポンサーの募集にかかわった大手広告会社「電通」などを捜索。巨額資金がつぎ込まれた東京大会を巡る利権構造に強制捜査が入り、大会関係者らの間には衝撃が広がった。

東京都世田谷区にある高橋氏の自宅には26日午前9時30分頃から、大きなスーツケースなどを持った特捜部の係官約10人が捜索に入った。5時間以上が経過した午後2時40分頃、特捜部の車両とみられるワゴン車が到着し、押収物を次々と積み込んでいった。
東京五輪開幕から1年を迎えた23日には、国立競技場(東京都新宿区)で記念式典が開かれた。その3日後の強制捜査に、組織委元理事の一人は「コロナ禍で何とか開催にこぎ着けた裏で、理事がスポンサー企業と癒着していたとすれば信じがたい」と憤り、別の元幹部は「驚くようなことが連日報道されている。早く全容を解明してほしい」と語った。
一時約7000人の職員を抱えた組織委は、6月末の解散とともに清算法人に移行した。現在は都庁本庁舎の一角に間借りし、都の出向職員約20人が残務処理に当たっているが、疑惑発覚後は大会スポンサーの紳士服大手「AOKIホールディングス」(横浜市)との契約手続きなどの確認に追われている。ある職員は「高橋氏とAOKIのやり取りなど我々では調べられないことも多い。捜査機関から要請があれば適切に協力したい」と話した。
東京都の小池百合子知事は26日、都庁で取材に応じ、「捜索が入ったことは承知している。これから注視していきたい」と話した。また、「組織委(の清算法人)から報告を聞くよう事務方に指示した」と述べた。
組織委会長を務めた橋本聖子参院議員は記者団に「非常に残念だ。スポーツは青少年に夢や希望を届ける。疑惑が残らないようにクリアにされていかなければならない」と強調。末松信介文部科学相も「事実であれば大変遺憾だ。捜査を見守りたい」と話した。

東京都港区の電通本社でも26日、特捜部が関係先として捜索に入り、社内には動揺が走った。
電通は東京大会で、組織委からスポンサーの募集を「マーケティング専任代理店」として委託されていた。スポンサー企業が公式ライセンス商品を販売する権利を得るにはデザインや品質について組織委の承認を受ける必要があるが、承認や企業との調整などの業務を一手に担っていた組織委マーケティング局には、電通社員が多く出向していた。
関係者によると、同局の電通出向者は、2011年まで電通の顧問を務めた高橋氏から、ライセンス業務について連絡を受けることが複数回あったという。
捜索は深夜にまで及んだ。30歳代の男性社員は「五輪は電通にとって大きな仕事の一つで、東京大会はとりわけ特別な体制で臨んだ。次のパリ五輪も近づく中、不正疑惑が浮上したのは残念。会社として捜査に協力すべきだ」と心情を明かした。

高橋氏側に、17~21年に計4500万円超を提供したとされているAOKI側。創業した青木

拡憲
(ひろのり)前会長(83)は、高橋氏と十数年来の知人という。2人はゴルフ事業などを通じて親交を深め、東京大会招致の際も、高橋氏がAOKIをスポンサーに誘うなど協力関係が続いたとみられる。
高橋氏は電通時代、02年のサッカー日韓W杯誘致に携わるなど世界的スポーツ大会を成功に導き、「スポーツビジネスの第一人者」とも称された。特捜部は、18年10月にスポンサーとなったAOKIがスポーツ界に幅広い人脈を持つ高橋氏に対し、五輪関連の便宜を期待した資金提供だった疑いがあるとみて、捜索で押収した資料の分析などを進める。