記録的大雨から一夜明けた6日、浸水被害を受けた福井県南越前町では、住民らが土砂や家財道具の運び出しなどの復旧作業を本格化させた。JR北陸線や北陸自動車道などの一部区間で不通や通行止めが続き、影響が広がっている。
住民らは6日朝から、泥まみれになった冷蔵庫や椅子、本を運び出し、洗ったり、処分のためトラックに載せたりした。親族らが洗浄機や多数のペットボトル入りの水を携えて駆け付ける光景も見られた。
自宅庭に流されてきた大量の金網を片付けていた会社員(45)は「作業が増えて大変だが、うちのフェンスも流されており、お互いさまです」と汗を拭った。別の男性(72)は、約40ヘクタールの田んぼすべてが浸水したことを確認。「農業をやめるかも」と漏らしながらも、車庫に流れ込んだ木材や泥を搬出する作業に追われた。
南越前町と町社会福祉協議会は6日、旧町立今庄中にボランティアセンターを開設した。町民のみが対象だったが、7日から新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を受けた県民にも広げる。
ボランティアに参加した男性(36)は「若い世代の力が必要と思い、いても立ってもいられずに来た」と話した。センターは被災者からの作業依頼も受け付けており、「迅速な復旧に努めたい」とする。
町内の約1090世帯で断水が発生。町は5日から町内5か所に臨時の給水所を設けている。周辺のスーパーやホームセンターの一部でポリタンクが売り切れているといい、町職員が非常用の給水袋も配っていた。
6日に給水に訪れた女性は「風呂に入れず、食器も洗えなかった。新型コロナウイルスの心配もあるので、衛生状態には気をつけたい」と話していた。
国道8号で5日に生じた計100台以上の車の立ち往生は同日夜に解消されたが、交通網は遮断されたままだ。
関西の顧客が6、7割を占める福井市内の運送会社は、岐阜、愛知両県を経由する遠回りで輸送している。ガソリン価格高騰で負担は大きく、担当者は「早く道路の復旧を」と訴える。
あわら温泉(あわら市)の旅館「白和荘」では6日、満室だった客室の半数がキャンセルになった。
女将
(おかみ)は「大打撃だ。お盆期間までに鉄道や道路が復旧してほしい」と祈るように話していた。
「いつ仕事再開」
南越前町で浸水被害が相次いだ5日、住民らは自宅などの2階に逃れた=提供写真=。
コンクリートの型枠の製造に携わる男性(47)は5日朝、父親らと土のうを作っていると、足元の水かさが増し、腰の高さに達した。急いで作業所の2階に避難すると、1階は水につかり、出荷直前の型枠はほとんど流された。「助かって良かったが、いつ仕事を再開できるのだろうか」と肩を落としていた。